今日、同じクラスのアクタ君がゴミ置き場に捨てられてた。 ゴミ袋の口から頭だけ出して、わんわん泣いてた。 「ゴミのくせに、うっさいなあ」 ぼくはアクタ君をけとばした。 だって、アクタ君はクラスのゴミだもん。 ぼくらのクラスが球技大会やリレーでビリだったのは、アクタ君のせいだもん。 アクタ君はトロくて、いつもみんなをイライラさせる。 よかった、これでクラスのゴミがいなくなる。 ぼくはもう一度アクタ君をけっとばした。
今日は隣のクラスのチリコちゃんが捨てられてた。 ゴミ袋の口から頭だけ出して、しくしく泣いてた。 チリコちゃんのママは有名なピアニストなんだって。 チリコちゃんにも立派なピアニストになってほしかったんだって。 でも、チリコちゃんは事故で手が動かなくなっちゃった。 ピアノを弾けない子はいらないって、捨てられちゃったんだって。 そんな理由でゴミになることもあるんだね。
今日は五年生の担任のクズノ先生が捨てられてた。 ゴミ袋の口から頭だけ出して、ニタニタ笑ってた。 クズノ先生の授業にはキケンシソウが混じってるって、苦情が来たんだって。 教育者としてフテキニンなんだって。 「何が正しいのか、いずれはっきりするさ」 クズノ先生の言うことはよくわかんないけど、 先生でもゴミになることがあるんだね。
今日、ぼくは捨てられた。 ゴミ袋に押し込まれて、 顔を出したら首のところで袋の口を結ばれた。 そのままゴミ置き場に運ばれて、 ポイッと捨てられた。 ――なんで? どうして? ぼくはゴミじゃない。 僕は泣いた。 泣いて、泣いて、泣いて、泣いて……。 どんなに泣いても、誰も助けてくれない。 ぼくはゴミじゃない。 絶対ゴミなんかじゃないのに。 ――ああ、そっか。ぼくじゃなくて、他のみんながゴミなんだ。 みんな、みーんなゴミなんだ。 ぼくは泣くのをやめた。 捨てられたんじゃない、ぼくがみんなを捨ててやるんだ。 目の前をゴミたちが何人も通り過ぎていく。 ゴミ収集車がこっちに近づいてきた。
※2018年4月に執筆。
|
|