「ジャノの事が嫌いか?」 そう問うとジムは複雑な表情をした。ジャノの才能を信じたい気持ちがないと言えば嘘になる。翼が完成して空族が自由になれる夢を自分だって見たい。でもシュンケの気持ちを思うと・・・。 ジムの迷いを察したシュンケは豪快に笑いとばしそして 「心配するな、私が本気になれば明日にでも嫁は来る。」 冗談めかして言う。今度はジムが苦笑いした。 「・・・全くお前らしいよ。お前がそれでいいならもう何も言わないよ。」 ジムはシュンケを説得する事を諦めたのかどこか吹っ切れた顔をしている。そんなジムを見てシュンケは安心した。 「じゃあな。」とジムの肩をポンと叩いて逞しい背中を見せながら去って行った。
「ここがあなたの家よ。」 ナーシャはジャノを丸太で出来た一軒家に案内した。扉を開けるとすでに人が住んでいる事は一目で分かった。綺麗に整頓された部屋、ほのかに甘い香りがするカーテン、この香りは・・・。ジャノの胸が高鳴る。 「私の家よ。」 ナーシャが頬を赤らめながら言うとジャノの恋心は頂点に達した。ナーシャをおもわず抱き寄せる。後から後から湧いてきて止まない愛しさを噛みしめ二人は強く抱き合った。 そしてその夜、二人は一つになった。人間と空族という種族の壁を越えて。
ジャノが空族に真に溶け込むには多少時間がかかった。若い子達とはすぐに仲良くなったがあの日のことを忘れられない年配者たちはなかなか気を許してくれない。そんな曖昧な状態のまま月日は流れ、気が付くと半年が過ぎていた。その間もずっとジャノは根気よく年配者と接した。 ジャノは発明家だ。発明家は往々にして手先が器用。ジャノの所には毎日のように誰かが訪れいろいろな頼みごとをしていく。時計の修理、食器の修理、畑の耕し機の製作依頼、屋根の修理。中には服の手直しなど、どうしてこんなものまでと首を傾げたくなるものもあるがジャノはその全てを大喜びでこなしていった。確実に、丁寧に。 そんなジャノの姿を見て今まで気を許そうとはしなかった年配者たちも次第に気を許し、徐々に頼みごとをするようになってきた。シュンケもジャノのことを気にかけ様子をまめに見に来ている。 そんなある日、いつものようにシュンケが訪ねてきてジャノを労った。 「皆、様々な頼みごとをして迷惑をかけているみたいだな、すまない。」 だがジャノは慌てて否定する。 「迷惑なんてとんでもない!むしろとても嬉しいんだ。こんなにも誰かから必要とされたことなんて今までなかったから。今は必要とされ、ありがとうと笑顔を貰えて、僕はとても幸せなんだ。」 「そう言ってもらえるとありがたいが・・・。」 「故郷にいた時はありがとうなんて言ってもらえた事なんてなかったんだ。いつも煙たがられて追い払われて。僕が作ったものなんてまるで使い物にならないと鼻で笑われておしまいだった。」 ジャノはしみじみと自分の過去を振り返った。 たった半年前の事なのに随分遠い日の出来事のように思える。近くて遠い過去。しかしシュンケは不思議そうな顔をしながら
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