『かぐら姫』
むかしむかし、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは竹を切るのが仕事でした。ある日、おじいさんは竹林の中に光る竹をみつけました。おじいさんがその竹を切ると、中に小さな女の子がいました。おじいさんはその子を家に連れ帰りました。おじいさんとおばあさんは子供がいなかったので、「かぐら姫」と名付けてかわいがりました。 かぐら姫が十五歳になると、その美しさを聞きつけた男たちが大勢やってきました。中でも熱心だったのが五人の男で、かぐら姫をぜひ妻に迎えたいと申し出ました。困ったかぐら姫は、自分の望む物を持ってきた人と結婚すると言い、とてもこの世にあるとは思えない物をそれぞれ探すように仕向けました。偽物を作ってきた者もいましたがすぐにばれ、かぐら姫に求婚する者はいなくなりました。 やがて、かぐら姫は月を見て泣くようになりました。おじいさんとおばあさんは、一体どうしたのかと尋ねました。 「私は月の者です。次の満月の夜に帰らなければなりません」 おじいさんとおばあさんは驚き、ずっとここにいるよう嘆願しました。帝もかぐら姫が月に連れて行かれないよう、兵を出してくれました。しかし、月の者たちの前では兵も役に立ちませんでした。かぐら姫は衣を着替え、月に帰っていきました。
「地球はどうだった、カグラ=グラ?」 「大したことなかったです」 月の軍司令部でカグラは上司に報告した。 「服はいくつも重ねて重いし、原始的な生活ですね。瞬間移動の技術はおろか、ロケットも車もありません。ほとんど徒歩で、せいぜい牛車です。食事だけはスローフードで今どき珍しく、ヘルシーで味もまあまあでしたが」 「植民地としての可能性は?」 「そんな価値もないですね。占領に要する労力が無駄だと思います」 「そうか。お前を迎えに行った時も、あいつら何もできなかったしな。地球はリストから除外するか」 「それがいいと思います」 カグラは退出し、次の星の担当者が入れ違いに司令部に入った。
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