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作品名:アルフレッドの憂鬱 作者:光石七

第29回   (十)新しいブルーローズA

 晩餐会当日。美しい姉様に多くの視線が集まるのはいつものことだった。僕は姉様のそばについていた。
「ユリア!」
 やはり真っ先に声をかけてくるのはアレン様だ。
「今日こそダンスの相手を……」
「姉様には先約がいます」
 僕はアレン様の申し込みを遮った。
「どうせアルだろう?」
「違います。姉様の恋人です」
 アレン様が固まった。
「……いつのまに……。誰だ?」
「後でご紹介しますわ」
 恥ずかしがりながらも、姉様ははっきり言った。固まっているアレン様を残し、僕は姉様について歩き出した。
 次にやってくるのはテディ兄様だ。もちろん他の男たちも姉様を狙っているのだが、アレン様を差し置いて声をかけることはできないし、従兄という特権を利用して話ができるテディ兄様も優位らしい。
「今夜の君は花そのものだね。僕が摘んでもいい?」
「駄目に決まってるでしょ」
 姉様は即答した。
「テディ兄様。花を盗んだだけで死罪になった男の話を知ってますか?」
 でまかせだったけれど、テディ兄様はぎょっとした顔になった。
「ああ、あの話ね。悲惨な結末だったわね」
 姉様も調子を合わせる。
「テディ兄様も同じ目に遭わせますか?」
「それはいい考えだわ」
「……なんか、兄弟仲がすごくよくなってない?」
「もともとよ。ね、アル」
「そうですね、姉様」
 テディ兄様がふくれっ面になった。
「……ユリアにいい人ができたって噂が立ち始めてるけど」
「噂じゃなくて事実です、テディ兄様」
 テディ兄様が目を見開いた。
「嘘だ……。僕という婚約者がありながら……」
「テディと婚約した覚えはないけど」
「五歳の時、結婚の約束をしたじゃないか」
「全然覚えてないわ」
 レジーが姉様に向かって歩いてきた。
「遅れてすまない。楽団に休みの件が伝わってなかったみたいで、ちょっと手間取った」
「レジー、紹介するわ。従兄のテディ・レッドフォード。ミランダ伯母様の息子よ」
 レジーはテディを見た。
「母君の個展に行った。素晴らしい絵だと思う。俺はレジーナ・エンドルフィ。レジーでいい。楽団でバイオリンを弾いてる。今日は休みだけど」
「……もしかして、ユリアの……?」
 姉様とレジーが顔を見合わせた。二人とも赤面気味だ。
「……そういうことだ」
 レジーの言葉にテディ兄様の顔がひきつっている。
「アル、ユリアについててくれてありがとう」
「どういたしまして。レジー、姉様をよろしく」
 僕は姉様をレジーに預け、レオニードとミシェルを探した。


 レオニードたちはすぐにみつかった。
「みんな二人に釘づけだな」
「ユリアさんに憧れてた男は多いからね」
 レジーに今日休みを取るよう勧めたのは僕たちだ。『ブルーローズの幸せを守る会』としては、なかなかいい仕事をしたのではないかと思う。
「……みんなショック受けてるぞ。アレン様もふらついてないか?」
 姉様がレジーをアレン様に紹介したようだった。
「レジーも度胸あるなあ……」
「音楽馬鹿だからね。音楽以外のところでは結構鈍いかも。あ、名前については敏感だね」
 ミシェルの説明に納得する。
 やがてダンスの音楽が流れだした。姉様は差し伸べられたレジーの手を取り、優雅に踊り始めた。お似合いの二人に、思わず見惚れてしまった。
「私は諦めないからな」
 いつのまにか、アレン様が後ろにいた。
「無駄だと思いますよ? 姉様はアレン様に全く魅力を感じていませんから」
「私は王子だぞ? その口のきき方は無礼だ」
「王子という地位を笠に着ても、姉様の心は手に入りませんよ。逆に嫌われると思ったほうがいいですよ」
 僕がそう言うと、アレン様は黙って立ち去ってしまった。
「……アレン様も諦めたのかな?」
「わからないけど、アルの言葉が響いたことは確かじゃないか?」
 二人の言う通りならいいのだけれど、まだ油断はできない。


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