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作品名:前立腺ガン奮闘記 作者:尾田久

最終回   6  照射は12回
治療が始まった。治療開始の1時間前に排尿して、水を250〜300cc飲む。20分前に着替えてガウンを羽織って待合室に行く。時間になると担当者が迎えに来る。治療室に入ると下着姿で台の上に寝る。身体を固定するとレントゲンで大小便をチェックする。OKなら重粒子線の放射が始まる。ここまで20分くらいだ。4回に1度はCTで位置の確認をする。プラス10分ていど。つまり排尿を我慢するのは1時間20分から30分だ。おしっこの訓練は1時間の我慢だった。だが本番がそれより20〜30分長い。腑に落ちないが、患者としては黙って従うしかない。と言うか1.5時間の我慢は簡単だと思っていた。

僕にとっては問題なのは小より大だった。僕はカンチョウ恐怖症になっていた。
確実に排便するために、早起きをして冷たい水を1杯飲む。着替えも新聞も後にして、すぐに朝食を取る。飲み物は牛乳だ。食後にモビコールHDを水に溶かして飲む。この効果はあって、浣腸は免れた。

カンチョウを克服したことにより、さらなる問題が発生した。朝に飲んだ多くの水が、治療開始の1時間前の排尿で出し切れていない。そこへコップ1杯半の水が追加される。そして、下着にガウン姿で待機していると寒くて尿意を感じるのだ。広い治療室は薄寒い。固定具の冷たいプラスチックを押し当てられるとチビリそうだ。

何とか尿洩れもせずに治療は順調に進んだ。治療が残り3回になり、終わりが見えてきた。ところが、それは休日に突然来た。土曜日の朝に、強い尿意に襲われる。2時間に3回排尿をする。日曜には4時間で3回の排便だ。どうなっているんだ?治療の日だったらお漏らしと浣腸だ。
病院のHPには急性期の副作用が記されていた。頻尿と頻便だ。それは治療が終わってからの事だと僕は思っていた。だって、そんな副作用があったら治療が出来ないはずだ。

不安を抱えながら治療日を迎える。副作用なら病院が対応してくれるだろう。そう思いながら看護師に症状を訴えた。看護師はあっさりと、「そうですか。そろそろ来る頃なんです」。そう言うだけで何もしてくれない。同時に僕は気付いた。症状はあの時だけだった。この急性期の副作用は一過性のもので、看護師はそれを知っているから平然としているのかもしれない。
この日は尿意がいつもより強いだけで無事に済んだ。残りの2日間は強い尿意もなく終わった。

重粒子線の照射が終わって安堵したが、ホルモン療法とPSA検査は2年間続く。面倒だが仕方ない。と言うよりも自業自得だ。生検を先送りした結果、ガンが進行したからだ。もっと早く受けていれば、ホルモン療法はもっと短いか無しで済んだのだ。
皆さんが、もしもPSA検査の結果が悪ければ、早めに対処してほしい。僕のは悪い見本です。

治療そのものは、ただ寝ているだけだった。痛くも痒くもなく、闘病の実感はない。苦労したのは排便と排尿だった。だから、この題名をフン闘記とした次第である。


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