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作品名:銀色に燃える月 作者:光石七

第16回   (六)紅の月、銀の月A

「髪の色が変わってるだけで普通の赤ん坊だと思った。どういう事情で親が捨てたのかは知らないけどね。ところがおもちゃ代わりにペンダントを与えたら、髪が黒くなるじゃないか。驚いたよ。それで預言のことを思い出したのさ。もしかしたら、この子が『石守り』じゃないかって。いろいろ試して、そうだと確信したんだ。預言どおりにすれば、アタシの望みは叶う。だからその石に人の血を吸わせているのさ。いつかあの男の一族の血も吸わせてやる。もっとも、やみくもにたくさん与えればいいわけじゃないらしいから、とりあえず人様の役に立つ形で相手を選ぶことにしたんだけどね」
 詭弁だとヤンは思った。結局ラウは自分のためだけに行動している。
 ラウは本を開いた。
「ここにこう書いてあるのさ。

  『九百九十九の巡りの後
   月は砕け落ちる
   闇に光なく
   水は怒り狂い
   地を飲み込む
   留まりしは月のかけら
   紅(くれない)のかけらなり

   紅は紅を欲す
   石守りにかけらを託すべし
   頭(こうべ)に銀(しろがね)を纏うがしるしなり
   かけらは石守りに闇のベールを与え
   石守りはかけらを満たす

   紅を紅に染めよ
   銀を紅に染めよ
   紅の月これ銀の月なり
   銀の月これ紅の月なり

   銀も紅も紅に還し時
   闇のベールは消え
   汝の望み叶う
   すなわち世のすべて得るべし』

 ……なかなかの預言じゃないか。どういういきさつで赤い石がうちにあるのかは知らないけど、これが『月のかけら』だね。銀髪のレイが『石守り』で、『月のかけら』によって『闇のベール』が現れて銀髪が黒髪に隠れる。レイは『月のかけら』を操れる。そしてレイは『月のかけら』を『紅』に染めて、自分も『紅』に染まる。血染めだね。完全に染まりきったら、アタシの復讐は叶ってすべてを手に入れるというわけさ」
 ラウは得意げだった。
「そんな馬鹿げた預言のために……」
 ヤンは悲しかった。殺すよう依頼した人物がいたこともきっかけだろうが、両親もニナもラウの個人的な欲望のために命を奪われたのだ。そしてレイはラウの命令に従っているだけだ。
「アタシも実際にレイの変化や力を見るまでは信じてなかったよ。でも、ここまで預言にぴったりなんだ。どうせなら、アタシのために役に立ってほしいね」
 レイがハーブティーが冷めたことに気付き、新しく淹れ直してきた。ラウはそれを飲んだ。
「これで話は終わりだ。別にアンタがどう思うと構わないさ。ただし、ユマの命が惜しければ妙な真似はしないことだね」
 ラウはベッドに横になった。レイが椅子に腰かけて足を組んだ。赤い石はもうしまわれていた。
「……レイさんはそれでいいんですか?」
 ヤンはレイに小声で尋ねた。
「何が?」
 レイが聞き返す。
「ラウさんに従っても、レイさんには何の得もないじゃないですか。手を汚すだけで……」
「捨て子の私を拾って育ててくれたんだ。恩を返すのは当然だ」
 淡々とした口調でレイは言った。
「でも、だからって人殺しをしなくても」
「人殺しが悪いと誰が決めた? 誰だって他の命をもらって生きてるんだ。人間を殺すのだけ悪というのはおかしい」
 レイは当然だという顔で答える。ヤンは言葉に詰まった。
 懐からニナがくれた懐中時計を取り出す。涙が一粒時計の上に落ちた。


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