茜たちはなんとも言えない心地よさを味わっている。実に清々しい気分だ。 それにしてもと淳は所長を見た。 「所長、見直しましたよ。報酬はともかくキャンセル料もいらないとか普段の所長の言動からは到底信じられません。地球がしゃっくりをして逆回転でも始めるのかと思いましたよ。」 「淳君、給料減らされたいかね。」 「いいえ。口が滑りました。」 淳は肩をすぼめた。 「さすがに依頼された現物がないのに金は貰えないからな。」 所長もプライドはあるみたいだ。 「まぁ、こちらから断るつもりでいたんですものね。それで代金を貰うのはさすがの所長でも良心が痛みますよね。」 茜が所長に同調した。所長は深く頷いて 「まぁな。それに依頼されたものを渡せませんでは朝舞探偵事務所の信用問題にもかかわるからな。」 「言い方悪いけど渡りに船でしたわね。」 「茜ちゃん、そなたも悪よのう。」 「所長こそ。」 「ウフフフ。」 茜と所長はお互い顔を合わせてほくそ笑んでいる。 あぁ、茜ちゃんが僕の知らない茜ちゃんになっていく・・・。淳は嘆いた。 でもそんな茜ちゃんも好きだけどね。 心の中でそっと呟いた。
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