『きこりの池』
あるところに、オーネストという名のきこりがいた。いつものように森で木を切っていると、手が滑って、斧を池に落としてしまった。オーネストが困っていると、池から女神が現れた。 「あなたが落としたのは、この金の斧ですか?」 女神がオーネストに聞くので、オーネストは正直に答えた。 「いいえ、違います。僕が落としたのは普通の鉄の斧です」 女神は少し残念そうな顔をした。 「あなたは馬鹿正直すぎます。それだけでは世の中やっていけませんよ」 女神はオーネストが落とした斧を返し、池の中に消えた。 オーネストはこのことを仲間のワリーに話した。 「お前馬鹿だな。金の斧をもらえばよかったのに」 ワリーはオーネストを責めた。 「でも、金の斧では仕事ができない。僕は自分のこの斧があればいい」 「とことん馬鹿な奴だな。女神も残念がってたんだろ? 金の斧をもらってほしかったんじゃないのか?」 「僕には不要だから」 ワリーはオーネストの欲のなさに呆れてしまった。自分なら「はい」と答えて金の斧をもらう。 翌日、ワリーはオーネストから聞いた池に自分の斧を落としてみた。すると女神が現れた。 「あなたが落としたのは、この金の斧ですか?」 「はい、そうです」 ワリーが嬉々として答えると、女神は軽蔑のまなざしを浮かべた。 「あなたのような嘘つきには、何も渡しません」 「昨日オーネストが正直に答えたけど、ダメだったじゃないか」 「あの人は人が良すぎるので、今後のために忠告しただけです」 「なんだ、結局金の斧をくれる気はないのか。なら、さっさと俺の斧を返せ」 「嘘つきで強欲な人には返しません」 女神は池に消えてしまった。ワリーは悔しさのあまり叫んだ。 「ちょっときれいだからって調子に乗るなよ、ババア!」 翌朝、斧が頭に刺さったワリーの死体が池のほとりで発見された。
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