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作品名:セカンド・プラネッツ続編 作者:尾田久

第6回   第6話  ダミー
循環システム室に入ると微かに排泄物の臭いがした。そのせいかハロルドの他には誰もここには来ない。二人だけで話すには都合の良い場所だ。
「艦長の言い方では全球凍結を乗り越えたのは、マンモスを追っていた原始人みたいだ。本当は何だ?」
「バクテリアだ」
「バクテリアが人類の祖先か!?」
「だいぶ遠いけど間違ってはいない。前回の全球凍結は7億年前だ」
「少ない生存者の出す二酸化炭素で凍結は終わるのか?」
「全然足りないさ、艦長も余計な事を言ったな」
「それは何年続いたんだ?」
「凍結と溶解を繰り返すサイクルが1億年続いたと考えられている」
「えっ・・・1億年!」
「それより、僕たちが地球に戻ったのは1686年ぶりだ。そんな短期間で全球凍結したのが不可解だ」
「核戦争か?」
「その冬は半年で終わるはずだ・・・が、さらに悪条件が重なったのかもしれない。大きな隕石の衝突とか・・・」
「二酸化炭素固定菌かもしれない。タンクから流出した菌が川や池で生き残り、突然変異して海で繁殖すれば回収は不可能だ。菌が爆発的に増えれば二酸化炭素濃度は短期間で低くなる」
「その可能性もあるな」
「だが、どれも推測でしかない」
「そうだな、僕たちは迷路をさまようしかない」
 ハロルドがそう言って笑うと、ジョージが真面目な顔で培養タンクを指さした。

「艦長は嘘を言わないが、都合の悪い事は発表しない」
「何か起こったのか?」
「11人の仲間が減ってバランスが崩れた。二酸化炭素と肥料が減って、藻の活性が落ちた。もうすぐ酸素が減り始める。だが艦長は循環システムを修復する気はない」
「いつまでもつ?」
「せいぜい10日間だな。あとは酸素タンクの残量しだいだ」
「期待できる惑星に行くには十分だ」
「あの星はダミーだ。星に着いて駄目だと知る。食料も燃料も残り少ないのは皆が知っている。さらに酸素まで少なくなると選択の余地はない。例の惑星までたったワープ1回だ」
「仲間が死んだ星は気が進まないな」
「奴等とは別の大陸に行く。もう着陸地点も決まっているはずだ」
「本当か?」
「さまよい歩けばそこにたどり着くさ」

アルフレッドは命令に従って、エミリーの船外カメラからメモリーステック抜いてきた。艦長室に入ると、艦長が鋭い目付きでアルフレッドに聞いた。
「誰にも見られなかったか?」
「はい」
アルフレッドは答えるとメモリーステックをタブレットに差した。船外カメラの映像が流れる。

モニタに日本の宇宙船が映る。画面がゆっくり右へ移っていくとアメリカの着陸船が見えた。さらにカメラが回ると草原が広がる、そこをフレデリックが走っている。彼が止まって振り向いた、途端に矢を受けて倒れる。
「ストップ、ちょっと戻せ。彼が立ち止まった所に何かあるだろう」
 艦長の指示を受けて、アルフレッドは画面を操作する。
「拡大します・・・十字架?」
「私にもそう見える。フレデリックはキリスト教徒の墓を見つけた。そこに草は生えていない」
「はい、土が盛り上がっているように見えます」
「アメリカ人が死んだのは、最近だな」
「アメリカ人ですか?」
「日本人にキリスト教徒は少ない。墓は1つだけか?」

 アルフレッドは再生を続行すると、草原に男の背中が現れた。
「オスカーだ!」2人が同時に叫んだ。
 彼はレーザーガンを撃っている。弓矢を持った3人の原住民の1人が倒れた。オスカーが振り向いて叫び、着陸船の近くに迫った敵を撃った。その直後に倒れた。
「オスカーは着陸船を守ったんだ」
「彼の勇気と犠牲的精神を讃え、冥福を祈ろう」艦長は十字を切ると言った。「奴等の正体を見せてくれ」
 弓を構える顔が映るとアルフレッドは呟いた。
「人に似ている・・・いや、サルだ」
「狂暴なサルだ。このことは口外するな。時期をみて私から発表する」
「分かりました」アルフレッドは答えながら考えた。
期待できると言う惑星201光年先の星、そこに移住出来る可能性は非常に小さい。それはこのパイオニア号の過去が証明している。2度続けて、移住可能な惑星が見つかる可能性は、限りなくゼロに近い。
結局、我々は仲間が死んだ星に行くしかない。敵が狂暴なサルだと知れば、クルーは移住を嫌がるだろう。しかし、住めるのはサルの星だと艦長は予想している。艦長が発表するとしたら、そこに着陸した後だ。

チヒロは考える。惑星イズモにアメリカ隊がいれば、チャレンジャー号のチヒロに会える。アスカのチヒロは村人から殺人を要求され、それをチャレンジャーのチヒロへ伝えた。そして、チャレンジャーのチヒロは、核爆弾を使ったアメリカを罰すると言った。その結果を知りたいとアスカのチヒロは思った。チヒロは人間と協調するように設計されていた。しかし、アメリカ隊に対して2人のチヒロは設計とは違う対応をした。それは正しかったのか?チヒロはもう一人の自分と会って互いの・・・

 イザベラはロボット犬のコードを抜いた。
「これでスッキリしたわ」
そう呟くと犬を抱き上げた。
「アイラ、久しぶりだね。センはワンパターンで飽きちゃった。楽しかったのは最初だけ」
「ワンワン」
「そうよね、あんたが一番よ。エミリーごめんね」
 イザベラはメモリーを抜くとゴミ箱に投げ捨てた。


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