茜はさりげなく淳の背中に回り、鶫守に気づかれないように封魔陣を地面に置いた。封魔陣とは輪になったひも状のものに妖気を封じる細工が施してあって、その輪の中に一歩でも足を踏み入れたらその者の妖気を封じることが出来る代物。そして茜と淳がやるべきことは封魔陣の中に鶫守をおびき寄せることだ。 「覚悟なさい!」 茜が攻撃をしかけた。霊弾を次々と投げつける。 「その攻撃はわしには通じんぞ。」 鶫守が霊弾を跳ね除けにじり寄る。茜は一歩下がった。 すると今度は淳が無謀にも鶫守に突進していった。淳は霊気でガードした足で足蹴りする。鶫守はそれを受け止めようと己の足を繰り出す。お互いの足が激しく衝突し、鶫守が強引に弾き飛ばそうとした瞬間、淳はすかさず後方に飛びのいた。着地点を後ろに伸ばす。 茜は霊弾を繰り出すたびに少しずつ後ずさりし、淳も攻撃を仕掛け、決定的なダメージを食らう寸前に後方へと飛びのく、二人はそれを繰り返した。鶫守との間合いを一定に取りながら少しづつ後退する。鶫守は茜たちの攻撃を受けながら余裕綽々で前進していく。そうしているうちに鶫守は徐々に封魔陣がある場所へとおびき寄せられていった。 あと一歩で鶫守が封魔陣に足を踏み入れるというところまで来た時だ。しかしここで鶫守は茜たちの攻撃が自分を倒そうとするものではなく別の目的があるように感じた。立ち止まり周りに注意を払う。茜たちは心の中であと一歩なのに!!と舌打ちした。 鶫守は自分の足元にある封魔陣に気づいた。そしてニヤリと笑う。 「これが目的か。」 「クソッ!」 あと一歩で成功したのに!!茜と淳は悔しがった。万策尽きた。こうも力の差が歴然では打つ手がない。 だがその時だ。 「茜ちゃーん、淳くーん。」 呑気な声が聞こえてきた。所長だ。 「こっちに来ては駄目だ!!」 淳が慌てて叫んだ。しかし所長は何も知らず二人の元へ駆け寄ってきた。鶫守はまた妙な人間がやってきたものだと注視している。所長はそんなのどこ吹く風で息せききって茜たちに抗議した。 「ずるいじゃないか!抜け駆けするなんて!」 「いや、そんなことはどうでもいいから早くここから逃げて!!」 茜が焦って忠告するが所長はいっこうに聞かない。 「どうでも良くない!私を差し置いて秋川しずくに会おうとするなんて許さんぞ!」 「いやだから、それどころではないんですって!ここは危険なんです!」 淳も必死で所長を追い返そうとするが、しずくに会えるものと思い込んでいる所長は聞く耳を持たなかった。だが意外なことに所長の言葉を聞いて鶫守の妖気が揺らいだ。 「しずく・・・?」 鶫守が呟いた。 「?」 茜と淳は鶫守を見る。鶫守から余裕綽々は消え失せ、とても驚いている表情をしている。茜たちの胸に違和感が立ち上がった。
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