一方、トーマスはポクールの実を換金しようと糸問屋に向かった。糸問屋とはもう六回も取引しているのですっかり顔なじみになっていた。問屋の店主、ルパはトーマスの顔を見るなり顔をほころばせた。トーマスが持ってくるポクールは質が良くて店の顧客からもとても評判が良いのだ。 「やぁ、トーマス。久しぶり。」 「ルパ、久しぶりだな。今回もたくさん持ってきたよ。」 トーマスは自慢げにルパに外に出てくるように促した。ルパは早速どれどれと外に出る。荷車にはいつものように山積みにされたポクールの実。ルパはその一つを手に取り満足そうにニヤリと笑った。 「相変わらず良質だな。一体どこでどう育てたらこんな良いものが出来るんだい?」 ルパのニヤリ顔はいつしか感心顔に変わった。それを見てトーマスはにっこりと笑い 「それは秘密だ。」 二人は顔を見合わせて笑った。 「いくら欲しい?トーマスの言い値でいいぞ。」 「いつも通りでいいさ。」 「そうか?欲のない奴だな。」 ルパは手綱を持って店の裏庭に荷車を運び入れた。そして店の中に声を掛けると中から人がわらわらと出てきてあっという間にポクールの実を樽に入れ替えた。ルパは金貨の入った袋をトーマスに渡す。 「もっと出してやってもいいんだけどな。」 「いやこれで十分さ。」 トーマスの手にかかるずっしりとした重み。 「ありがとう。」 トーマスが満足そうに礼を言った。 「また頼むよ。次も半年後か?」 「あぁそうだな。」 トーマスは空になった荷車に袋を乗せると早速立ち去ろうとする。ルパは慌てて止めた。 「もう行くのか?いつもはもっとゆっくりしていくだろう。奥でお茶でも飲んでいけよ。」 ルパの誘いを嬉しく思いながらもトーマスは 「今日はちょっと忙しいんだ。また今度な。」 「そうか残念だが仕方がないな。またよろしくな。他の問屋に浮気するんじゃないぞ。」 ルパは名残惜しげな表情で、でも明るいしゃがれた声でトーマスを見送った。
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