ヤンは一人、アパートの窓から夜空を見上げた。雲一つなく、満天の星だ。月も静かな光をたたえている。 (お月さまってかわいそう) 子供の頃、ニナが両親にそう言っていた。両親がどうしてか尋ねると、ニナは答えた。 (だって、毎日お顔を変えてるのに、みんな寝ちゃって見てくれないよ?) 家族みんなで笑ったものだ。 (ニナは優しいな) 父さんはニナの頭を撫でた。 (じゃあ、ニナがお月さまのお友達になってあげる?) 母さんがニナに聞いた。ニナは目を輝かせた。 (ニナがお友達になれば、お月さまも寂しくないね) (僕もお月さまの友達になるよ) ヤンもニナを喜ばせたくてそう言った。幸せだったあの頃。どうしてみんないなくなってしまったのか。 (本当にあの月のかけらなのか? お前の親はあの月か?) 『月のかけら』に話しかけていたレイ。銀髪が月明かりになびいていた。本当は自分に言っていたのかもしれない。迷子はユマではなく、レイだったのかもしれない。彼女は帰るべき場所に帰れたのだろうか。 月の光は月自身が発しているわけではないという。太陽の光を反射しているだけだと。だが、月も燃えているのではないだろうか。誰かに気付いてほしくて、愛してほしくて。 ヤンはだんだん月がぼやけていくのを感じた。ヤンの目から銀色の涙が次々と落ちた。
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