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作品名:発酵 作者:野村英昭

第3回   3
第四章

 彼女の家は、  川から一キロ程度行った、小高い杜の丘にあった。 瀧高東照宮神社は、かなり古い、奈良時代くらいの昔に、前身であった、小さな祠が建てられ、今の立派な建物は、鎌倉時代に創建されたと思った。彼女は、ここで、巫女をしている。実家がこの瀧東東照宮神社で、そこの二女で家業の手伝いをしている。
境内に入ると、彼女は、掃除をしていた。俺を見ると、少し驚いた顔をしたが、直ぐに掛けてきた。
「済まない、お礼も言わず、出ていって」彼女は、涙をながしていた。
ガッツん、顎に強烈な一発を食らった。彼女は、空手部に入っていた。俺は、また、気を失った。
気がつくと、大きな木が見えた。葉の茂みから漏れる光が眩しかった。
「気がついた。相変わらず、弱いわね」本殿の回廊の板の間は、冷たくて気持ちよかった。
「あったく、いきなり、殴るるか」顎がヒリヒリした。た
「そうさせる、からよ。自業自得よ」
俺は、板の間に頭を擦り付け、お礼をいった。
「お世話を掛けました。有り難うございました」
「まったく、心配したのよ」彼女は、笑っていた。俺は、笑え無かった。
「また、仕事で何かあったの、全部吐き出せば、楽になるわよ、ほら」
その時、境内の鳥井の前に、見覚えのある人物を見つけた。
「ちょっと、行ってくる」俺は、その人物の元に行くと、数秒で、戻った。
「あの人、外人さん?知り合いなの? それに、笑顔。良いことあった訳」
「あぁ、全て、話すよ」

 美和の反応は、以外に冷淡だった。
「悟の仕事は、犯人を見つけることなの? 違う気がするけど、それより、会社に報告した方がいいんじゃない?」
俺は、急いで上司に電話した。社内は、まだ、混乱が収まっていない様子で、俺は、岡山県内の他の蔵も廻るように指示された。
境内に戻ると、美和が言った。あそこにある樽、何度と思う?
本殿ま脇に二つの大きな樽が積まれていた。
「あれはね、地元の味噌蔵さんが、毎年、その年の初味噌を奉納してるのよ」
「知らなかった」
「毎年、同じ様に作っていても、毎年、同じものは、出来ないそうよ。麹とか大豆とか天候によっても、違うみたいよ」
「結構、詳しいだな」
「悟は、もっと、味噌の事を知る事の方が先じゃない。今も、味噌汁飲んでないのかな?」
「う、まあ」
「あ、これから、する事があるから、またね」
「あ、あ、また」
「家にも顔出しなさいよ」
駆け出した美和が、後ろを振り返り言った。

第五章

 家は、三年前と変わらない様に思えた。玄関を入り、リビングに行くと、キッチンで仕事をしている母の姿があった。
「ただいま」振り返った母は、びっくりしたように
「さとるちゃん、どうしたの?いきなり、現れて、会社で何かあったの?」
「いや、なんでもないよ、ただ、近くに仕事で来たから寄ってみた」
「そうなの?連絡よこさないから」
「ああ、ごめん、連絡したら余計な心配かけるかなと、思って」
「昼御飯作ってるけど、食べてく?」
「余計に作るなら、いいよ」
「何言ってのよ、主婦をなめないの」相変わらず、威勢が良くて、安心した。
「親父は?」食卓に座って聞いた。
「お父さんは、友達とお出かけ」
「そうか、残念」
「父さん、あんたのこと、心配してたわよ」
「え、まさか、そんなこと、会えば、小言ばかりの、親父が」
「素直じゃないからね、あんでも、気に掛けてるのよ」
「そうなんだ」
食事は、急な帰郷にも関わらず、俺の好物も用意されていた。俺の前には、当然、味噌汁は、置いてる無かった。
「あんた、味噌の商品、扱っているのでしょ、味噌汁、飲めるようにならないと、飲んでみる?」俺も、少し前から、飲めませんとは、上司や職場の仲間に言える訳もなく、何とかしなくてはと、思ってはいた。
「ああ、じゃー飲んでみるかな」
小さい頃に、味噌汁が嫌いになったのは、別に味噌が嫌いと言う訳でもなく、今さら、分析しても、始まらないが、具が悪かった、でしか、ならない。
匂いを嗅げば、小さい頃に、嫌いセンサーが働き、嫌悪感しか感じなかった、物とは違って、奥深い豊かな匂いがした。
一口、口の中に流し込むと、舌の上で、旨みが広がった。何か、太古の昔に戻ったような感覚だった。今まで、毛嫌いしていた、時間が後悔に感じられた。
「旨い」
「そうでしょう、日本人なら、味噌汁を飲まないとね、日本の誇りよ」俺は、何か勘違いをしていたようだ。配属されてから、勉強して味噌の事は、理解していたと思い込んでいた。が、しかし、やはり、味噌汁一つ飲まなくては、本当に理解したとは、言えないと、言う事だ
実家を後にして、岡山県内の取引のある蔵を回った。同じような騒動が発生していた蔵は、一件だけで、もう一つの蔵は、平常どうりだった。騒動の発生していた蔵は、やはり納品は無理の状態で、原因も、目下の所、不明だった。笹賀屋と何か共通の出来事や要因がないかと探ったが、此は、と言う物は、出てこなかった。唯一、その蔵は、佐賀屋の分家と言うか、その当時の蔵主の兄弟が開いたもので、同じ麹を使っていた。会社に報告をすると、問屋に納める分は、何とか確保出来たらしい。引き続き調査に当たるように、指示があった。
次の朝、実家を出ると、蔵へ向かった。そして、分析の結果を伝えた。社長はじめ、幹部の顔色は、前にも増して、悪くなっていた。以前訪れた後、熟成中の樽の味噌は、全て処分し、新規の仕込も、中止していた。もう一度、一個ずつ、工程を精査して行けば、上手く行くと意見もあったが、実施されていなかった。
俺も、工場中の消毒を提案したが、菌が居なくなる為、反対された。
会社に戻ると、先生から分析結果が届いていた。そして、結論として記されていたのは、麹菌の数の減少が異常にだった事だ。その原因として、先生が推論として記されていたのは、自己消滅。この世界には、数えきれないほどの菌が存在しており、それらは、増殖と滅亡を繰り返している。菌同士は、共存をかけて、縄張り争いを起こしており、もろもろの、条件や環境などで、その数も上下する。菌は、その防衛手段として、毒を生成する、そして、自らも自滅することもあるらしい。何が原因で、その様な状況に至ったかは、定かでないらしい。

第六章 
その翌日、得意先を回っている時、知らないワンボックスの車に横付けされた。
「おい!危ないじゃないか」思わず声をあげた。すると、車から外人が出てきた。その顔に見覚えがあった。
車の中に入る様に言われ、中に入った。
彼女は、その後の、捜査の内容を話してくれた。しかし、その見返りに、俺の調査の内容と引き換えだ。彼女の話によると、マークしていたテロリストの一味が、長谷川と接触したらしい。テロリストの雇い主は、グローバルな投資をしており、違法で強引な手法で、市場の相場をコントロールし、利益を得ているらしい。今回の事件は、何かの予備的な実験を的なものらしい。奴らが、いったい何を企んでいるかは、まだ、分かっていないらしい。長谷川の口座には、大金が振り込まれており、行方は、分かっていないらしい。俺は、大学の分析結果を話した。また、何か有ったら、向こうから接触してくるらしい。
彼らの事は、秘匿する約束をさせられているので、誰にも、話せなかった。


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