シュンケたちはこれまでと同じように慎重に前へと進んでいく。太陽が10時の方向に差し掛かった頃だ。シュンケが前方を見据える。ハラレニ国の国境にそびえたつ高い塀が見えてきた。 「もうすぐハラレニだ。」 「はい。」 月族の村から飛び続けて一日半以上が経ってようやくハラレニに着く。突然シュンケが鼻をくんくんさせた。 「雨の匂いがする。それにあれは雨雲。どうやら雨が降っているようだな。」 「そのようですね。」 「ルナにも分かるのか?」 「はい、遠く離れていても雨の気配を感じるのです。」 ルナは雨雲を見て安堵の表情を浮かべている。 「さすがは月族だ。」 「そんな///でも雨が降って良かったです。雨乞いの儀式は必要ないですね。」 「あぁ、これで国王もレンドも国民たちも一安心しているだろう。ルナ、一旦地上に降りるぞ。ルナには合羽が必要だろう?」 「私は濡れても大丈夫です。」 「そうはいかん。風邪をひかれたら私が困る。」 「シュンケ・・・。」 シュンケに体を気遣われたルナの胸がまたしても高鳴る。どうしてあなたはこうも・・・。ルナは心の中で切なくなって泣きそうになった。 「ルナ、ライトルに下に降りると合図をしてくれ。」 「はい。」 ルナがライトルに手を振った。ライトルは頷きシュンケが下りてくるのを待った。 「月鏡の反応があったのですか!?」 「いや、ハラレニは今雨が降っているから早めに合羽を着た方がいいと思ってな。」 「そういうことですか。確かに先の方で雨の気配がしますね。」 「ライトルも分かるのか。」 「はい、月族の者ならだいたい感じ取ることが出来ます。それより合羽ですね。ちょっと待ってください。今すぐ用意します。」 「持っているのか?」 「そりゃあ、合羽は旅の必需品ですから。鞄にいつも入れてあります。儀式の時にいつ雨が降ってもいいようにというのもありますし、雨が降りますようにという期待を込めて持っているんですよ。」 「そういうことか。」 ライトルは鞍に縛り付けてある鞄から合羽を取り出した。 「でも困ったな。二人分の合羽しかない。ルナとシュンケで着てください。僕は雨に濡れても平気です。」 「いいや、ライトルとルナが着てくれ。私はいらぬ。」 「どうしてですか?風邪引きますよ。」 「合羽を着たくてもこの翼が邪魔で着れん。」 「あ・・・。」 ルナとライトルはシュンケの背中を見た。確かにこんな大きな翼があっては合羽など着られるはずがない。 「私のことは気にするな。雨に濡れて当たり前だし濡れたところで風邪をひくようなやわではない。」 シュンケに促されて二人はようやく合羽を着た。 「ハラレニまですぐそこだ。」 「ここまで月鏡の反応がなかったということはもうハラレニに入ってしまったということですね。」 「おそらく。とにかく行こう。」 「了解です。」
|
|