トンダ星人が故郷に帰ってから五日が経った。 世間では自販機盗難事件は風化するどころかますますの盛り上がりを見せている。 あの人たちは良い人たちだったけど人騒がせには違いない。まったくとんでもない手土産を残していったものだ。 「おい、太郎。まだポーラは見つからないのか。飼い主が痺れきらし始めたぞ。さっさと見つけてこい。」 伯父が出勤してきた俺の顔を見るなり文句を言った。 「そんな簡単に見つからないって。猫の気持ちにはなれません、僕、猫じゃないんで。」 反抗してやった。これぐらいしてもいいだろう、伯父は所長を名乗りながらも椅子に座ってテレビばかり見ている。俺がそれを問いただすと 「テレビから情報を仕入れているのだ。これでもちゃんと働いているんだぞ。」と言い訳をする。一体、昼ドラにどんな有意義な情報がちりばめられているのか俺は知りたい。 「淳さん、茜さん、ポーラがどこにいるかちょっとヒントくれませんか。もう一週間以上探し回っているんだけど見つからなくて。」 俺は淳さんと茜さんに助けを求めた。すると伯父の目がギラリと光った。 「淳君、茜ちゃん、教えては駄目だぞ。これは太郎が一人前になるための修行だ。」 きっぱり言った。 「だから!僕がここにいるのは腰掛けだって前から言ってるじゃないですか!」 「ほう。確かに一年前のお前はそうだったが今のお前はとてもそういうふうには見えないぞ。」 伯父がさりげなく、でも確信めいたように言った。 さすがにこの朝舞探偵事務所の所長だけある。結局伯父は俺の本音を見抜いてしまうんだよな。 あぁそうさ、俺はこの仕事が好きになりかけている。 思いもかけず伯父に本心を見抜かれてふて腐れている俺を茜さんは慈愛あふれる眼差しでみている。 なんかやけに照れくさくなって俺はペットの籠を手に取った。 「ポーラ探しに行ってきます。」 「おう、行って来い。」 はいはい、行ってきますよ。 ドアノブに手を掛けた俺の傍に淳さんがそっと寄ってきて二言、三言、俺に耳打ちした。俺は驚いて伯父の顔を窺うが幸いなことに伯父は全然こちらを見ていなかった。 「ありがとう、淳さん。」 「どういたしまして。」 淳さんはにっこりほほ笑むと自分の席に戻って行った。
そしてその日の夕方、俺はめでたくポーラと一緒に朝舞事務所に戻ることが出来たんだ。これも淳さんがくれた情報のおかげだ。 俺はどうやらこの仕事にはまりそうだ。いや、もうはまっているのかもしれない。 いろんな出会いがあってその出会いが俺にいろんなことを教えてくれた。 例え出会う相手が幽霊だろうと(見えないけど)妖怪だろうと(これもほとんど見えない。でもたまに「俺様を見ろ!」という妖怪がいてさすがにそれは見えた、というか見せられた。)宇宙人だろうと(次はもっと謙虚な宇宙人がいい)俺は大歓迎だ。 さて、次はケンタ(犬)探しだ。
追伸。 三か月後、徳川さんの埋蔵金が発見された。おかげで宇宙人の自販機盗難事件はすっかり埋蔵金の話題に取って代わられてしまった。まぁ、現実はこんなもんですね。
おわり
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