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作品名:乾いた傷痕、届かぬ礫 作者:光石七

第1回   まえがきに代えて
                                            
                                            
誰にも見せるつもりはなかった
誰かに話すつもりもなかった
僕自身でさえ振り返ろうなんて思わなかった

あの傷たちはじゅくじゅくと
永遠に膿み続けるものと思っていた
ぶつける相手のない礫は
僕の傷を抉る一方だと思っていた

時が経ったからだろうか
受け止めてくれる人を信じ始めたからだろうか
おそるおそる見てみると
傷のいくつかは乾き
触れることができるようになっていた
ため込んだ礫は
光を求めて出口を探していた

もちろん未だ触れたくない傷もある
自分にぶつかる礫もある
だけど
乾いた傷痕だけでも見てもらうことで
僕が前に進む力になるなら
誰かの慰めになるなら
僕はその傷をさらそう
礫を解放しよう

                                        
                                         


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