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作品名:銀色に燃える月 作者:光石七

第21回   (七)黒の消失B

 レイが赤い石のペンダントを外す。黒い髪が銀色に変わった。石が赤い粒に分かれて光りながら宙を漂う。ゼグノールと秘書は信じられない光景に固まっていた。
「……ひと言でも謝ってくれたなら、考え直したかもしれないのに。アンタが自分と家族の運命を決めたんだ」
 ラウの目は少し濡れていたが、きっぱりとした口調だった。
「レイ、やめろ! これ以上手を汚すな!」
 ヤンは我知らず叫んでいた。ユマは初めて見るレイの銀髪と『月のかけら』の力に言葉を失っていた。
「……ユマの目を覆っておけ」
 レイが少し悲しげな声で告げた。ヤンは慌ててユマの目に手を当てた。赤い粒の動きが一瞬止まる。そして、そのうちの二つがゼグノールと秘書に向かって猛スピードで飛んだ。
「……っ!」
 叫び声さえ出せないまま、二人は心臓を貫かれた。ゼグノールの体はソファに沈み、秘書は床に倒れた。秘書の手が花瓶に当たり、落ちて砕けた。
 赤い粒がレイの元に戻ってくる。花瓶が割れた音を聞きつけたのか、使用人らしい女が応接室に入ってきた。
「旦那様、何か――きゃあぁぁ……!」
 ゼグノールと秘書の死体を見て女は悲鳴を上げた。
「レイ、そいつもだ! この屋敷の連中は皆殺せ!」
 ラウが叫んだ。女は混乱のあまりかただ立ち尽くしている。レイは彼女をじっと見据えた。赤い粒たちはレイの近くでふわふわ浮いている。
「他の奴らもいるからね。さっさと片付けな」
 レイは少しためらいを見せたが、赤い粒を一つ女の胸に貫通させた。女が血を流して倒れる。レイは粒を自分の元に集めた。
「レイ、もうやめろ!」
 ユマの目を覆ったまま、ヤンが叫んだ。他の使用人や家族と思しき女子供も集まってきた。
「あなた!」
「おじいちゃま……?」
「旦那様、しっかりなさってください!」
 叫ぶ者、亡骸にすがる者、泣きわめく者、状況が理解できずおろおろしている者……。ラウはレイに命じた。
「さあ、『紅』をたっぷり『かけら』にあげな」
 だがレイは従おうとしなかった。うつむいて体が震えている。粒に分かれていた『月のかけら』が一つになり、ペンダントの姿に戻った。
「お前らの仕業か!?」
 一人の男がレイやラウたちに疑惑の目を向けた。
「レイ、早く始末しな!」
 ラウが再度命令したが、レイは『月のかけら』を首にかけた。
「何してるんだい!早く!」
「……ラウ様、もうやめませんか?」
 レイが震える声で言った。ラウは心外なレイの言葉に憤った。
「何を言ってるんだい!? アンタはアタシのために生きるんだろ? アタシの指示を――レイ、アンタ髪が!」
 ペンダントを付けているのに、レイの髪は銀色のままだった。
「『闇のベール』が取れた! 『紅』に還ったんだ!」
 ラウは喜びを露わにした。
「何をごちゃごちゃ言っている! 全員捕まえろ!」
 使用人の男たちがヤンとユマに銃を突きつけ、レイとラウを取り囲んだ。ヤンはユマを自分のほうに向け、強く抱きしめた。
「アンタらごときに何ができる? アタシはこれですべてを手に入れる。アタシを怒らせないことだね」
 ラウは余裕だった。
「何をふざけたことを……」
 使用人たちは相手にしない。
「レイ、こいつらを黙らせな。アンタの力を見せてやるんだ」
 ラウの言葉を聞いてレイはペンダントを外した。銀髪が美しく輝く。赤い石がいくつもの粒になって宙で光り始めた。この異様な光景に使用人たちはたじろいだ。
「これでアンタたちの主人を殺したのさ。同じように殺されたくなければ、大人しくしてるんだね」
 得意げにラウは言った。その場にいる者は皆恐れを抱いた。ラウたちを拘束しようとした者も後ずさりする。ラウはその様子に笑みを浮かべた。
「みんな動くんじゃないよ。下手に動いてどうなっても知らないからね。――やっと落ち着いて望みを聞いてもらえる。ゼグは死んだし、家族はいつでも殺せる。とりあえず……アタシの青春を取り戻させてもらおうかね。レイ、『かけら』を元に戻しな」
 粒が集まってきらめき、一つの赤い石になった。レイはそれを掌に載せた。


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