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作品名:レイザーストーン失踪事件 作者:光石七

第5回   (二)手がかり、手探り、空振りA

 レイザーストーンの携帯を机の上に戻そうとしたら、屋田君が口を開いた。あ、眠ってるちーちゃんの尻尾をこっそりつまんでる。
「面白いおばさんっすねー。声が大きいから、聞こえちゃいました」
 そうそう、何故か声大きい人が多いのよね、うちの県民(あ、私の個人的な意見です)。特に年配の人は。
「とりあえず、実家にもいないことははっきりしたけど……」
「トーコ先輩、携帯の履歴見たらどうっすか? レイザーストーン先生がいつ頃からいないのか、わかるかも」
 あら、屋田君にしてはいい考え。人の携帯はプライバシーの問題もあるから勝手に見ないほうがいいけど、一応緊急事態だし。ちょっと失礼して。
「……」
 さっきの有江おばさんからの電話を除くと、着信も発信も最新履歴はひと月以上も前だった。この人、電話ほとんどしてない……。通話相手は母親と私のみ。あ、着信履歴の最後にかろうじて父親発見。……って、「ムッシュ・サトシ」になってるんですけど。なんで母親が「ママン」なのに、父親は「ムッシュ」なの? どうせなら父と母、ちゃんと揃えなさいよ。――ん? あれ? フランス語のパパって何だっけ? パパン? いや、そんな馬鹿な。
「トーコ先輩?」
 無言になってしまった私を見て、屋田君が怪訝そうに声をかけた。
「……全然参考にならなかった。彼女、一か月電話してない」
「電話代、かからなそうっすね。それなら、メールはどうっすか?」
 彼女の電話代なんて知らないけど、屋田君に言われてメールもチェックすることにした。
 先週私が〆切の確認で送ったメールが受信メール一覧の最初にあった。彼女からの了解メールも送信済みメール一覧の最初に発見。彼女が親に送ったメールはあるけど、親からのメールは全く来ていない。まあ、あの両親は機械に弱そうだし、打つのに時間かかりそうだしね……。受信メールの差出人は私と携帯会社だけだった。彼女がメールを送った相手は、両親と私と……。
「何これ?」
「先輩、何かわかったんすか?」
「……この人、自分で自分にメールしてる。自分の携帯に相談メール送ってる」
 屋田君の顔が引きつったような気がする……。私だってドン引きよ! でも、受信メールにはそのメールはなかったような……。消したのかしら? ホントによくわからない人だわ。自分にメールなんて、一体どんな内容なの? おそるおそる『相談』という件名のメールを開いた。
『ちーちゃん、きゃわいすぎ★ もう最高♪ ボク、どうしたらいい?』
 ……勝手にしてよ、もう。私は今度こそ携帯を机の上に置いた。
「メールも最新のは一週間前ね。手がかりにはならなそう」
「そうっすか……。あ、携帯には脅迫メールは届いてないんすか?」
「親と私と自分だけが相手だもの。あとは携帯会社からの広告やお知らせ。削除したなら、サイトの掲示板のほうの脅迫も消してるでしょ」
 片付けは下手だけど、整理する時は一気に整理するからね。いらない物はバンバン捨てる。それがもっと頻繁なら部屋もきれいになるのに。やはりレイザーストーンは理解できない。
「ということは……。レイザーストーン先生を脅迫、拉致した人物は先生のメアドは知らないってことっすね。電話番号も」
 そういうことになるのだろうか。……え? 拉致?


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