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作品名:ロックン・ロール・サーカス 作者:村瀬"Happy"明弘

第3回   オール・トゥゲザー・ナウ
(オール・トゥゲザー・ナウ)
 
 数日後、サリーにバーバラから電話が掛かって来た。
 「ハーイ、サリー。マイケルの奥さんメラニーと連絡取れた?」
「ええ、取れたわ。とてもクールな話ねって言ってたわよ。でも今イギリスにいないんだって。しばらくは戻れないとも言ってたの。その代わりマイケルの娘さんメイがイギリスに居るからマイケルには内緒で女性同士で集まることを言っておいてくれるって。連絡先も聞いたわ」サリーは着実に準備を始めていた。
「あっそう。じゃあそうしましょ。キースの奥さんパティには連絡したんでしょ?だったら月末のサタデーに私の家に集まらない?」バーバラがさっそく召集を掛けた。
「分かったわ。二人に連絡しておくね。三十日ね。何時頃?」
「そうねぇ。久しぶりだし、メイとは一度しか会ったことないから昼過ぎ、うぅんそうね一時でどうかしら?」
「OK!楽しくなりそう。だって世界を驚かすんだもの。ワクワクするわ」サリーの声はたいそう弾んでいた。
 そうして女性陣主導で計画は着々と進められていった。
 
 バーバラの妹マージョリー・ウォルシュの家にて。
 「あなた。月末のサタデー空いてる?」マージョリーが夫のジョーに聞いた。
「ええっ三十日か?空いてるよ。ってか空いてない日はないな。最近レコーディングもライブもねぇから。家で弾いてるだけじゃつまんねぇ。で何?」ジョーはざんばらなブロンド髪をかき上げながら言った。
「お姉さん、バーバラが家に来ないかって」マージョリーが明るく答えた。
「へえぇ、いいじゃねぇか。旦那のリチャードも居るんだろ?」ジョーが手真似、顔真似でリチャードの髭面とサングラスを表現した。
「聞いてないけどジョーも一緒にって言ってたから居るんじゃない」マージョリーは呆れた顔で苦笑いした。
「しばらく会ってねぇな。義兄貴とも。ギターも持って行くか。彼の家にはろくなギター置いてねぇからな」ジョーは近くに置いてあるフェンダーのストラトキャスターを手に取った。
「いいんじゃない。じゃあOKしておくね」マージョリーはにこりとしてウインクした。

 月末、当日。
 「いらっしゃい。サリー。もうみんなお揃いよ」バーバラとリチャードが出迎えた。
「ハーイこんにちはー。遅くなってごめんなさい。だってねぇロナルドが行かないでくれってしつこく言うもんだから。でも肘鉄くらわしてやったわ」サリーはその仕草を見せた。
「おいおい余り無茶するもんじゃねぇよ」ジョーがグラス片手にサリーに近づいて来た。
「あらっジョーじゃない?マージョリーも。やっぱり呼んだのね」サリーがバーバラを見ながらマージョリーとハグをした。
「詳しい話はのちほど。何飲む?シャンパン?」バーバラにサリーが軽く頷きグラスを受け取ってみんなが見えるように掲げてから一口で飲み干した。
 バーバラとリチャード二人の家に集まったのはジェイムズの妻ナンシー、マイケルの娘メイ、キースの妻パティ、バーバラの妹マージョリーとその夫のジョーそしてロナルドの妻サリーの六人。合わせて八人がミーティングを始めた。
 
 「まずロナルドがソロアルバム作るっていうストーリーでいいわね」さっそくバーバラが本題に入った。
「ストーリー?ソロアルバム作るんだ。へぇそうなんだ。だから俺が呼ばれたってわけだな。でも本人ぐずってんだろ?後で呼ぶのかい?サリー」ジョーがしごく当たり前のことを聞いた。
「ヘイ、ブラザー実はな・・・」代わりにリチャードが一部始終を語った。
「ヤッホーすげぇ!そりゃあすげぇ!で俺は何すりゃいいんだ?」話を聞き終えたジョーが叫んだ。
「そりゃあもちろん何曲か参加してもらうよ。プロデュースもやってみるかい?」リチャードがサングラスを下にずらしてウインクした。
「いやいや一曲でも弾かせてもらえたら十分だぜ。なんなら弾かなくたっていい。プロデュースはジェフリーがいいんじゃねぇか?」ジョーの表情からは興奮が抑え切れないことが見て取れた。
「ううぅん俺もジェフリーは気心が知れてるからいいとは思うんだけど、こっち寄りになり過ぎるだろ?だから彼らが一緒にやってるドン・ウォズ。俺も一回やってもらったし声掛けようかとも思うんだ」リチャードの言葉を聞いてそこに居る誰もが本当に夢が実現しつつあることを実感していたに違いない。
「でも義兄貴。ロナルドがぐずってんなら話が進まないんじゃねぇか?」ジョーがざんばらなブロンド髪をかき上げながら言った。
「そうなんだよ。ロナルドの奴、酷く頑ななんだ。なあサリー」リチャードがサリーに困った表情を見せた。
「ええ、なんならもう一回肘鉄くらわそうか?」サリーが眉間にしわを寄せて言い放った。
「力尽くはよくないわね。でもそもそも何でそんなに嫌がってるの?ロナルド」バーバラはみんなが疑問に思っていることを代表してサリーに聞いた。
「私にも分かんないの。絵が描きたいって言ってごまかしてたけど」サリーがうんざりした顔で呟いた。
「じゃあこうしたら」キースの妻パティが話に加わった。
「えっどうするの?」すかさずサリーが聞き返した。
「アルバムジャケット描かせるのよ。裏面にはメンバーの名前も書かせたら観念するんじゃない?だからスタジオ入る前、先にジャケット描いてもらいましょうよ」パティがいいアイデアでしょ、と言いたげな顔を見せた。
「イッツオーライ!それはいい考えだわ。だったらみんなで押し掛けましょう」マイケルの娘メイは父親の影響そのままの言い方をした。
「えっいつ?」サリーが不安気な表情を見せた。
「今からイェーイ!」メイが即答した。
「ちょっと待ってよ。今からなんて。家の中散らかってるし・・・ダメよ」サリーは興奮気味に少し強く返した。
「ここは一度冷静になって計画を練りましょ。『急いては事を仕損じる』よ」バーバラが一旦場を落ち着かせた。
「じゃあもう一度確認だけど、ロナルドがソロアルバム作るってことからね」バーバラに皆が頷いた。
「スタジオはどうする?やっぱりロナルドん家のスタジオだよな。その方が自然だもんな。ブラザー?」リチャードがジョーに言った。
「ああデモテープはな。しかし・・・これほどのビッグプロジェクトなんだから最終レコーディングは最高級のスタジオじゃねぇとダメだ」ジョーがプロデューサー気取りで返した。
「そうか、そうだな。まぁそれはプロデューサー決めてからにするか。でもその前にロナルドを説得しなきゃ始まらないぞ。ブラザー」リチャードがシャンパンを飲み干して言った。
「それこそ今から行くか?義兄貴」ジョーも同じくグラスを空にした。
「さっきダメって言ったでしょ!」サリーが両手を振り上げながら叫んだ。
「いや、美しいマダム。俺たち二人で行くんだよ」リチャードが英国紳士らしく丁寧なお辞儀をしながら言った。
「それでは参りましょうか義兄貴。いや、サー・スターキー」ジョーもリチャードとサリーにお辞儀をした。
「えっ私は?」サリーが戸惑いの表情を見せた。
「マダムはここに残ってみんなでレディ同士の作戦でも考えてくださいな」リチャードが今度はサングラスを外してウインクした。
「えっええ、分かった。じゃあロナルドのことお願いするわね」サリーが少し腰を落として会釈した。

 「ここは二人に任せましょ、サリー。リチャード、ジョーもしっかり。ディナーには戻ってね。出来ればロナルドも一緒に」そう言ってバーバラが二人を送り出した。


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