レイザーストーンの携帯を机の上に戻そうとしたら、屋田君が口を開いた。あ、眠ってるちーちゃんの尻尾をこっそりつまんでる。 「面白いおばさんっすねー。声が大きいから、聞こえちゃいました」 そうそう、何故か声大きい人が多いのよね、うちの県民(あ、私の個人的な意見です)。特に年配の人は。 「とりあえず、実家にもいないことははっきりしたけど……」 「トーコ先輩、携帯の履歴見たらどうっすか? レイザーストーン先生がいつ頃からいないのか、わかるかも」 あら、屋田君にしてはいい考え。人の携帯はプライバシーの問題もあるから勝手に見ないほうがいいけど、一応緊急事態だし。ちょっと失礼して。 「……」 さっきの有江おばさんからの電話を除くと、着信も発信も最新履歴はひと月以上も前だった。この人、電話ほとんどしてない……。通話相手は母親と私のみ。あ、着信履歴の最後にかろうじて父親発見。……って、「ムッシュ・サトシ」になってるんですけど。なんで母親が「ママン」なのに、父親は「ムッシュ」なの? どうせなら父と母、ちゃんと揃えなさいよ。――ん? あれ? フランス語のパパって何だっけ? パパン? いや、そんな馬鹿な。 「トーコ先輩?」 無言になってしまった私を見て、屋田君が怪訝そうに声をかけた。 「……全然参考にならなかった。彼女、一か月電話してない」 「電話代、かからなそうっすね。それなら、メールはどうっすか?」 彼女の電話代なんて知らないけど、屋田君に言われてメールもチェックすることにした。 先週私が〆切の確認で送ったメールが受信メール一覧の最初にあった。彼女からの了解メールも送信済みメール一覧の最初に発見。彼女が親に送ったメールはあるけど、親からのメールは全く来ていない。まあ、あの両親は機械に弱そうだし、打つのに時間かかりそうだしね……。受信メールの差出人は私と携帯会社だけだった。彼女がメールを送った相手は、両親と私と……。 「何これ?」 「先輩、何かわかったんすか?」 「……この人、自分で自分にメールしてる。自分の携帯に相談メール送ってる」 屋田君の顔が引きつったような気がする……。私だってドン引きよ! でも、受信メールにはそのメールはなかったような……。消したのかしら? ホントによくわからない人だわ。自分にメールなんて、一体どんな内容なの? おそるおそる『相談』という件名のメールを開いた。 『ちーちゃん、きゃわいすぎ★ もう最高♪ ボク、どうしたらいい?』 ……勝手にしてよ、もう。私は今度こそ携帯を机の上に置いた。 「メールも最新のは一週間前ね。手がかりにはならなそう」 「そうっすか……。あ、携帯には脅迫メールは届いてないんすか?」 「親と私と自分だけが相手だもの。あとは携帯会社からの広告やお知らせ。削除したなら、サイトの掲示板のほうの脅迫も消してるでしょ」 片付けは下手だけど、整理する時は一気に整理するからね。いらない物はバンバン捨てる。それがもっと頻繁なら部屋もきれいになるのに。やはりレイザーストーンは理解できない。 「ということは……。レイザーストーン先生を脅迫、拉致した人物は先生のメアドは知らないってことっすね。電話番号も」 そういうことになるのだろうか。……え? 拉致?
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