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作品名:銀色に燃える月 作者:光石七

最終回   (八)紅の意味と涙色の月B

 ヤンは一人、アパートの窓から夜空を見上げた。雲一つなく、満天の星だ。月も静かな光をたたえている。
(お月さまってかわいそう)
 子供の頃、ニナが両親にそう言っていた。両親がどうしてか尋ねると、ニナは答えた。
(だって、毎日お顔を変えてるのに、みんな寝ちゃって見てくれないよ?)
 家族みんなで笑ったものだ。
(ニナは優しいな)
 父さんはニナの頭を撫でた。
(じゃあ、ニナがお月さまのお友達になってあげる?)
 母さんがニナに聞いた。ニナは目を輝かせた。
(ニナがお友達になれば、お月さまも寂しくないね)
(僕もお月さまの友達になるよ)
 ヤンもニナを喜ばせたくてそう言った。幸せだったあの頃。どうしてみんないなくなってしまったのか。
(本当にあの月のかけらなのか? お前の親はあの月か?)
 『月のかけら』に話しかけていたレイ。銀髪が月明かりになびいていた。本当は自分に言っていたのかもしれない。迷子はユマではなく、レイだったのかもしれない。彼女は帰るべき場所に帰れたのだろうか。
 月の光は月自身が発しているわけではないという。太陽の光を反射しているだけだと。だが、月も燃えているのではないだろうか。誰かに気付いてほしくて、愛してほしくて。
 ヤンはだんだん月がぼやけていくのを感じた。ヤンの目から銀色の涙が次々と落ちた。


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