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作品名:仮名 メモ男 作者:野村英昭

最終回   2

その後、毎日、誠は夢をみて、メモにそれを描いた。
宮本は、毎日、石を取り出した。
池谷は、毎日、石をみて、スケッチした。
それは、30日間続いた。そして、31日目から、夢は見なくなった。
石は、30個、全て違う模様の物だった。三人は、模様を調べた。
しかし、一向に、何なのか分からなかった。

「一体、此れは、何なのでしょうか?」宮本がつぶやいた。池谷もつぶやいた。
「もう、石に悩まないでいいのか?」
「ほっといて、いいのか?」
「あの、夢に何か出てこないのですか?」宮本が言った。
誠は、あの日から、まったく、夢を見なくなったのはいいが、新たな謎が生まれた。これを、放置していい物なのか?誰かに相談しても良いものなのか?誠は悩んだ。
「三人が、集まったのは、偶然とは言い難く、この為に、異常な能力が備わり、そして、石が30個集まった。だが、これを、どうしろとの声は聞こえてこない。二人の意見を聞きたい」
「私は、また、誰か、来るのではないかと・・・思いますが?」と宮本。
誠と宮本は、池谷を見た。池谷は、少し考えるように俯き顔に手をあてた。
「私はですね、元の生活に戻りたいです、もう、石が出ないのならば、私たちの使命と言うか、作業は、終了したのではないかと考えます。後の人に、引き継げばいいのではと?」疲れたような顔をして池谷が言った。三人は、暫く黙り込んだ。
「お茶にしようか」誠は、台所へ向かった。

お茶を一口飲んで、誠は、言った。
「こういうのは、どうだろう?・・・ここで、一旦、解散して、元の生活に戻り、誰かの接触を待つ、何かあったら、連絡を取り合うとする」
二人は、家を出て行った。また、静かな隠居生活が始まった。問題は、此処には携帯が繋ながらないこと。郵便は届けてもらえるが、急の要件となると、心もとない。自分の生活も、変える必要があるのではないか?もう、夢も見ないし。
だが、メモは未だに、存在する。
4週間後、宮本から手紙が届く。内容は、まさに予想通りと言うか、これで、我々が何かの力で操られている事が、証明されたようなものだった。
三人は、また、集結した、一人を加えて。
中松と言う大学で考古学を教えている助教授で、宮本の友人の友人らしい。手紙によると、数日前に友人から相談があって、面会したところ、確定した。
つまり、我々の新しい仲間という事。
中松さんの奇怪な現象は、朝起きると、顔に地図が張り付いていた。見覚えのない日本地図で種類は二枚。一枚は、ある地方の地図、そして、もう一枚は、坑内図らしい。御多分に漏れず、皆と同じ経験をなぞられたとの事。つまり、処分しても、毎朝、出現する。職業がら地図の見方には精通しており、その地図が、古い銅鉱山の場所を示す事は、直ぐに分かったようだった。そして、友人に相談したところ、宮本さんと知りあったと言う訳だった。

我々は、中松さんと親交を深める時間も惜しみ、早々に、出かけた。地図の示す場所へ。場所は、山口県美祢市東町の長登銅山。国の遺跡に指定されている。奈良の大仏も此処の銅山から銅を搬出したらしい。しかし、今は、閉山され、簡単には入れない。装備を整え、人の居なくなる夜を待った。鉱山は閉鎖されてからだいぶ経過しており、中に入るのは危険が伴う。中松さん以外は、洞窟探検等の技術のない素人で非常に生命の危機に遭遇する可能性もあり得る状況だったが、あえて、危険を承知で入山した。坑内は、やっと、人ひとり入れる感じで、灯りを頼りに一歩ずつ慎重に進んだ。坑内は、複雑で地図がなければ、迷子になるのは必然だった。距離にして200m位進んだ処で、坑道が広くなったが、其処までに要した時間は、歩みが遅く、三時間ほど費やした。夜明けまでは、まだ、相当時間があるので、ここで、一旦、休憩をとる事にした。
「ここで、休憩にしましよう。お疲れでしょう」リーダー役の中松さんが、言った。
「宮本さんも、池谷さんも、大丈夫ですか?」皆を見渡したが、意外と元気そうだった。
「正直言うと、少し、怖いです」宮本さんが言った。
「ちょっと、運動不足が露見したみたいで、足が少し疲れぎみで」と池谷さんが言った。
「無理もないですね、リラックスしたハイキングと行きませんからね」と中松さんが言った。さすがに、余裕が見られる。
「中松さん、後どのくらいですか?」
「あと少し、ですね」装備は、中松さんの支持の元、揃えた。着替え、水、食料、暖房、火、無線、ロープ、ヘルメット、スコップ、万が一の為、友人に登山に行くので、二日たっても戻らないなら、警察へ行く様にたのである。荷物の他に、30個の石が、重荷になっている。中松さんは、考古学用の掘屈用の装備も持っている。
その後、十分程度の時間で、目的の印の所に到着した。そこの場所は、右に坑道が二つある左側の壁面だった。しかし、そこには、何も無い、ただの岩だけだた。
「ここですか?」
「ええ、ここのはずです」
「何もないわね」
「本当に?」
三人は、顔を見合わせた。中松さんは、壁を調べるように、近寄り、手で岩触ったり、道具で叩いたりした。
「掘りましょう」
「え、でも、大丈夫ですか、崩れたりしませんか?」と池谷さんが、天井を見て言った。
「大丈夫ですよ、此処一体の岩盤は、丈夫です」
中松さんは、道具で、岩を叩き始めた。でも、言われた通り、かなり堅いようだった。一回の動作では、僅かな岩しか剥がれなかった。作業は、交代で、一時間ほど続いた。そして、遂に、岩の中から周りの岩とは材質の違う板状の物が現れた。そして、その板には、30個の、窪みがあった。
「何かしら、これ?」
「中松さん、分かりますか?」と池谷さんが言った。
「この大きさ、これと同じみたいだ」と、池谷さんが言うと、鞄の中から石を取り出し、溝にはめると、ぴったりの大きさだった。
「おお、本当だ、ぴったしだ」と誠が言うと、池谷さんが、鞄から石をぜんぶ取り出し、はめ始めた。皆も手伝った。そして、30個全て、はめた。四人は、暫く、その板に注目した。しかし、何も起こらなかった。
「違った?、関係ない?」と池谷さんが言った。しばし、沈黙が流れた。
ここまで、苦労して、何もないとは、思いたくない。今までの苦しみや苦悩が報われない。俺達を、此処に連れてきたのは、何の為?
すると、誠は、ある事に気付いた。
「宮本さん、メガね出して、板と石を見て」宮本さんが、急いで眼鏡を掛けて、見ると、
「あ、ああ」と奇声をあげた。
「板に、石と同じような、模様が描いてあるわ、あるのよ」
「それですね」と中松さんが叫んだ。それから、宮本さんの指示に従い、石のはめ込みをやり直した。
「出来たな、完成した」池谷さんがつぶやいた。
「間違いないですか?」と誠が言うと、宮本さんが、眼鏡を手で押さえて、前後左右に板を見て、言った。
「間違いなしです」しかし、数分経過しても、何も変化がなかた。再び、皆に暗い空気が漂い始めた時、変化が現れた。
板の後ろの岩盤が崩れ、ドアの様な物が、姿を現し、そして、静かに開き始めた。
「わー、危ない」
「退避。逃げろ」四人は、慌てて、坑道の来た穴に飛び込んだ。天井の落成は無く、少し、土煙が舞い上がっただけだった。四人は、恐る恐る、扉の方へ戻った。扉は、岩とは違い、明かに人工物の様だった。そして、扉の中を覗きこんだが、真っ暗で何も見えなかった。四人は、一斉にライトを中に向けた。
そして、ライトに照らされた物を目視した。それは、・・・・



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