面白いことを教えてあげようか? 僕はね、大学で心理学を専攻してたんだ 笑えるだろう? 心理学を学んだ者が 患者として精神科にお世話になるなんて もっとも、専門は臨床心理じゃなかったけどね
知ってるかい? カウンセリングの基本は「共感」なんだ 相手の言うことを否定せず 頷いて受け止めてあげる もちろん、それが悪いわけじゃない それで気持ちが軽くなる部分があるのは確かだ だけど、僕が求めていたのは共感じゃなかった 「うん、わかるよ」なんて言ってもらいたかったわけじゃない 僕がほしかったのは強い言葉だ たとえそれが僕という存在を否定するものだとしても 思いきり引っ張り上げるか突き落とすか、してほしかった
中途半端な温もりは時に冷徹より残酷だ これも一つの真理だと思わないかい? 共感は一時的な安らぎは与えても 根本的な救いにはならないのさ
そう言いつつ 結局僕も生ぬるい生活を送ってるんだけどね いつかは抜け出せると漠然と信じて 現状に甘えている
ははっ、なんで君にこんなこと話してるんだろ? いきなりこんな話聞かされても困るよね
ところで、君、誰だっけ? あれ? 僕は…… 誰だ?
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