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作品名:どこかで聞いたおはなし 作者:光石七

第3回   黒ずきん
『黒ずきん』


 むかしむかし、あるところにかわいい女の子が住んでいました。いつも黒いずきんをかぶっているので、みんなから「黒ずきん」と呼ばれていました。
 ある日、お母さんが黒ずきんに言いました。
「おばあさんのところに行ってほしいの」
 おばあさんは森の奥に住んでいます。最近体が弱ってきたと話しており、しばらく姿を見せなかったので、お母さんも黒ずきんも心配していました。
「これを渡してあげて」
 お母さんからバスケットを受け取り、黒ずきんはおばあさんのところへ向かいました。
 森に入ると、きれいな花がたくさん咲いていました。黒ずきんはおばあさんのために花を摘むことにしました。
「きっとおばあさんも喜ぶわ」
 そんな黒ずきんの様子を見ていた者がいました。オオカミです。バスケットを持っているところを見ると、お見舞いに違いありません。オオカミはおばあさんの家に先回りすることにしました
 おばあさんを先に食べようと思っていましたが、おばあさんは部屋にいませんでした。オオカミはおばあさんの服と帽子を引っ張り出し、それを身に付けておばあさんのベッドにもぐりこみました。
 黒ずきんが訪ねてきました。
「おばあさん、体は大丈夫?」
「ええ、心配かけてごめんなさい」
 オオカミはなるべくおばあさんの声に似せて答えました。
「声が変だけど、風邪気味なの?」
「少しだけ」
「無理しないでね」
 黒ずきんが自分をおばあさんだと思い込んでいるようなので、オオカミは安心しました。
「おばあさんの耳は、どうしてそんなに大きいの?」
「お前の声がよく聞こえるようにさ」
「おばあさんの目は、どうしてそんなに大きいの?」
「お前をよく見るためさ」
「おばあさんの口は、どうしてそんなに大きいの?」
「それは……お前を食べるためさ!」
 オオカミは起き上がり、口を開けて黒ずきんに飛びかかろうとしました。すると、黒ずきんはオオカミの口に何かを放り込みました。オオカミはそれを飲み込んでしまいました。
「うっ、喉が熱い……。何だ、これ?」
「即効性の毒よ。私が騙されると思った?」
 黒ずきんは妖しげな微笑みを浮かべました。
「毒!?」
「そう。すぐにあなたは死ぬわ」
「そんな……あ、ぐっ……ぎゃあぁ……!」
 オオカミは死んでしまいました。
「黒ずきん、来たのかい?」
 隣の倉庫にいたおばあさんが顔を出しました。
「あ、おばあさん。これ、お母さんから」
 黒ずきんはお母さんから預かったバスケットを渡しました。
「トカゲの干物に、ブタの心臓、スズと鉛、ブードゥー人形……。さすがはあの子だね」
「トリカブトが咲いてたから、摘んできたわ」
「ありがとう。あとは黒犬の血があれば完璧なんだけどね……」
「あれじゃダメ? 一応イヌ科だけど」
 黒ずきんはベッドの上で絶命したオオカミを指さしました。
「毛は黒いけどね……」
「やっぱり効果はない?」
「多分ね。儀式は厳格だから。まだ普通の犬のほうがましだね」
「じゃあ、取ってくるわ」
 黒ずきんはおばあさんの家を出ました。おばあさんは眼鏡をかけ、魔術書の続きを読み始めました。


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