最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。 この物語は、個人あてのHPに、たくさんの感想やら批判をいただきました。 女性の心理が全く分からない、ありえないなどという批判もありましたが一方で、面白かった、一気に読めた、などありがたい感想もいただきました。 皆さんはいかが思われたのでしょう……
最終回のチェックを忘れたため、この後書きを書いているのですが、400時以上にするため、私の好きな個所を
「絡んでくるって?」彼女も食いついていく。
「例えば、食堂で飯食っていると俺の前に座って、俺の食事を勝手につまんで食って『これおいしい、私もこれにしよっ』っていうような感じで…… カフェでコーヒー飲んでいても、やっぱり俺の前に来て、勝手に俺のコーヒー飲んで『うわっ、甘っ』とか言って、ブラック注文して、とにかく俺の前によく現れて、最初は『何だこいつ』って思っていたんだけど、話しているとおもしろくて、その内にはアパートに押しかけて来て勝手に泊まるし、洗面道具や茶わんなんかも持って来て…… ある日、授業の合間に眠りたいから鍵よこせって言われて、彼女は自宅から通っていたのでけっこう遠くて、仕方なく貸したら勝手に合鍵作られて、もう滅茶苦茶な女だった」 そこまで話すと、彼は何かを思ったのか、俯いてしまった。
「すごく楽しい人なのね、何故かあこがれてしまうわ」 彼女も瞼に光景を思い浮かべているかのように微笑んでいた。
「でも、その頃からドレスのデザインでいくらかの収入を得ていることを知って、ちょっと見方が変わってきて、そのまま付き合っていって、四年の中頃だったかな、『卒業したらすぐに結婚するわよ』って言われて……」
「そのまま結婚したの?」
「そうなんだけど、なんか…… 強姦されたって言うか、押さえつけられて身動きできない感じ?」 彼は表現に苦しんだ。
「えっ、どういうこと? 女性なのに力では勝てないでしょ、力づくで抑え込まれたわけじゃないでしょ?」
「力づくって言うか、言葉づく?」
「何、それ?」
「彼女が『あなたなんて何の取り柄もないんだからね、わかっているの? 空を飛べるわけじゃないし、百m十秒で走れるわけじゃないし、あなたの取り柄はたった一つだけ、私と巡り会ったことよ、そのたった一つの取り柄を捨てるつもり?』って言うんだ」
「ははははっ、お腹が痛い、おもしろい!」奈津子は涙を流して笑ってしまった。
「もう滅茶苦茶だろ?」彼も笑っていた。
「すごい人なのね、やはりそういう人じゃないとあなたを射止めることはできないのね、 でも楽しい人ね」 ( かなうわけがない、そんなすごい人に勝てるわけがない、大事に思われているんだ…… ) 彼女はそう思うと、複雑な思いの中でふっと遠くを見つめて小さく息を吐いたが、それでも、笑顔を取り戻した彼がうれしくて、その夜は満面の笑みで彼を送り出した。
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