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作品名:どこかで聞いたおはなし 作者:光石七

第1回   三匹の子ブタたち
『三匹の子ブタたち』


 あるところに、ブタの家族が住んでいました。お父さんブタとお母さんブタ、三匹の子ブタたちです。兄弟たちの名前は、一番上がピガー、真ん中がピギー、一番下がピグーといいました。三匹はお父さんとお母さんの愛情を受けて、すくすくと育ちました。
 ある日、お父さんとお母さんが兄弟たちに言いました。
「お前たちはもう大人だ。家を出て、それぞれ暮らしなさい」
 三匹の子ブタたちは家を出て、それぞれ家を建てました。ピガーはワラの家を、ピギーは木の家を、ピグーはレンガの家を建てました。三匹はお互いの家の完成を喜び、祝杯を挙げました。
 その様子を見ていたのはオオカミです。新しい家が三件建ったと思ったら、持ち主はみんなおいしそうな丸々太った子ブタ。これを見逃す手はありません。
「三匹とも食ってやる」
 オオカミはまずピガーの家に向かいました。ワラの家なんて壊すのは簡単です。オオカミは思い切り息を吸い込み、ピガーの家を吹き飛ばそうとしました。ところが、びくともしないのです。何度試しても同じでした。
「ワラの家のはずなのに」
 仕方なく、オオカミはピガーの家に忍び込むことにしました。家に足を踏み入れた途端、
「ビー! ビー! ビー!」
 大きなブザーの音が響き渡りました。呆気にとられていると、制服姿の警備員が現れ、オオカミを連行していきました。

「ピガー兄ちゃんの家って、外はワラだけど中は都会的だね」
 ピグーが言いました。
「外観がみすぼらしければ、泥棒は入らないと思ったんだけどな。お前の言うとおり、念のためセ○ムに入っててよかった」
「でも、これだけ凝ってると高かったんじゃ?」
 ピギーが尋ねます。
「ああ、最新のエコハウスだからな」
「支払いは大丈夫?」
「この家なら五千万はくだらないんじゃないか?」
 ピグーとピギーの心配に、ピガーは笑って答えました。
「親父もおふくろもそう長くはないからな。遺産と生命保険で払えるさ」
「二人とも元気そうだけど?」
「いつ死ぬかわからないぜ?」
「心配ない。家を出る時に俺が渡したサプリを飲んでるからな」
 ピガーは勝ち誇った顔をしました。
「サプリ?」
「そう見せかけた毒薬だ。毎日飲んでいれば、毒が体に蓄積される。あと三か月も飲み続ければ心臓麻痺さ」
 ピガーの知恵に、ピギーもピグーも感心しました。
「……さっきのオオカミ、引き渡さなきゃよかったかもな。強盗殺人の犯人に仕立てる手もあった」
「ピガー兄ちゃんは頭がいいな」
「でも、危ない橋をわざわざ渡らなくても。兄ちゃんの作戦でいいんじゃない?」
 三匹は近いうちに手にする大金を思い、笑い合いました。


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