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作品名:空族と発明家ジャノの翼 作者:空と青とリボン

第7回   7
−ジャノはたくさんの人々が往来する町の中を明るい足取りで歩いていた。やはり荷車を引いている。ジャノは店や家を一軒一軒訪ねまわっては
「こんにちは。何か欲しいものはないですか?この中から好きなものを取っていっていいですよ。」と言いながら荷車の中を家人や店主に見せた。
荷車の中には得体の知れないものが所狭しと並んでいる。
木の箱で出来た食器洗いらしきもの。見た目がおどろおどろしい人形、ジャノが説明するところによるとカラクリ人形らしい。ちょっとしたものなら運べるよと自慢げに言う。その他にも奇妙なものがゴロゴロしている。その中には鳥の翼の形をした大げさな作りの機械とかもある。
店主はその中の一つを手に取り、暫くまじまじと眺めていたがやがて乱暴にそれを荷車の中に放り投げた。そして見下すような目でジャノを見ながら
「こんな得体の知れないものを作って一体何をしようというんだ。もっと実際に役に立ちそうなものを作れよ!」と吐き捨てるように言った。そして乱暴に扉を閉めた。ジャノは冷たく閉ざされた扉の前で一人立ちすくんだ。
ジャノは若き発明家だ。頭に思い浮かぶ様々なものを実在させるべく器用な手でそれを作り出す発明家。しかしその発明はたいてい非現実的で使い物にならない。ユニークな発想に富んでいるがユニーク過ぎて一般人には手が出ないのだ。ジャノは気を取り直して次の店を訪ねた。
「この中から気に入ったものを好きなだけ選んでください。差し上げますよ。」
先ほどと同じように勧めるが店員は眉をしかめ
「いらねぇよ!こんなもの!!」と邪魔くさそうに吐き捨てるだけ。そうやってジャノはまた追い返された。ジャノは会う人会う人に自分の発明品を勧めるが、そのたびに
「こんなのなんの役にも立たない。帰ってくれ!!」と追い返されるばかり。追い返す人々の目に浮かぶ軽蔑の色。人々はジャノのことを使えない妄想家と揶揄している。


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