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作品名:婚約破棄された令嬢は婚約者を奪った相手に復讐するのが習わしのようです 第三部 作者:ジン 竜珠

第35回   リンカーネイション
 メリュジーヌは自分の中に定着した魔法を検索する。残念ながら「不死」といったモノはなかったが、「負傷からの回復」がいくつかある。
 さっそくその中で最良のものを使って、ライモンダンを癒やした。
「……メリュジーヌ、俺は助かったのか……?」
 まだおぼろげな意識なのだろう、ぼんやりとした目でライモンダンがメリュジーヌを見るでもなく見ている。
「ええ。でも、もう少し安静にしていて」
「……ああ」
 大きく息を吐き、ライモンダンが深い息を繰り返す。
 メリュジーヌは意識を幽玄の世界に踊らせ、少し未来(さき)を見る。これは予知ではない。「占い」の範疇に入る先読みだ。残念ながら、「予知能力」という魔法はないらしい。
「……いえ、大陸に残されていないのか、私が理解出来ていないのか。でも、いい『未来』が視えたわ」
 呟き、メリュジーヌはライモンダンを見て言った。
「ライモンダン。明日、この森にポワトゥ地方の領主、ポワティエ侯エムリが来るわ。私は幻術を使って森の中で彼を惑わせる。そこを私たち二人が助けるの。そうやって彼に取り入り、ポワトゥを治めましょう」
「俺に領主になれ、と?」
「ええ。……考えの違う者を認めない……いえ、私たちを苦しめたこんな世界、存在してはならないわ。一度、この世界は滅ぶべきなの。そして新しく世界を創る。その時、良き治世をもたらすために、いろいろと学んでおく必要がある。言ってみれば、予行練習ね」
「予行練習……」
 頷き、メリュジーヌは続ける。
「不死の魔法はないけれど、いくつかの魔法を組み合わせれば、転生の魔法が出来るわ。それを使えば、一度の人生で叶えられないことも、実現出来る」
 しばらくメリュジーヌを見ていたライモンダンだが、不意にこんなことを言った。
「メリュジーヌ、俺の目の錯覚かも知れないけど、君が、禁断の果実を食べるようにそそのかすヘビが巻き付いた、始祖の女に見える」
「ヘビ、ですって?」
「ああ。下半身が、ヘビのようだ……」
 あまりいい気持ちではない。いくらまだ意識がはっきりとしていない者の言葉としても、あんまりだ。
「ライモンダン、もしかして、こんな私は嫌い?」
 恐る恐る聞いてみる。すると、ライモンダンはゆっくりと首を横に振り、言った。
「紺碧が混じった銀色の鱗が、とても綺麗だ……。始祖の女から禁断の果実を勧められた始祖の男も、こんな気持ちだったのかもな……」
 口元に笑みを浮かべて。
 胸の中に愛しい想いがあふれてきて、メリュジーヌはライモンダンと唇を合わせた。


 その後、突如レイモン六世はクルセイドから離脱して抗戦に転じ、その戦いの中で戦死。ロジェは再びクルセイドに加わろうと、クルセイド軍の総指揮を執っていたレスター伯シモン・ド・モンフォールの元へ赴いたが叶わず、そこで頓死(とんし)した。一説に、毒殺であったという。

 それらの陰に、魔女となったメリュジーヌの呪いがあったことを、知る者はいない。



 そして、数百年を経て、ライモンダンはレオポルト・フォン・マイスナーとして、メリュジーヌはアンゲリカ・フォン・マイスナーとして転生を遂げることになる……。


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