パイオニア号のウィルソン艦長は決断した。 「諸君、惑星探査計画は終了した。我々は地球に帰還せねばならない。残念ながら移住できる星は見つからなかったが、それは諸君が完璧な仕事をして、この空域に有望な星が無いことを証明したということだ。私は君たちを誇りに思う」 食堂に集まったクルーが一斉に拍手した。艦長はそれを制すると言葉を続けた。 「諸君も知ってのとおり、惑星探査に14の空域が設定された。しかし名乗りを上げたのは7ケ国に過ぎない。つまり半分の空域は空いている。しかし、他の空域を探査することは宇宙協定で禁じられている」 クルーが残念そうな顔をする。艦長がその表情を見まわして言葉を続けた。 「諸君は歴史の授業で大航海時代を習っただろう。コロンブスがアメリカ大陸を発見し、その先へ進んだのがマゼランだ。その海を渡った3ヶ月と20日のあいだ嵐はなかった。そこで穏やかな海の意味で太平洋と名付けた。彼の艦隊は水と食料が少ないまま未知の大海に乗り出した。水平線しか見えない単調な日々が続く。上陸できる島は無い、その嘆きを込めた命名とも言われる。我々も宇宙という海へ漕ぎだした。その空域はまさに太平だった。我々の航海がマゼランと同じように終わって諸君は満足か? 「俺は不満だぞ」「もっと探そう」クルーが口々に否定する。 「マゼランの後でハワイやオーストラリア大陸が発見された。見つけたのは我がイギリスのキャプテン・クックだ」 「オオッー」クルーたちがどよめいた。 「私は宇宙協定を破ると決めた。その責任は全て私一人にある。諸君は宇宙のキャプテン・クックになれ。パイオニア号は隣の空域を通って地球に戻る、惑星を探しながら帰ろう」 「ウォー」食堂は艦長を賞賛する大歓声につつまれた。
食堂を出るとイザベラがエミリーに言った。 「お願いがあるんだけど、アイラが喋るようにしてくれない?」 「あら、言葉を話す犬は気味が悪いって言ってたじゃない」 「退屈すぎて話し相手が欲しくなったのよ。エミリーの得意分野でしょ」 「犬が?」 「違うわ、プログラムよ」 「才能が無いのに気づいてパイロットになったのよ」 「今でもやってるんでしょ」 「難しいことは忘れたわ」 「ロボットが話すソフトは簡単よね?」 そう言いながらイザベラはカフェ・コーナーをのぞくと大きな声を出した。 「オスカー、聞いて。エミリーが簡単なソフトを作ってくれないのよ」 オスカーがエミリーに聞いた。 「何のソフトだい?」 「プログラミングは止めたのよ」 エミリーの代わりにイザベラが答える。 「喋るロボット犬、話し相手が欲しいのよ」 「そのくらい作ってやれよ。君ならできるだろう」
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