「大丈夫?」 ナーシャがジャノの体を支え助け起こした。 「あぁ・・・また失敗してしまった。」 体中が痛むのか顔をしかめながら壊れた翼を下ろす。地上に激突した際に片方の翼が折れてしまった。幸いな事に草原の分厚い草がクッションになって大事には至らなかったがジャノは酷くがっかりしている。ナーシャは早速救急箱を開け手当てを始めた。 「骨は折れてないようだわ。」 ひとまず安堵しながら出血している場所に包帯を巻く。 「すまない。」 「ううん、あなたが無事で良かった。でも今回は打撲で済んだけど次はどうなるか分からないわ。もう無理するのはやめて。」 ナーシャは縋るような瞳で訴えた。ジャノは申し訳ない気持ちで一杯になる。手当てが終わるのを待ち、終わると同時に説明を始めた。 「馬力が足りないんだ。」 「えっ?」 「馬力が足りない、これがずっと解決出来ないでいる。ある程度まで昇れるけどそれ以上、上に行くことが出来ない。で、前に進もうとすると翼を動かすエネルギーが切れてしまう、毎回これの繰り返しだよ。」 「エネルギーは何なの?」 「金充石さ。」 金充石?ナーシャは何のことか分からずきょとんとしている。 「この世界のごく一部の地域でしか採掘出来ない貴重な鉱物だよ。聞いた事ない?」 ナーシャは頷いた。 「金充石はパンジャ国の鉱山でしか採れない。おかげでパンジャ国は世界一の富める国さ。金充石は水に触れると莫大なエネルギーを放つ、そのエネルギーで主軸の歯車を動かしそれに連動したいくつもの歯車を動かし翼を動かすという寸法なんだけど。」 丁寧に説明しながら翼の箱の中から瓶に入った米粒大の石を取り出した。ナーシャは金色に輝く小さな石をまじまじと見つめ 「これが金充石?」 「そうだよ。スイッチを入れると別の瓶に入っている水が金充石が入っている瓶に注ぎ込まれ、水と化学反応を起こしエネルギーを放出するという理屈なのさ。でも困った事にこの金充石はエネルギーを放出しながらどんどん小さくなっていくんだ。」 ナーシャは一言も聞き漏らさないよう真剣に耳を傾けている。 「小さくなってやがて消える。そうするとエネルギーが不足して翼が止まってしまう。だから少しでも金充石が水に溶ける速度を遅くしようあらゆる媒体を試してみたけどこれがなかなか上手くいかなくて・・・。」 ジャノは悔しそうに米粒大の金充石を握りしめた。 「その石はもっとたくさん手に入らないの?たくさんあればエネルギーも持続すると思うのだけど。」 ナーシャは素朴な疑問をジャノにぶつけてみた。 「ものすごく値段が高いんだ。使い道は山ほどあるからね、皆欲しがって貧乏人にはなかなか手が届かない。例えばこぶし大の石を手に入れるのに農民の一年間の収入ぐらいはかかるよ。」 ジャノはそう説明しながらため息をついた。
|
|