「もういじめやめろよ!」 「いじめてなんかしてないわよ!」 「いじめてただろう!?パシリ扱いしてその上わざと買いなおさせようとしたり。それと仕事押し付けたりしてるんだろう!」 「なんであんたそんなこと知ってるのよ!まさか私のストーカー!?」 「はぁ!?何が悲しくてお前みたいな性悪女をストーカーしなければなんねーんだよ。さっきお前公園前でデッカイ声で喋っていただろうが。聞こえちまったんだよ。」 「デッカイ声って失礼ね!それにいじめてないって言ってるでしょうが。むかつくからやっているのよ!」 「同じ事だろうが!!」 「同じじゃないわよ!だいたいあの子見ているとイライラするのよ!昔の私を見ているみたいで!」 「え・・・。」 俺が一瞬驚くと秀美は顔をそむけてしまった。髪に隠れて秀美の表情が見えない。 「あの子昔の私にそっくりなのよ。自分に自信がなくておどおどしていて。見ていてイライラするのよ。」 「だからっていじめていい理由にはならないだろ。」 「・・・歯向かってきて欲しいのよ。」 「は?」 「こんなこと出来ない!こんな理不尽なことしたくないってつっぱねて欲しいの!かつて私がそうしたようにやって欲しいのよ!いつまでも昔の自分を見ていたくないの。あんたには分からないでしょうけど。というかなんで初対面のあんたにこんなこと言わなければならないのよ!」 照れ隠しなのかまた怒っている。あぁそれでさっきのどこか嬉しげな表情か。 「なら綾さん反抗してきたじゃん。」 「まぁね、やっとだわ。でもまだまだよ。」 秀美は言葉と裏腹に表情は緩んでいる。嬉しさを隠せないようだ。まったく素直じゃないな。 「綾さんは変わろうとして今頑張ってるぞ。」 「分かっているわよ、そんなこと。でもまだまだなのよ。」 「まぁそう言うなって。ゆっくり見てやれよ。」 「あんた何そんなに偉そうなの?初対面の人間に説教なんてされたくないわよ!」 「綾さんが変わったらどうする?」 「さっさと変わって欲しいわ。だいたい散々いじめらてきた私が好き好んでパシリなんてやらせていると思うの!?こっちの方が早く解放してほしいぐらいだわ。」 秀美はまた照れくさそうに顔をそむけた。結局秀美はツンデレなんだな。綾さん、大丈夫だよ。 俺はなんだか嬉しくなって目の前の秀美を抱きしめたくなった。抱きしめないけどね。もしそんなことしたら俺は脳天に秀美のハイキックをくらうだろう。 秀美と綾さんの近い将来にくるであろう一緒にランチの未来図を想像してたら嬉しくなってにやけてしまった。そんな俺を見て秀美は 「キモッ!!」と一言残して去ってしまった。 俺は足取り軽く皆の元へ戻った。 「太郎ちゃんいきなりあの人のあとを追っていくからびっくりしちゃった。」 「ごめんなさい。一言いってやらないと気が済まなくって。でも追いかけてよかった。ってあれ?綾さんは?」 綾さんがいないことに気づいた。 「綾さんなら昼休みがそろそろ終わるからって行っちゃった。太郎ちゃんにもありがとうと礼を言っておいてと頼まれたわ。」 「それにしても僕知りませんでした。淳さんと茜さんの過去にそんなことあったなんて。何にも知らずに呑気に過ごしてきてしまってすみません。」 「太郎君が謝ることないよ。それにもう過去のことだから。」 淳さんはそう言ってにこやかに笑顔を見せた。 「茜さんもいろんなことあったんですね。だから今こんなに強いんですね。」 「あら、私は違うわよ。」 「え?」 「私は霊感が強いことでいじめられたことはないわ。」 「でも淳さんが茜さんも同じだって。」 「あぁそれならそう言った方がいいかなと思って。その方が説得力あるだろう?いわゆるその場のノリ。」 淳さんもあっけらかんと言ってのけた。 「私の家は代々巫女の家系でね。母も兄も妹もみんな霊感が強いの。そんなことは近所でも有名だし逆にそれ関係で近所からなにかと頼りにされていたわ。学校でも別にいじめられなかったなぁ。一度いじめられそうになった時に『こんなことしたらどうなるか分かってんの?』と脅かしたら偶然その子の周りで嫌なことが立て続けに起こってさ。びびって速攻謝ってきた。それっきり周りの子もさわらぬ神にたたりなしでいじめてこないし。楽勝な子供時代だったわ。」 茜さんは高らかに笑う。その姿はまさに女帝。 「偶然嫌な事が起こったって言うけど本当に偶然なんですか。もしかして本当になにかしたんじゃ・・・。」 「やぁね。そんな暇じゃないわよ。家に帰れば除霊だ透視だで忙しかったのよ。級友のいじめなんて取るに足りないわ、バカらしい。」 きっぱり言い切った茜さん。たくましい、さすがです。
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