「どうしたのさ。」 ルシアが聞くと 「なっ、なんでもないよ。」 そう答えて慌ててシュンケの所へと走っていった。 「何でもないという顔じゃないじゃん。」 ルシアは唇を尖らせながら翼をはためかせ飛び立った。 ルシアはカリンの親友だ。幼い頃からいつもカリンと一緒にいる。中肉中背の体格に天然パーマの薄茶色の髪、いたずら好きそうな瞳。 実際、他人をからかったりおちょっくたりするのが大好きで皆からは多少迷惑がられているが本人はそんなこと気にしない。自分がやりたいようにやり、言いたいことははっきり言う性格。言わなくてもいいことも言ってしまうのがたまに傷だがそれさえルシアは面白がっている。背中にある翼はカリンと違って立派なもので自由に飛ぶことが出来る。だからではないが翼が変形していて飛ぶことが出来ないカリンに対して「翼が曲がっているけどどこかにぶつけたの?」とか「せっかくの空族なのに残念だな」とわざとからかったりする。しかしそんなことはカリンも慣れっこで気にも留めない。いちいちルシアの挑発を気に留めていたら身が持たないからだ。 そんなお調子者のルシアだが今は非常事態、他の者と同様にナーシャを探しに出掛けた。
「シュンケ待って。」 カリンは、ナーシャを探しに行こうと飛び立つ寸前のシュンケを呼びとめた。 「どうした?顔色が悪いぞ。」 シュンケもカリンの様子がおかしいことを感じ取ったようだ。 ナーシャがこの村にいない理由を知ったシュンケが酷くショックを受け動揺することは火を見るより明らかだ。カリンは一瞬、話そうかどうかためらったが、今はそんな悠長なことはしていられない。ナーシャの身になにか起こっているかもしれないのだから。 「ごめんなさい!」 カリンが突然頭を下げた。シュンケは不思議に思い尋ねた。 「何だ?なぜ謝る。」 「僕のせいなんだ。僕が行くのをちゃんと止めたらこんな事にはならなかった!!」 話しながら取り乱していくカリンをシュンケはなんとか落ち着かせようと肩に手を置きカリンの目を覗き込んだ。 「どうした。少し落ち着け。何が言いたいのだ?」 カリンは少し落ち着きを取り戻したのか 「ナーシャは人里に下りて行ったんだ。」 「・・・!!?」 カリンの告白を聞いたとたん、シュンケの筋肉隆々とした体が瞬時に固まった。心のどこかで覚悟していた言葉であっても衝撃はなかったことには出来ない。 「どうしても行きたいと言われ断りきれずに、それどころか人里に行くのを手伝ったんだ。あの時ちゃんと止めておけば・・・!!」 カリンの瞳に涙が滲んでくる。かなり動揺しているようだ。しかし、シュンケは表向き冷静さを装い 「自分を責めるな、カリン。お前が止めてもナーシャは行っただろう。頭領である私が止めても行く奴だ、あいつは。」 苦笑いしながら言った。冷静さを保っているシュンケの様子を見たカリンは逆に不思議に思った。 「驚かないの?」 「もしかしてそうなんじゃないかと内心思っていたからな。ナーシャが遠くへ行きたがっているのは知っていた。行くなと言っても人の言う事なんて聞かない奴だからいつかはこうなるとは覚悟していたさ。」 そう説明し何かを考え込んでいたが、すぐに 「とにかくナーシャが戻ってくるのを信じよう。あいつはそんな簡単に人間に捕らえられる女ではない。だから心配するな。それよりも皆に伝えて欲しいことがある。」 「何?」 カリンは不安になりながらも聞き返すと
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