むかしむかし、あるところに、ブタの家族が住んでいました。お父さんブタとお母さんブタ、そして三匹の子ブタたちです。兄弟たちの名前は、一番上がピガー、真ん中がピギー、一番下がピグーといいました。三匹はお父さんとお母さんの愛情を受けて、すくすくと育ちました。 ある日、お父さんとお母さんが兄弟たちに言いました。 「お前たちはもう大人だ。家を出て、それぞれ暮らしなさい」 三匹の子ブタたちは家を出て、それぞれ家を建てました。ピガーはワラの家を、ピギーは木の家を、ピグーはレンガの家を建てました。 三匹はお互いの家の完成を喜び、祝杯を挙げました。 その様子を見ていたのはオオカミです。新しい家が三軒建ったと思ったら、住人はみんなおいしそうな丸々太った子ブタ。これを見逃す手はありません。 「三匹とも食ってやる」 オオカミはまず長男のピガーの家に向かいました。ワラの家なんて壊すのは簡単です。オオカミは大きく息を吸い込み、ピガーの家を吹き飛ばそうとしました。ところが、ワラの家はびくともしないのです。オオカミは何度も息を吸ってはワラの家に思い切り吹きかけました。それでも家は全然吹き飛ぶ気配がありません。 「ワラの家のはずなのに」 仕方なく、オオカミはピガーの家に忍び込むことにしました。ワラの家でも窓はあります。 「ん? ワラの家のくせに、一丁前にガラスが入ってやがる」 オオカミは窓ガラスを割り、欠けた箇所から手を入れて鍵を開けました。窓を開け、家の中に侵入します。オオカミの足が床に着いた、その途端、 「ビー! ビー! ビー!」 大きなブザーの音が響き渡りました。オオカミが呆気にとられていると、制服姿の警備員が現れました。 「どう見ても住人ではないな。それにこの窓……。こら、逃げるな! 警察に突き出してやる!」 オオカミは警備員に連行されていきました。
「ピガー兄ちゃんの家って、外はワラだけど中は都会的で洒落てるね」 ピグーが言います。 「外観がみすぼらしければ、泥棒は入らないと思ったんだけどな。お前の言うとおり、念のためセ○ムに入っててよかった」 「でも、これだけ凝ってると高かったんじゃない?」 ピギーが尋ねます。 「ああ、最新のハイテクエコハウスだし、デザインも間取りも特注からな」 「いくらかかったの? 支払いは大丈夫?」 「もしかして億超え? ローンでもきついんじゃ……」 ピグーとピギーの心配に、ピガーは笑って答えました。 「小さい家だから億は超えてないって。それに、親父もおふくろもそう長くはないからな。遺産と生命保険で払えるさ」 「二人とも元気そうだけど?」 「あれだけピンピンしてりゃ、いつ死ぬかわからないぜ?」 ピグーとピギーは困惑します。 「心配ない。俺が家を出る時に渡したサプリを飲んでるからな」 ピガーは勝ち誇った顔をしました。 「サプリ?」 「そう見せかけた毒薬だ。毎日飲んでいれば、毒が体に蓄積される。あと三ヶ月も飲み続ければ心臓麻痺さ。解剖しても検出されない、特殊な毒だしな」 ピガーの知恵に、ピギーもピグーも感心しました。 「……あのオオカミ、警察に引き渡さずにこっちで預かってりゃよかったかもな。警備員がさっさと連れて行ったから仕方ないけど。あいつを強盗殺人の犯人に仕立てて、親父とおふくろを殺る手もあった」 「ピガー兄ちゃんは頭がいいな」 「でも、危ない橋をわざわざ渡らなくても。サプリ作戦でいいんじゃない?」 三匹は近いうちに手にする大金を思い、笑い合いました。
※2015年5月に執筆。
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