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作品名:法術装甲隊ダグフェロン 『特殊な部隊』の物語 作者:橋本 直

第10回   第二章 落ちこぼれが落ちた『罠』
第10話 それ以上にパイロットに決定的に向かない理由


 それ以前に誠には決定的にパイロットには向かない理由があった。

 それは『乗り物酔い』である。

 最悪『ゲロを吐く』と言う結果が多くあった。当然のように小さいころから『乗り物』に酔う傾向が強かった。今でも誠は電車でさえ乗るのをあまり好まないほどの乗り物との相性は最悪だった。パイロット養成課程に進んだ後にもその症状は悪化を続けた。遼州星系では一般的なロボット兵器『シュツルム・パンツァー』に至っては、最初のうちは見ただけで吐くというありさまだった。

 それなのに、なぜか自分一人で運転するときのトラックの運転は得意だった。

 クレーンも得意。牽引の免許も研修中に取得した。パワーショベルなどの特殊重機の操縦も得意だった。他にもクレーンのワイヤーを結ぶ技術である『玉掛け』の資格もある。指導の教官から『港湾関係の仕事ならすぐできる』と太鼓判を押されたほどのものだった。

 誠の『乗り物酔い』は、操縦する機体に載っているのが荷物なら何でもないが、人が乗っているとまるで駄目だった。胃がしくしく痛み、運転どころではなくなる。

 トラックも助手席に教官でも乗って居ようものならアウトだった。バスも自家用車も一人で運転する分には何の問題も無いのだが、他人が一人でも乗って居ようものなら確実にハンドルを誤ったりした。

 自動車の免許は軍の入隊時に取らされたが、今では完全にペーパードライバーである。

 その結果、同期のパイロット候補達は誠を『もんじゃ焼き製造機』と呼んだ。他にも『しもつかれ』、『パイロット不適合男』、吐瀉物関係のあだ名にはそれこそ事欠かなかった。

 同期のパイロット候補生達は誠を完全に馬鹿にしていた。

 幼稚園時代から続くその『胃弱の呪い』は、見た目はさわやかなスポーツマン風の誠から友達と彼女を奪い続けることになった。

 そんな『乗り物に乗ることすら無茶』な誠である。パイロットなどとても無理なのははじめから分かっていたことだった。

 それでもある意図が誠を無理やりパイロットへの道を進ませようとしている。誠はその意図に逆らうこともできずにただ流される日々を送っていた。

 東和共和国宇宙軍に入隊して以来、誠は『胃薬』と『乗り物酔い止め』が手放せなくなっていた。それでも体を壊さなかったのは誠の類まれなる体力と食欲の賜物だった。



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