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| 『臆病者』
 
 
 僕たちが暮らしているのは
 本当はもろい砂の上
 
 この目に映る光景も
 つないだ手の温もりも
 日々感じる喜びや悲しみ、苦しみさえ
 たやすく消えていく
 
 うつつのまどろみの中で見ている儚い夢だと
 どことなく気付いているのに
 今この瞬間が
 どうしようもないほど大きく僕を支配する
 
 これが生きているということなのか
 
 どうせ砂に還るなら
 はじめから砂のままでいいのに
 感情や経験などいらないのに
 
 僕は夢の世界に馴染みすぎてしまったのか
 差し伸べられた君の手が温かくて
 愛しくて
 失うことが怖くて
 
 いずれ砂になるその時まで
 この手をつないでいてもいいですか
 
 
 
 
 
 
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