「それはおかしいな。お前が作るものはどれも素晴らしいのに。」 当たり前のように言ってのけた。その瞬間、ジャノの顔が真っ赤に染まる。 「どうした?顔が赤いぞ?熱でもあるのか?」 「いや、なっ、何でもっ。いや、なんかそんな事言われたことなかったからなんか嬉しくて。」 ジャノは本気で照れている。シュンケはそれを見て大笑いした。 笑った。笑うシュンケやナーシャや皆の笑顔がジャノの心に沁みていく。そして一日も早く翼を完成させて絶対空族を幸せにしてみせる!とより一層固く心に誓った。
山々に昇る風が陽射しで暖められ空族の村に下りてきては草原の海を揺らす。呼吸をするたびに生まれたての幸せを体の中に取り込めそうな穏やかな午後。ジャノはいつものように翼に没頭していた。やがてジャノは自分の膝をポンと叩くと 「よし。これで試してみよう。」 それを聞いたナーシャは嬉しそうにジャノの肩に触れた。 「完成したの?」 「いやまだだよ。でもどこが悪くてどこは合格なのか知るにはまず試してみないと。」 「完成していないのに試して大丈夫なの?」 心配そうに尋ねるが 「大丈夫だよ。今まで何十回と試してきたけどこの通りピンピンしている。まぁ、生傷は絶えないけどね。」 ジャノはばつ悪そうに答えた。 「じゃあ私も一緒に行くわ。一応救急箱も持っていく。」 そして二人は翼を抱え村はずれの草原に向かった。 「よし、この辺りでいいだろう。」 ジャノはおもむろに翼を背負う。結構な重さがあるのだが。スイッチを入れるとグワンと機械音が鳴り始め、そしてゆっくりと翼が動き始める。瞳を輝かせるナーシャ。翼がその羽ばたきを徐々に速めるとジャノのつま先が地面からゆっくり離れた。ナーシャは目を丸くして感激する。だがジャノはいたって冷静だ。 「まだまだこれからだ。」 ここまでなら今までだって成功していた。浮き上がるジャノの体はふらふらと頼りなく揺れながら上昇する。 それを追いかけるようにナーシャも舞い上がった。空族の翼は機械のそれとは違い実にスムーズで安定感がある。地上七メートルぐらいの所でジャノの体は浮き上がるのをやめた。いや、やめたというよりそれ以上は昇れないようだ。 次の瞬間、翼の羽ばたきがピタッと止まった。 とたんにジャノは地上めがけて落下していく。ナーシャは思わず息を飲んだ。慌ててジャノを追うが間に合わずジャノは地面に叩きつけられた。 「ジャノ!!」 ナーシャはショックのあまり心臓が一瞬止まりかけ悲鳴を上げた。真っ青な顔でジャノの元に下り立ち、顔を覗き込む。ジャノの名を呼ぶ声が涙声になっていく。 その時、うっ・・・ジャノが呻き声を上げた。どうやら無事の様だ。ナーシャは心底ほっとしながら心配そうにジャノを見つめる。 ジャノはゆっくりと体を起こした。
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