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作品名:前立腺ガン奮闘記 作者:尾田久

第2回   2  生検
先生の説明では、生検は肛門に超音波の機械を入れる。その時に少し痛いが、直腸から針を刺すのは痛くない。僕は安心したような、不安なような・・・痛みが少ないとはいえ、肛門か・・・。だが断れるわけでもない、受けるしかないのだ。

エレベーターを降りると誰もいない。人であふれている1階とは大違いだ。その静けさに緊張が高まる。日帰り手術センターのドアを開けると、看護師さんが待ち構えていた。紙パンツとガウンを渡され、全部脱いで着替えるように言われた。靴下を脱ごうとしてスリッパが無いのに気付いた。看護師さんに聞くと「靴下は脱がずに、自分の靴を履きなさい」と言われた。

着替えて血圧、体温などを計ると、同意書を出せと言う。先生から渡された2枚の書類を僕はリュックに入れていた。だが緊張していた僕は、看護師に言われた同意書だけを出した。もう1枚のことは頭になかった。命令口調の看護師に従うだけだった。
10分おきに血圧、体温などを計ると、点滴を付けた。その後で、もう1枚の書類を出せと言う。点滴スタンドを引っ張りながら更衣室に戻る。多分、看護師は不慣れで、着替える前に2枚の書類を要求するのを忘れたのだろう。今日はついてないな・・・不安が増す。

日帰り手術センター室を出て手術室へ向かう。その扉は看護師のIDカードで開いた。映画ではよく見るけど、身近で見るのは初めてだ。特別な所へ行くと思うと心臓がバクバクした。広い廊下に大きなステンレスの扉が幾つも並んでいる。立派で迫力さえ感じる。バクバクしながらその1つに入った。

ベッドに横になると「麻酔を塗ります」と肛門に指が入ってきた。そして穴の中を塗りたくる。気持ちが悪い。少し間を置いて、硬くて太いのが入ってきた。麻酔が効いて痛くはないが、非常に不快な感覚だ。やがてズンと衝撃があり、直後にプシュッと音がした。針が飛び出し、組織を吸い込んだようだ。先生の話と逆だ。挿入よりも針が痛い。と思う間もなく、2回目、3回目の衝撃がきたが痛みは少ない。痛いのは最初だけだと安心する。

やや間を置いて衝撃がくる、痛い。続いて2発の衝撃はさほど痛くない。そこで気付いた、次の衝撃は痛いはずだ。その時ズンがきた。予想通りにきた痛みは、より痛く感じる。とはいえ、その痛みはさほど強くはない。経験した事のない直腸の痛みに、耐える方法が判らない。嫌だ、嫌だ、早く終わってくれ。
最後の3発が終わると、医者が丁寧にお尻と股間を拭いてくれた。更衣室に戻ると、紙パンツに少し血が付いていた。お尻は痛くはないが、何か重苦しい感じだ。
会計を待つ間に、12回の衝撃の理由を考える。前立腺は尿道の周囲を一周している。それを身体の前後左右で4つの部位に分けると、1部位に3発、それが4カ所で12発だ。最初の衝撃で直腸に穴が開く。2発目、3発目の痛みが少ないのは、すでに開けた穴を通るからだ。そして次の部位に移ると、新たに穴を開けるので最初が痛い。
理屈は判ったが、だからといって重苦しさが軽くなる訳ではない。下手な考え休むに似たり、と言うが休みにもならない。理由を知って、余計に重苦しくなった気がする。
1度の挿入で、4つも破れた、我が直腸・・・トホホである。


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