シュンケたちはようやくハラレニ国に到着した。ライトルと共に国境の門を目指す。門の前にはシュンケが良く知っている者の姿があった。レンドだ。シュンケたちはレンドの元に歩み寄った。 「レンド待っていてくれたのか。」 「当然だ。私も協力させてくれ。」 「よろしく頼む。」 ここから先はレンドも加わって、ますます心強い。すると近くにいた兵士たちがシュンケたちの元に集まってきた。 「レンドから詳しい話は聞きました。国王は国中に御触れを出し月鏡に関する情報を集めています。それと先ほど国王から指令が下りまして今から明日の朝まで国境の門を閉じます。」 「なに!?そんなこと出来るのか?」 シュンケが驚いて聞き返した。 「もちろん国王の権限です。明日の朝まで出入国が一切出来なくなるので混乱が生じるのは承知の上での決断です。でもそれもこの国に月鏡を閉じ込めておく為です。国境を閉鎖するのは明日の朝8時までです。それ以上は難しい。国王はシュンケならそれまでに月鏡を探し出してくれると信じているのです。」 「国王・・・。」 それほどまでに国王は自分に対して厚い信頼を寄せてくれていると思うとシュンケの目頭が熱くなった。ライトルとルナも国王の決断力の速さと国境を閉鎖するという大胆なことをやってのける実行力に心から感心した。さすが世界の大国ハラレニ国の国王だ。何より月鏡の為にそこまでしてくれる国王に心から感謝をした。するとレンドが 「シュンケ、ライトル殿、ルナ殿、実はつい先ほど国王から知らせがあった。ラパヌという農民が月鏡を見たそうだ。月族を名乗る者が持っていたらしい。その者たちは月鏡を持ったまま次の国へ行くと言っていたそうだ。おそらくそこで月鏡を売るつもりだろう。」 「月族を名乗る!?」 思ってもみない展開だった。でも確かに月鏡を売るなら月族を名乗っていた方が都合がいいのだろう。 「ちなみにそれはいつのことだ?」 「まだ一時間も経っていない。」 「ではまだ犯人も月鏡もここにいますね。」 「それは間違いない。ここで怪しい人物に目を光らせていたがそれらしき者は見かけなかった。」 「月鏡を何がなんでも探し出すぞ。」 「「はい。」」 シュンケの決意表明にライトルとルナが大きく頷いた。そこでレンドは表情を引き締めながら切り出す。 「その前に決めておきたいことがあります。ここからはライトル殿とルナ殿は共に行動して欲しい。もし月鏡が反応したら私とシュンケにただちに教えて欲しい。そこに犯人たちがいたとしたら私とシュンケでそいつらを捕まえる。犯人の姿を見かけたらライトル殿とルナ殿はただちに城へ向かって欲しいのです。」 「えっ!?」 ライトルとルナはレンドの提案に驚き戸惑う。 「そんな・・・!ルナはともかく僕はあなたたちと共に行動します。これは月族の問題です。」 「いいえお兄様、私も一緒に犯人を捕まえます。自分だけ安全な場所に身を隠すなんて嫌です!」 シュンケはルナの言葉に驚いた。ルナは清楚な見た目と違って負けん気も強いようだ。まるでナーシャみたいだなと苦笑いした。 「ルナお前は黙っていろ!女のお前に犯人に立ち向かわせるわけにはいかない!」 「今は男とか女とか関係ないです!犯人を捕まえるなら人数が多い方がいいでしょう!それに私は自分が許せないんです!あの者たちの正体に気づかずに月鏡を盗まれてしまった自分が許せない!その借りは返したい!」 「ルナお前という奴はなんでいつもそう強情なんだ!」 ルナの口から強気な言葉が次々と出てくる。レンドはあっけに取られている。シュンケはなんだか愉快な気持ちになってきた。 「あははは。」 「シュンケ?」 「いや、失礼。悪いが兄弟喧嘩は後にしてくれ。」 シュンケがにこやかに言った。言われたルナとライトルは恥ずかしくなって顔を赤くしている。 「ルナは頼もしいな。だがもし相手が逆上したら何をしてくるか分からない。おそらく武器も持っているだろう。レンドと私は闘いに慣れている。でもライトルとルナは対処しきれないかもしれない。逆に二人が人質に取られたらこちらは手も足もだせなくなる。そういう事態は避けたいのだ。」 「・・・。」 「シュンケの言う通りです。闘いに手慣れたシュンケと私で動いた方がなにかと都合がいいのです。必ず捕まえますから安心してください。」 ライトルたちはシュンケとレンドに説得されてようやく納得した。確かに闘いに不慣れな自分たちが余計なことをしたらかえって足手まといになるだけ。 「どうかよろしくお願いしたします。」 ライトルとルナは深々と頭を下げた。シュンケたちは大きく頷いた。 改めて4人は気を引き締める。覚悟を決めいよいよハラレニ国の中へ入った。
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