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作品名:時空のはざまより2 作者:光石七

第26回   ギャンブルなんてやりません ―徒然なるままに駄文―【テーマ:ギャンブル】
 困った。今回のテーマは【ギャンブル】である。まあ、毎テーマ何かしら頭を抱えてはいるが、それはさておき。
 ギャンブル、ねえ……。夜な夜な愛猫ちーちゃんを強引に布団に引きずり込んで手籠めにし、遊びに来た甥っ子姪っ子におやつのおすそ分けをねだる品行方正な私には、全く以て無縁である。これほど私に縁の無いものがあろうか。……いや、それを言うなら『結婚』や『モテ期』のほうがはるかに縁遠い。この世に生を受けて三十ウン年、一向にその気配はない。数年前にみてもらった占い師には、今後も三、四十年は恋愛運が低迷気味で結婚は五十年後と言われた。「来世に期待しましょう」と言われなかっただけマシなのだろうか……? ――ああ、そんな虚しい話は隅に置いといて。
 私は競馬も競艇もパチンコもやらない。宝くじすら買わない。カジノなんて一生足を踏み入れることはないだろう。せいぜい子供の頃、『人生ゲーム』の『人生最大の賭け』でオモチャのお金を賭けてルーレットを回したくらいだ。十中八九、否、それ以上の確率で捨て銭になる行為の魅力がさっぱりわからない。お金を出す気にならない。もちろん自身の責任において楽しんでおられる方々を非難するつもりはなく、私が個人的に面白味も有益性も感じないというだけであるが、もし自分の恋人の趣味が競馬やパチンコだと知ったら少なからず気持ちが冷めそうな気がする。……その前に、お前彼氏いない歴何年だよって話ですね。ええ。


 しかし、思い返してみると、昔から“賭ける”という言葉自体に抵抗を覚えていたような気がする。
「言ったな。じゃ、賭けるか?」
「絶対ね? 命賭けれる?」
 小学生の頃、友達や同級生の男子がそんな台詞をよく口にしていたが、私はそれを聞くたびにどこか不快な気分になった。せっかく仲間内でワイワイ喋っていても、その台詞が出てくると一気に心のトーンが下がり楽しさが半減した。場の空気を読んで、言葉や表情には出さなかったけれど。何故と問われても返答に困るし、その時の心情をうまく説明することもできないが、漠然とながら軽々しく扱ってはいけない言葉・行為だという意識があったのかもしれない。中学、高校と上がると、この手の台詞を聞く機会はめっきり減った。成長するにつれ、皆いろんな重みがわかってくるからだろうか。特に命なんて、やたらめったら賭けていいものじゃない。大人になってもそういう自覚が無く小学生のノリのままだったら怖いし、絶対引くわあ。
 ……あ、でもそういう人、落語とかの小話に出てきそうかも。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 日頃の暮らしの中で何かと周りに賭けを持ちかける長屋住まいの留七。誰かが「明日は雨だな」と言えば、「いーや、明日は晴れだ。賭けるか? 晴れたら俺に二十文払えよ」とのたまう、といった具合だ。
 ある日、同じ長屋に住む甚八が裏の木の根元に見たことのない茸が生えているのをみつけた。
「派手な色だな。こりゃ食えねえだろ」
 通りかかった留七、当然の如く甚八に賭けを切り出す。
「俺は食えるほうに賭ける」
 甚八も賭けは嫌いじゃない。五十文を賭けることで話はまとまった。
「じゃ、さっさと確かめようや」
 そう言うや否や、留七は茸をもぎ取った。そして焚火の火でさっと炙り、口に放り込んだ。甚八が止める暇もなかった。
「なかなか美味かったぞ」
 そういって笑った留七だったが、急に胸を押さえて苦しみ出す。慌てて甚八が医者を呼びに行ったが、医者の到着を待たずして留七は息を引き取ってしまった。
 その夜、悲しみに暮れる甚八の前に留七の霊が現れた。
「俺、ちゃんと食えただろ? 五十文よこせ」

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 ……いろんな意味でひどいな。私に落語を作ることはできないとよくわかった。この案を二千字の話にして書こうかとチラッとでも思ってしまった自分が恥ずかしい。ちなみに、ググってみたけれど類似した話はみつからなかった。


 そんなこんなで(?)徒然と書いてみたが、考えてみれば、素敵な書き手様方の素晴らしい作品がひしめく中にこんな駄文を投稿しようとは、我ながら勇気があるというか無謀というか……。その意味では、私もなかなかのギャンブラーなのかもしれない。




※2016年2月に執筆。


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