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作品名:アルフレッドの憂鬱 作者:光石七

第24回   (九)ブルーローズの危機
(九)ブルーローズの危機


 姉様は母様と一緒にピアノの道を模索し始めた。国内の先生の評判を調べたり、実際に留学した人に話を聞いたりしている。ミランダ伯母様も分野は違うけれど、留学時代の友人と連絡を取って情報を集めてくれている。レジーもいろいろ調べて教えてくれる。レジーに会うと姉様はうれしそうだ。二人きりで会ったりはしていないけれど、着実に距離が縮まっていることはわかる。姉様はまだ気持ちを伝えていないし、レジーも姉様の思いに気付いている様子はない。いつどうなるか、ハラハラしながらも僕は手の打ちようがなかった。『ブルーローズを守る会』もほとんど活動休止状態だ。落ち込む僕をシドが慰めてくれる。


 姉様の変化に気付き、テディ兄様が訪ねてきた。姉様はテディ兄様を避けている。仕方なく僕が相手をした。
「ユリアは一体どうしたんだ? 何があった?」
「テディ兄様には関係ありません」
「関係あるよ! ユリアは従妹で未来の妻なんだから」
 ――どこからその自信が湧いてくるんだろう?
「姉様はテディ兄様を嫌ってますよ?」
「そんなはずはない。ちゃんと婚約したんだ」
「いつ?」
「五歳の時」
 それは婚約とは言わない。
「母上がしきりに留学のことを調べているけど……。ユリアは留学するの?」
「さあ? 姉様に聞いてください」
「教えてくれよ、未来の弟くん」
「……テディ兄様の弟にはなりたくないです」
「かわいい女の子を紹介するからさ」
「姉様より素敵な子はいませんから」
 テディ兄様のような浮ついた男に姉様を任せたくはない。アレン様は地位が高く姉様一筋だけど、王子だから何でも手に入ると、妙な自信を持っているのが鼻につく。他の男たちも姉様を預けるには心もとない。
「……なんかさあ、最近ユリアがすごくきれいになった気がするんだよね。もともと美人だけどさ。纏う空気が柔らかくなったっていうか……。まさか、好きな人でもできた?」
 さすがは女性に慣れているだけある。勘が冴えている。
「テディ兄様には教えません」
「ユリアに好きな人ができたら、アルも困るんじゃないか?」
 ――それはそうだけど……。いや、すでに困っている。テディ兄様は僕の表情を読み取ったらしい。
「……マジで? 相手は誰?」
「……教えません」
「僕も協力するからさ。そいつをぶっ潰そうよ」
「無理ですよ」
「アレン様じゃないよね? しばらく会ってないはずだし。……あいつでもないよな、アルの友達の……レオニードだっけ? 年下は趣味じゃないはずだ。最近ユリアと親しくなった男っているか?」
「……ノーコメント」
 助けがほしいのはやまやまだけれど、テディ兄様が間に入ると余計ややこしくなりそうだ。後で見返りを求められるのも目に見えている。姉様とテディ兄様の仲を取り持つなんて、死んでもできない。
 何を聞かれても、僕はテディ兄様に情報を与えなかった。兄様は諦めて帰って行った。
「シド……。僕、どうしたらいい?」
 僕はシドを抱きしめた。シドは僕の顔をペロペロ舐めるだけだった。


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