気がつくと、マッパでトンネルの中を飛んでた。あたしの意志で推進してるわけじゃなくて、自動的にどこかへ向かってる。 そうか、これからあたしは「あの世界」に戻るんだ。 よし! ここは乙女の意地で……じゃない、使命でラグナロクを倒すんだ! …………と、また見えてきたわ、青く輝くドア。また、あそこ……ローラントさんの本がある部屋に行くんだ。 しばらくして、あたしはドアの前に着地する。ふと、足下を見ると、何もない。でも、ちゃんと地面とか床とかを踏んでいる感覚がある。 ほんと、何を踏みしめてるんだろ? 「うん、今は、そういうことに意識を向けてる場合じゃないわ」 あたしはドアノブを回し、ドアを開ける。
中の様子は前と同じ、白い部屋。小さめの茶色い丸テーブルが一つあって、そのテーブルの上に、一冊の本がある。ただ、今度は藤色……淡くて柔らかい紫色の表紙で綴じ紐で綴じられ、週刊誌よりも一回り小さくて、前よりちょっと薄い。 その本を手に取り、表紙をめくる。例によって最初は外国語だったけど、ちょっとして日本語に変わった。
あ……。これって……!
あたしはその本のページをめくり、内容を読む。正直、驚きの内容だったんで、あたしは何度も読む。それこそ読み込む、って感じで。試験勉強で教科書を読み込むよりも、遙かに集中力を使ったんじゃないだろうか? そのうち、辺りの空間が歪み始め、本の文字も外国語に変わる。 なるほど、時間切れか。でも、本の内容はあたしの中に“刻み込まれた”のが感じられる。 うん、大丈夫! きっと、この内容は忘れない! あたしの体が、ゆっくりと浮かび始めた。そして部屋の壁をすり抜け、トンネルの中を進んでいく。 向こうでは、どのくらいの時間が過ぎたんだろう? あ、白い光の点が見えてきた。なんとなくゴールが近い感じがする。 思った通り、点が大きくなって丸になって、どんどん大きくなって………………。 よし! 全力であそこに飛び込もう! 今、あの世界がどうなってるのか気になるし、何より。 イルザたちに早く会いたい! あたしは彼女たちの手を握ろうとするように、右腕を伸ばして光の中に飛び込んだ!
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