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作品名:斎藤マリー ストーリー 作者:なおちー

第23回   脱走
脱走

言葉にすれば二文字にすぎない。
この学園は、ボリシェビキによって支配されている。
徹底された共産主義的監視社会の中において、
脱走など自殺に等しいことを7号室の囚人達は熟知している。

もちろん斎藤マリエも例外ではない。

しかし

「今が好機だ」

こう考える囚人は少なくなかった。
北関東で大規模な革命が起きていることは、
もはや日本に住んでいる人なら誰でも知っているほどだ。

茨城県南部から埼玉北部に至る平野部に、
大規模な機甲戦力が展開しているという。
そして北関東ソビエトが日本政府に戦争を布告した。

「混乱に乗じて逃げるなら、今しかない」

大集団での大脱走を企てようとする男子達。
女子達はとりあえず静観。男子達の行方を見て
から判断しようと考えた。合理的である。
仮に筆者が囚人だったら女子の判断を支持する。

実際の学校の教育現場でもこのような現象は起きる。
男子と女子で共同作業などをさせてみると、
男子は一攫千金を狙うかの如く、大きな成果を短時間で
出そうとする一方、女子はまじめにコツコツと時間を
かけて目標を達成しようと思う。

例えば、日本のパート従業員は900万を超えるそうだが、
彼女ら単純作業に従事する者たちは、コツコツと同じ作業を
連続させる、集中量の持続性と忍耐力があるからだと言われている。

ボリシェビキに向いているのは女性の方であろう。
(ソ連式の筋トレもコツコツと、一日複数回に分ける)
コツコツとは、勉強に一番大事な要素だ。
真面目に、ゆっくり時間をかけて物事に取り組むことが
嫌いな人間は勉強には向いてない(一部の天才を除けば)

勉強ができないことを、自分の素質や周りの環境の
せいにする人をよくみるが、本当にできる人は、
どんなに時間が少なくても勉強の時間を作るものだ。
仕事でも少ない時間で効率よく段取りをすることが
どこの職場でも求められる。

ソ連の例をみてみよう。
天才トロツキーの失脚後、ソ連閣僚の間では権力争いがにわかに活発になった。
「スターリン」が、ジノヴィエフやカーメネフから
権力を強奪するまでの紆余曲折を調べてみると、
実にしたたかで、猫をかぶり、好機を待ち続ける忍耐力があった。
特にアジア的な退屈な発言を好んでいたことが特徴的だ。

※アジア的な退屈さ
 極東の島国のスガ官房長官がよくする発言のこと。
 記者に意見を求められているのに
 周囲との関係悪化を恐れて逃げの一手で済ませる。
対義語になるのが、トランプ大統領の歯に衣着せぬ言動だ。

北アジア出身(グルジア)のスターリンは、党中央委員会の総会でも
退屈な発言ばかりして、周囲から侮られる一方、
心の奥底では政敵を一斉に粛清する野望を秘めていて、それを実現させた。

我慢強さはすごいが、部下の言動の細かい
ミスをいちいち指摘する、政敵に過去にされたことを
20年以上根に持つ執念深さなど女性的な面がよく目立つ。

「マリー。革命は簡単に成功しないよ」
「どうして?」

太盛は夜勤明けで重くなった、まぶたをこすりながら
マリーの手をやさしく握った。

「フランス革命の歴史をよく勉強すればこんなことがわかる。
 革命を起こすには全国民に情熱が必要なんだよ。
 これを革命的情熱といってね、国家権力を守る砦である
 軍と警察をすべて撃破しないと革命は成功しない」

「それだったらさ」

マリーが可愛い顔でくちびるをとがらせる。

「北関東にはソ連地上軍の全戦力が揃っているんでしょう?」

「確かにね。だが重要なのは、北関東以外の全ての地域の
 人がその支配を受け入れないだろうってことだ」

「ええっと、つまり日本の全ての都道府県の、しかも
 大多数の人がボリシェビキに賛同しないとだめってこと?」

「そういうこと。君はずいぶん理解力が高いね」

☆☆↑これ超重要★★

先ほどの会話はまさしく、ウラジーミル・レーニンがロシア革命を
起こす際に最も重視したことであるのだ。

すなわち、国家とは何かを考えればよい。
国家とは、国民の集合体である。最上級の単位である。
農民がいる、法律家がいる、科学者がいる、学者がいる、
政治家がいる。当然貧富の差はある。

それら利害関係が全く異なる国民が、
一斉に国家制度の破壊を願わないと革命は成功しない。

強力な軍隊で仮に全土を征服しても、必ずレジスタンスなどの
抵抗運動、反政府運動、暴動、略奪、殺戮が発生する。

何度も述べたが、レーニンはフランス革命を研究し尽くした。
当時のフランスで革命を主導したのが第三身分という身分だが、
つまり平民で、王族、貴族、聖職者から搾取されていた人たちが
『9割近く』を占めていたという。

この第三身分(市民)が集まって、彼らのために議会の議席を確保し、
武器庫やパン工場を襲撃したり、途中でナポレオンが現れ、欧州を席巻したり
エルベ島に島流しにされたりしてフランス共和国ができあがるのだった。

『第三身分が9割近く』← ☆まさにこれ☆

話は変わってロシアへ。第一次大戦末期の対ドイツ戦。
ロシア軍の前線からの脱走兵がついに100万を超えた。
ロシアの国民の8割が農民であり、
彼らは勝ち目のない戦いのために最前線へ徴兵されていた。

ロマノフ王朝はトルコ、日本、ドイツとの戦争で負け続け、
次第に国民から見放されていった。
日露戦争中に血の日曜日事件が発生しているほどだ。

※血の日曜日事件
 戦争反対のためデモを起こした市民に、政府軍が発砲した大事件。
 ロシア帝国の内政不安を全世界に露呈した決定的な事件だった。
 事件が起きた場所はサンクト・ペテルブルク。当時のロシア帝国の首都。

国家の転覆とは「ほぼ全国民」が革命政府の考えに賛同しなければ
成功し得ない。もっというと、現政府を倒した、「その先」に国家を
安定させなければならない。

これは脱走にも通じることである。逃げたその先に、何があるのか。
どこへ逃げる。どうやって生き延びる。これが重要だ。

学校も同様だ。学校で学んだ勉強、体育、部活、友人関係。
それを卒業後の長い人生にどう生かすかである。

仕事に忙殺されてロクに新聞も読む暇もない、東大出身の旦那。
明治大学出身で専業主婦の妻。
図書館通いと新聞を読むことを欠かさなかった妻が、
結婚後10年以内に夫の教養レベルを凌駕した例がる。

何事も継続が大切なのである。運動も同じで、運動不足は
万病のもととなって健康診断の結果に出ることであろう。
継続を続けた人間には、必ず何らかの褒美がある。

人の知性についてドイツで面白い例がある。
アドルフ・ヒトラーの天才性を多くのドイツ人が認めていた。
その中でA・シュペーアはこう語る。

「ヒトラー総統は恐るべき洞察力と知性を秘めていた。
 彼のギラギラした目で見つめられると、
 話に引き込まれてしまう悪魔的な魅力があった。
 何よりすごいのが、それが例え彼の専門外の話であっても
 話の要点を直ちに理解してしまうことだ」

直観力、要点の整理。言葉の説得力など、
大学を出ているわけでもないヒトラーは間違いなく賢かった。
知識人に比べて劣る教養の面は、猛烈な読書で補う苦労人であった。

※アルベルト・シュペーア
ドイツの建築家、政治家。1943-1945に軍需、軍事生産大臣に就任。

ドイツ千年帝国の首都「ゲルマニア」の設計を担当。
(実際は作られる前にドイツ敗戦)
ヒトラーは新首都の大型模型を見て「君こそ天才だ」とシュペーアを褒めた。

(当時のナチスは、全欧州を征服後、アメリカも倒して
 千年続く帝国を作り上げようとしていた。
 恐るべきことに、最終的には日本との戦争も考慮していた…)

部品の生産の効率化など、今までの生産体制の見直しを図り、
米英の熾烈な空爆に悩まされる中、
「1944年にドイツの軍需生産は最高峰に達した」

これはシュペーアの功績ばかりだと誤解されるが、
実は前任者のトートが計画していた案を実行していたのだ。
ヒトラーがシュペーアに軍需大臣の地位を任せたのは、
シュペーアがヒトラーと最も親しい側近の一人だったからだ。

そのため、彼のヒトラー観は、限りなく真実に近いものだとされている。

だらだらと余談が続いた。そろそろ本編の続きを書こう。

「革命が起きないんじゃ、北関東ソビエトが自衛隊と
 戦っても結局無意味じゃん。なんのために戦うの」

「災害なんて目じゃないくらいの危機的状況だな。
 戦争の結果がどうなろうと、日本は阿鼻驚嘆の地獄と化してしまう」

「日本人は資本主義者の人が多いんだから、
 ボリシェビキになるわけがないよ」

「そもそも若い世代の人はソ連を知らないだろうな。
 あと中高年でも共産主義を知らない人がいると思う。
 ま、それが普通だ。日本で生活していたら、
そんな発想がまず思いつかないよな」

「議員とか公的権力に守られている人はみんな反対するよね」

「国会議員は優先的に死ねばいいと思うけどな」

そんな時であった。

『あーあー、日本に住んでいる、全ての国民に注げます』

学校の館内放送で内閣総理大臣の演説が流れ始めた。
テレビとラジオで中継しているものを、
生徒会が流してくれているようだ。

『突然ですが、戦争の結果を発表します☆
 北関東ソビエトの全戦力はすでに撃破されました』

この発表にマリーと太盛は、天地がひっくり返るほど驚いた。

嘘ではないかと疑ったが、テレビ中継ではっきりと映し出されている。
そこにあるのは、北関東の平野部に「遺棄」された軍事兵器だった。
ソ連地上軍の保有する全戦力は、乗組員がニートと無職だったため、
自殺、脱走、発狂などを繰り返して戦闘を全力で拒否。

(働きたくないでござる!!)

ボリシェビキ指導者たちは、拒否する者の頭を叩く、
それでも言うことを聞かない場合は銃殺するなどしていたが、
その間に自衛隊の超高性能の戦闘機が100機以上襲来し、
あっという間に空爆して破壊してしまった。

これは冗談のように聞こえるかもしれないが、
実際に自衛隊の保有している戦闘機の性能は、
米国製でもあることからも世界トップクラスなのだ。

我が方が1機で、中国軍の戦闘機10機相手でも、
かすり傷ひとつ負わずに撃破できるといわれている。
実際のところは全く分からないが。

ところで筆者の軍事知識は
第二次大戦でストップしているので現代の軍事には疎い。
そのため、あてにしないでほしい。

確かなのは、我が国のパイロットの練度が高いことか。
(実戦経験がないのが痛いが……訓練の質は帝国時代と同様である)

致命的だったのは、ソ連地上軍の全戦力が、展示品の様に
関東平野に勢ぞろいしていたため、狙い撃ちするのに好都合だったことである。
ミサイルの集中攻撃を受けた際に、
弾薬やエンジンの誘爆などを繰り返して、花火のように散ってしまった。

「やっぱりだめか」レーニンは落胆した。

ラーメン屋で味噌ラーメンを食べていたレーニン。
お店の液晶テレビには、木っ端みじんに破壊された
ソ連製の兵器の山が映されている。

兵器の全てが破壊されたわけではないが、乗る人が
逃げてしまったので、ただの鉄の塊となってしまっている。

店主が気を使ったのか、レーニンのラーメンには
メンマとコーンが大量に盛られていた。

『北関東ソビエトはぁー、我が国に対してぇ、正式に降伏しました☆』
首相の演説である。それにしても活舌が悪すぎだろう(割と深刻なレベルで)

レーニンは彼の日本語が、イタリア人の話す英語の様に
聞き取りにくかったのでイライラした。そして、いっそこれなら、
と思ってまた「独裁者スイッチ」を押した。
願ったのは、首相が本音で国民に語り掛けることである。

ちなみにこれは大変に危険である。
我が国の政治家から「アジア的退屈さ」を奪ったら、
それこそ国民全体で暴動が起きかねない。

「戦争が終わったので、これから国内の復興予算と
社会保障費などの増加に伴う、消費税の増税を行います!!」

この小説執筆時点で(2018/10/20)では、
政府は来年の10月に10%に引き上げるとしている。

劇中の首相は早急にも最終的な目標を示してしまった。
なんと10年以内に消費税を34%まで引き上げることを明言した。
考えてみてほしい。消費税34%である。

この数字には根拠がある。
著名な経済アナリストらが、日本の財政赤字の返済と社会保証費の
捻出を「完璧」にするために必要な数字として算出している。
(アナリストによって異なるが、だいたいが31〜36%と指摘)

我が国の予算は、2018年度は一般会計で全体(97兆?だったかな)
の3割近くが社会保障費になっていて、この部分は丸ごと国債を発行して
将来の借金としている。2019年度の国家予算は
108兆くらいを予定しているそうだ。ついに100兆越えである。

社会保障費は今後、さらに増大する。
財務省のHPを調べてみると、財政破たんのリスクが
最も高くなるのが2025年としている。(2025年問題)

これは、厚生年金(もちろん共済年金含む)、
後期高齢者医療保険(一割負担)、
介護保険などの適用になる70歳以上の年齢層が、
人口ピラミッド上の最大に位置する年なのである。

すでに1080兆くらいある赤字が、このままでは増加の一途である。
病気の老人に石を背負わせた状態で鞭打ちするのに等しい。

90年代のバブル崩壊から政府が少子高齢化の対策を怠り、
30年近くデフレが続いた結果がこれだ
欧州型の福祉国家に憧れて今さら幼児教育の無償化などを
しているのでは、時期が遅すぎる。

若い世代が働きやすくするための環境づくりなど、高度に発展した
資本主義、議会制民主主義の国家では当たり前に行っていることである。

例えばフランス人の家庭持ちの男性は、日本円で月11万の手取りで
生活していけるという。子育て、学費、医療にかかる費用、
その他を国が負担するからだ。

民主党時代の日本は、総務省の試算で家庭持ちの男性が
家族全員を養うのに必要な金額は、最低でも25万以上とされていた。
(東京都の物価だろうか?)おそらく25万でも足らないだろう。

安倍政権の内政政策は、まさに日本国の後進性を端的に示しているといえる。

「まずは10%への引き上げですがぁー、最初に行うことは、
 幼児教育のぉ、無償化による。若い働く世代へ…の負担軽減です。
 ですが、その前にぃ、やっておくことがぁあります!!」

「それはですね、わたくしたち、国会議員の給料。引き上げです!!」

斉藤マリエは、おやつとして食べていたチョコチップクッキーが
口の中からこぼれ落ちた。首相のぶっちゃけトークを
聞いていると、それを拾う気にすらない。

「わたくしたち、政治家、国会議員は、庶民の皆様より
 優雅な生活をしておりますから、出費が高いのです。
 例えばわたくしは、3万円以下のワインを飲んだことがありません!!」

「わたくしは、3千5百円というクソ安いカツカレーを食べて
 国民のみなさんに庶民アピールをしたりして支持率を稼いでおります!! 
さて、今回の我々の給料引き上げですが…」

「わたくしが1本10万のワインを買ったとします。
 するとどうでしょう。増税の割合は、千円の安いワインより
 高くなりますから、その分多くの税金を払わなければなりません!!
 ですから今の生活レベルを維持するために、給料がもっと必要なのです!!」

「我々、衆参両院の国会議員、総勢700名(このくらいの人数だったかな)
 はぁ、全会一致で、審議するまでもなく、理事会をスルーして
 給料引き上げを可決させました!! 本当はマスコミに
 報道規制をかけて内緒にしたかったのですが(笑)!!」

国会議員の年収 3300万円。
議員手当 JRの無料乗車。一部航空機の無料使用。
14万円の高級マンション、手当により月4万で入居可。
その他、無数。

これらの特権を加味して、実質およそ4400万円の年収になる。

「我々の給料をぉ、少ないですが、
 年収3800万円まで引き上げます!!」

つまり年収が実質4900万になったわけだ。

「国会とはぁ、国の最高府であります。
 したがいまして、我が国の法律はわたくしたち
 国会議員が好きに作ることができるのであります!!」

これが問題である。仮に国民の人気を失って
議員の入れ替わりが多少あったとしても、どいつも
こいつも「ぜいたくな暮らしをしたいクズ」しか当選しない。

「そもそも政治家になりたい奴は、そういう奴しかいない」
 TBSの誰かがこんなことを言っていたが、筆者も同意する。

数多くのゴミから、少数のゴミを選択しているのが、
日本の議会制民主主義、間接民主制なのである。
そしてゴミが作り出すので国家制度はゴミになる。簡単な話だ。

国は人が作る。かつて大久保利通卿が無くなった時、
彼の全財産を調べたら140円しか残っていなかった。
今の価値で100万程度である。

日本一のお大臣と呼ばれた、維新三傑の大久保。
彼の財産が一体いくらあるのかと、閣僚たちが
ワクワクドキドキしながら調べた結果がこれだ。

当時は明治日本が列強各国の侵略に備えて
軍事力の強化、国力の発展に力を入れいた時期である。

大久保は、私財を投げうってまで、国の公共事業などの予算を払っていた。
現金が少ない一方、借金は今の価値で「1億円以上」もあったが、
大久保の誠実さを知っていた周囲は、誰も借金の返済を求めなかったという。

このように国家のために全てを投げうった人は、明治時代は
数多くいた。例えば陸軍、満州軍総司令部の総参謀長の児玉源太郎。

彼は、満州平野で行われたロシア帝国との最後の死闘
(奉天の大会戦)に勝利し、帰国後、別人のように弱々しくなり
まもなく死んでしまった。常に兵量に劣る日本が、
いかにしてロシアと互角以上の戦いをできるか、
全ての英知を出し尽くした結果、彼はその魂を満州に置いて来てしまったのだ。

私の偉大なる祖父(シナ派遣軍。重機関銃大隊所属)を含む、
英霊たちが命を懸けて守った日本が、現在の日本である。

「年金についても述べさせていただきます!!」

首相だ。

「国家に収められた年金は、わたくしたちが一度国民から預かったもの。
 すなわち、わたくしたちのポケットの中にあります。
 国民の皆さんのお金をどう使おうが、私たちの自由です!!」

「国民のぉ、税金はぁ、わたくしたちの、おこづかいであります!!
 自分の小遣いをどう使おうが、わたくしたちの勝手であり、
 周りに人達にどうこう言われる筋合いは、全くございません!!」

年金支給の開始年齢を、最終的には基礎年金が75歳から。
厚生年金は80歳からで固定。75歳前に事故や病気で
働けなくなった人には当然、障害年金や生活保護は支給せず、
自己責任とし、貯金を切り崩して働くよう要請した。

戦争末期の日本軍と同じだ。
行軍の途中で落後した兵隊は、そのまま見捨てられた。
兵隊は飢え死にするか、獣の餌食になるのを待つだけだ。

(生活保護は在日朝鮮人に最優先支給なので
 日本人に払う余裕はほとんどない。
 くわしくは各自治体の市役所、市民課へどうぞ)

ちなみに来年度の国会で提出される法案は、70歳定年制であろう。
これを簡単に読み解くと、70歳まで一切の年金を支給しない。
70より前で支給する場合は、定額より減額するということだ。
減額された分では絶対に生活費をまかなえないのは言うまでもない。

マリーは、保健室の壁に穴が開く勢いで拳を突き立てた。
太盛も怒りが抑えきれず、保健室のベッドの上で
上体を大きくゆすり、吠えるなどして怒りを表現した。
病み上がりなので激しい運動ができないのだ。

「この国、もうだめじゃん。西日本に逃げても
 行政がこんな低レベルじゃ生きていけないよ」

「うん。俺もここまで最低の演説は初めて聞いたぞ。
 政治家って本音で話すとこうなんだな」

続けてアソー副総理、財務大臣の演説で

「老人は冬場にもちをのどに詰まらせるか、
 夏場に熱中症で死ぬなどして早く減ってください。
 オレオレ詐欺は、実は総務省と警察が関与しています。
 そのため真犯人は捕まりませんし、一生終わりません」

などと心温まる発言をしていた。

「心温まるどころか、はらわた煮えたぎるわ。
 ま、小説だからいいけどさ」

「財務大臣は現実でも老人が早く死ねばいいって
 発言はしていたようだぞ……。すぐに取り消したけど」

「政治家なんてそんなもんでしょ。でもさすがに
 国会議員の給料引き上げはネタでしょ」

太盛は、客のイタズラによって餌の代わりに
どら焼きを投げ込まれた際の、ゴマフ・アザラシの顔をした。

「先輩のその顔は、まさか」
「やっぱりマリーは、震災後の国会議員の給料引き上げを知らないか」

東日本大震災後、国会議員は自粛して議員給料を2割引き下げた。
その後、国民にばれないようにこっそりと元に戻してしまった。
つまり満額支給にしているわけである。

表向きの理由は、上の演説にあるように「生活が苦しいから」
正しくは「ぜいたくな生活をしたいから」に他ならない。
国会議員の本質は、「絶対に今の生活レベルを落としたくない」の一言に尽きる。

議員は、政治を考える際に第一に「自分たちの生活」を考える。
そのあと、自民党であれば、まず国力増強のためにGDP規模での
政治経済を考える(自民党のやっている、大企業の収益増加、
円安株高、輸出量拡大)そのあと国民の生活について考える。

つまり、@自分たちの生活 A国力 B国民の生活
我々の生活は三の次である。

「国民に楽をさせず、ぎりぎりの範囲で生活させる。
 行かさず殺さずが理想」これが自民党の本音である。
 というか、生かさず殺さずこそ、資本主義の本質である。

ちなみに、国会の理事会には、「増税の前に自分たちの給料引き下げ」
「議員定数の引き下げ」は案すら提出されていないそうだ。
当然審議されるわけがない。おそらく永遠に。

自民党議員は、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の改善、
と口癖のようにほざくが、まずそいつ自身が議員を辞めて直ちに死ぬことが、
財政健全化のための最善の策であることは多くの国民が同意することだろう。

筆者が声を大にして言いたいのは、この国の制度の根幹的な問題は、
自民党以外の党が第一党になれない、ならないことである。

そのため自民党がどれだけ汚職を繰り返しても、
前の衆院選の様に、自民が野党になるリスクがゼロのため、
どうにでも不正を続けられる。

民主主義の根幹を日本国自らが否定していることから、
この国には民主主義制度はおそらく機能し得ないと考えられる。


マリーが渋柿を食べている中年のおっさんの顔で答える。

「議員給料のことは知らなかったわけじゃないよ。
 トモハル君から少しだけ教わっていたからね。
 あれ、嘘じゃなくてマジだったんだ」

「ああ、マジだ。この小説の作者って日常生活で
 すげえストレス抱えてそうだけど、
 読んでると目からうろこな情報も多いよな。
 筆者の個人的な感情もだいぶ混じっているとはいえ」

かつてドイツ敗戦直前のアドルフ・ヒトラーは言った。

「最良な人間は、戦争で死んでしまった。
 我が祖国にはクズしか残らなかった。
 負けるのはドイツ人がソ連人よりも劣等だからだ。
 クズたちが敗戦後の社会で生きてなんになる。
 みんな死んだほうがいい」

(その後、部下のシュペーアにドイツ国内の全ての
 インフラ設備の破壊命令「ネロ指令」を発動。
 シュペーア。冷静な判断で命令を拒否。ヒトラーと絶縁する)

上のヒトラーのセリフは、今の日本の政治家に対して言ったのだろうか。


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