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作品名:アルフレッドの憂鬱 作者:光石七

第27回   (九)ブルーローズの危機C

「どうしてダグロフの屋敷にいるとわかったのですか?」
 屋敷に戻ってから、僕は両親に尋ねた。
「これですよ」
 母様が十通ほどの手紙を取り出した。
「彼がユリアに宛てた手紙です」
「とっておいたんですか?」
「ええ。ルチア様の護衛をしていた時に教わったんです。王族宛の手紙はすべてチェックしてからお渡ししているそうです。何が仕掛けられているかわかりませんし、脅迫状の類もありますから。怪しいものは保管しておいて、差出人を探して監視するんです。
 ユリアがルーファス陛下の前で演奏した時、嫌がらせの手紙が結構来たんですよ。これは危ないと思って、うちに来る手紙は私がチェックすることにしたんです。もちろん、本人が読んだ後ですよ。
 ヴァンヴェイユ子爵は断りの返事を出したのにしつこく手紙を送ってきましたし、内容がだんだん過激になってきていたので、心に留めていたんです」
 さすがは母様だ。父様が付け加えた。
「夕方までには戻るはずのお前たちが帰ってこないから、どこを探すか相談したら、セイラがこの手紙を見せてくれたんだ。事故なら連絡が来るはずだし、ここにいる可能性もあるんじゃないかと二人で判断した。ユリアとの約束で来てくれたレジーも心配してついてきてくれたんだ」
 レジーは帰途も姉様に付き添ってくれ、先ほど自分の屋敷に帰っていった。
「レジーがいてくれてよかったですね。ユリアの不安が和らいだと思います」
「俺は複雑だけどな。俺の目の前でレジーに抱きつくとは……。セイラ、お前はユリアの思いを知ってたのか?」
「直接は聞いてませんが、何となくは。昔の私と似ているように感じていました。ユリアの気持ちに任せようと思って、私からは何も言っていません」
 こういうことに関しては天然のはずの母様が気付いていたとは意外だった。
「ユリアもショックが大きいだろう。もう休んだのか?」
「ハンナさんについていてもらってます。これから私も様子を見に行きます」
「そうしてくれ。アルももう休んだらいい。ユリアのために頑張ったな」
 父様が僕の頭に手をのせた。僕は褒められてなんだか照れ臭かった。


 翌日もレジーは心配して来てくれた。姉様は抱きついたことが恥ずかしかったのか、部屋から出てこなかった。
「だいぶ落ち着いてはいるんですけど、照れ臭いんだと思います」
 母様がそう言うと、レジーは頷いた。母様がもう一度姉様を呼びに行くと、レジーが僕に話しかけてきた。
「セイラさんって、すごい護衛だったんだな。昨日初めて知った」
「結構有名なんですけど……」
「普段はあんなに女性らしいのに、剣を持つと勇ましいな。びっくりした」
「男性よりも強いくらいですよ。僕に剣の稽古をつけてくれたりするんです」
「あの曲、タイトル変えたほうがいいかもな……」
 レジーは母様のイメージが変わってしまったらしい。
「……母様に幻滅しました?」
「素敵な女性には違いないけどな。……もともと、俺の気持ちも恋というより憧れみたいなもんだから」
 レジーが少し苦笑した。
「俺の母親、俺を生んですぐ死んでるんだよ。俺も無事に育つか危ぶまれて、それで女の名前を付けられて……。俺、母親がどんな人なのか知らないんだ。父や親戚に話を聞いても断片的でさ。だからこんな人なんじゃないかって、自分で想像してた。セイラさんはその想像通りの人だったんだ。だから惹かれたんだろうな」
「そうだったんだ……」
 レジーが母様に好意を抱いたのには、そういう理由があったのか。
「昔からよく名前をからかわれてさ。初恋の女の子にも名前が理由で振られたんだ。だから俺はうわべだけで人を見る奴は信用しないし、俺自身も見かけや肩書だけで人を判断しないようにしている。お前の家族はみんな信用できる」
「姉様も?」
「ああ。ユリアは容姿のせいで逆に傷ついてきてるから、中身を重視するんだと思う。俺と一緒だな」
 僕は思い切ってレジーに切り出した。
「姉様のこと……よろしくお願いします」
「留学とかの相談なら、いつでものるけど?」
「そうじゃなくて……」
 レジーも天然なのか? どう言おうか迷っていると、母様が戻ってきた。
「まだちょっと顔を出すのは恥ずかしいみたいです。レジーに感謝してるんですけど。せっかく来てくれたのに、すみません」
「いえ、元気ならいいです」
 レジーは微笑んだ。


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