20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:どこかで聞いたおはなし 作者:光石七

第4回   きこりの池
『きこりの池』


 あるところに、オーネストという名のきこりがいた。いつものように森で木を切っていると、手が滑って、斧を池に落としてしまった。オーネストが困っていると、池から女神が現れた。
「あなたが落としたのは、この金の斧ですか?」
 女神がオーネストに聞くので、オーネストは正直に答えた。
「いいえ、違います。僕が落としたのは普通の鉄の斧です」
 女神は少し残念そうな顔をした。
「あなたは馬鹿正直すぎます。それだけでは世の中やっていけませんよ」
 女神はオーネストが落とした斧を返し、池の中に消えた。
 オーネストはこのことを仲間のワリーに話した。
「お前馬鹿だな。金の斧をもらえばよかったのに」
 ワリーはオーネストを責めた。
「でも、金の斧では仕事ができない。僕は自分のこの斧があればいい」
「とことん馬鹿な奴だな。女神も残念がってたんだろ? 金の斧をもらってほしかったんじゃないのか?」
「僕には不要だから」
 ワリーはオーネストの欲のなさに呆れてしまった。自分なら「はい」と答えて金の斧をもらう。
 翌日、ワリーはオーネストから聞いた池に自分の斧を落としてみた。すると女神が現れた。
「あなたが落としたのは、この金の斧ですか?」
「はい、そうです」
 ワリーが嬉々として答えると、女神は軽蔑のまなざしを浮かべた。
「あなたのような嘘つきには、何も渡しません」
「昨日オーネストが正直に答えたけど、ダメだったじゃないか」
「あの人は人が良すぎるので、今後のために忠告しただけです」
「なんだ、結局金の斧をくれる気はないのか。なら、さっさと俺の斧を返せ」
「嘘つきで強欲な人には返しません」
 女神は池に消えてしまった。ワリーは悔しさのあまり叫んだ。
「ちょっときれいだからって調子に乗るなよ、ババア!」
 翌朝、斧が頭に刺さったワリーの死体が池のほとりで発見された。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 55