俺は茜さんの助手として早速岐阜へ旅立つ準備を始めた。 茜さんも淳さんもひっきりなしに舞い込む依頼で忙しい身だけど、茜さんはちょうど難解な依頼を解決したばかりでスケジュールが空いていた。 そして今回の依頼は強い妖怪が相手ということで茜さんは淳さんに協力を頼んだ。淳さんは淳さんで別の依頼を抱えていたがこちらが最優先ということで依頼主に連絡し、こちらの依頼が解決したらそちらに取り掛かりますということで依頼主から了解を得た。 俺たちの準備は整った。ハヤトさんは俺たちが来るのを駅で待っている。準備に時間がかかるから先に駅に行ってもらったのだ。 「さぁ、行きますか。」 淳さんが出発の合図をする。 「えぇ。」 「はい。」 すると所長の呑気な声が俺たちの背中に届いた。 「いってらっしゃ〜い。怪我しないように気を付けてな。変な物食べて腹壊すなよ。それと蜜柑の食い過ぎは下痢になるから気をつけろ。」 蜜柑の食い過ぎって伯父さんじゃあるまいし。俺が呆れていると茜さんがいきなり伯父さんの耳を掴んで引っ張った。 「いでででで。」 伯父さんは痛がっているが茜さんはそれに構わず耳をひっぱって連れて行こうとしている。 「何をするんだ、茜ちゃん!!」 伯父さんは必死で抵抗している。 「なにって所長も行くんですよ。」 「え?」 「え?」 俺と伯父の声が重なった。伯父は何がなんだか分からないで慌てふためいているが茜さんは 「少しは働いてください!一緒に行くんです!」と引っ張っていく。 「行くって私が行ってもなんの役にも立たないぞ!太郎以上に役に立たん。太郎が行けば十分だろう?私はここで留守番をして・・・。」 「駄目です!行くんです!!」 茜さんは容赦なく伯父の耳を引っ張っていく。淳さんはそんな様子を微笑ましく見守っている。 「淳さんいいんですか?伯父が自分で言っていたとおりなんの役にも立ちませんよ。」 俺が親戚として申し訳なさそうに言えば淳さんはくすっと笑った 「いいんじゃないか?事件解決したらついでにそのまま社員旅行だ。」 伯父は抵抗むなしく飼いならされたダックスフンドの如く茜さんのなすがままだった。
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