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作品名:真実はいつも六つ!!(ああああ、また二次創作だ、すみません) 作者:ジン 竜珠

第9回   蛇足の大事件!・3
 六十畳ぐらいあるような、辺見さんの研究室には。
「うわわわわ! なんだ、こりゃ!?」
 おっちゃんがうろたえる。
 辺見さんの研究室には、動物園みたいな強化ガラスの展示室があり、その中で仕切られた中に、たくさんのヘビがいたのだ。樹木とか、草むらなんかで自然らしいモノを再現してる。
 ついでにいうと、その研究室には葉枝さんや川津さんもいた。
 辺見さんがクールな声で言った。
「気をつけてよ? この部屋、コブラとかヤマカガシとか、毒ヘビだらけなんだから。たまに『檻』から逃げ出してて、あたしでも噛まれそうになること、あるし?」
 と、ニヤリ。
 おっちゃんが脂汗をにじませながら言った。
「な、なんでヘビの研究なんか……?」
 辺見さんが檻を見ながら言った。
「毒ヘビの血清って、そのヘビごとに用意しないとならないのよ。だから、すべてのヘビ毒に効く解毒薬を開発出来れば、ノーベル賞モノ。一応、ある種のペプチドが毒の分解に有効らしいっていう研究結果はあるんだけど……」
 と、ここまで言ったところで俺と目が合った辺見さんは、困ったような笑みを浮かべて言った。
「坊やには難しいか、こういう話?」
「うん、ちょっとわかんないかな?」
 俺は「江戸川コナン」モードで答えたけど、耳はおっちゃんが○暮警部に耳打ちした小声を捉えていた。
「警部殿。この檻のどこかに、金持氏の下半身がありそうですな」
「そうだな。ただ、裁判所が捜索差押令状を発行するかどうかなんだよ、問題は。どうやって、集めるんだね、裁判所を納得させる証拠を?……」
 ○暮警部も弱っていた。

 次に行ったのは、葉枝さんの研究室だ。辺見さんの研究室と同じぐらいの広さの中に、テーブルが並び、その上に試験管とビーカーの中間ぐらいの太さの円筒形の容器が、いくつも並んでいる。
 おっちゃんが、葉枝さんに聞いた。
「なんですか、あれは?」
 葉枝さんがシニカルな笑みを浮かべて答えた。
「あれはキイロショウジョウバエの培養ですよ」
「は、ハエ……!? なんで、ハエなんか……!?」
 おっちゃんが目を丸くして絶句した。
 葉枝さんが、やっぱりシニカルな笑みで答えた。
「ハエって、生命サイクルが早いんですよ。それに変異も起こしやすい。バイオ研究には、もってこいなんです」
 俺は円筒を見ながら言った。
「ねえ、葉枝さん。空っぽの容器がたくさんあるんだけど?」
「ああ、それはね、僕?」
 そう言って、葉枝さんはドア近くにいる川津さんを見る。
「川津くんが知っているんじゃないかな?」
「なッ!? 何を言ってるんですか、葉枝さん!?」
 ギョッとなってから、川津さんは答える。
「そんなの、知りませんよ!? それに、僕だって研究資料が突然いなくなったりしてるんです! ひょっとして、辺見さんがヘビに食べさせてるんじゃ!?」
 辺見さんが真っ赤になる。
「ちょっと、なによ、いきなりこっちに振ってこないでよ! あたし、うちの子には、ちゃんとショップで買ってきたエサを与えてるわ! そうだ、いい機会だから言っとくけど、葉枝さん! あなたのところのハエが、檻の中でブンブンブンブン、飛び回ってるの! もしうちの子が、ハエが媒介する病気に罹ったりしたら、正確なデータがとれないじゃない!」
 シニカルな笑みのまま、葉枝さんは答えた。
「フン。そんなヤワなヘビのヘビ毒なんて、研究する価値、あるんですかね?」
 弱り切ったような笑みを浮かべて、高○刑事が言った。
「ま、まあまあ、お三方、落ち着いてください。……ね?」
 この反応、ここに来たときにも、同じようなやりとりがあったんだな、きっと。
「警部殿、ここに下半身を隠すのは難しいんじゃ……」
「うむ。下半身があったら、ハエがたかるだろうしな」

 次の川津さんの研究室には、カエル……アマガエルがたくさんいた。
 川津さんが笑顔で言った。
「時々、真っ青なカエルや黄色いカエルが見つかることがありますよね? あれは一種の色素異常による突然変異なんですけど、これを普通に出来ないか。どの遺伝子のスイッチをオンオフにすればいいのか。日本各地の博物館に行ったり、山間部に行ったりして、研究してるんです」
 不意に葉枝さんが言った。
「そういえば、アレ、どうしたんだ?」
「アレ? アレって何ですか?」
 川津さんが聞き返すと、葉枝さんがわざとらしく辺りを見回して言った。
「去年、随分とかわいがってたカエルがいただろう? アマガエルにしては大きく育った、アレだよ」
 辺見さんも思い出したのか、口元に意味深な笑みを浮かべて言う。
「ああ、そういえばいたわねえ、そんなのが。アマガエルなのに、突然変異でウシガエルぐらいにまで育ったヤツ。確か……。ケロ美ちゃんだったっけ?」
 川津さんが赤くなる。そして小声で言った。
「い、いいじゃないですか、愛着がある検体に名前つけるぐらい」
 葉枝さんが聞く。
「んで? どうしたの? ケロ美ちゃん?」
「……去年の冬、外に出て冬眠したみたいなんですけど、いつの間にか、いなくなりました」
 辺見さんがわざとらしく言う。
「な〜んだ。せっかく名前までつけたのに、薄情ねえ。川津くんも、気をつけなさいよ? 女って気まぐれなんだから」
 ……聞いてると、嫌な気分になるな。三人の人間関係がよく分かるぜ。
 それはそうと、おっちゃんたちは周囲を見ているけど、俺の中では、ある疑問があった。

 死体の隠し場所はどうにかなるとして、いったい、どうやったら数日間で人間の死体を白骨に出来るんだ? 焼くのでもない、化学薬品でもない。
 まさか、大型の刃物を使って解体したのか? だとしたら、解体したときに出たモノは、どこへ?

 俺があれこれ考えていると、葉枝さんが言った。
「俺のところのハエ、ひょっとしたらケロ美ちゃんが食べちまったんじゃないのか? だから、数が減っちまったんだ」

 そのとき、俺の脳裏に電撃のように閃くことがあった。

“そうか! あの方法なら! だとしたら、数日で白骨化した理由も、上半身だけが見つかった理由にも、説明がつく!”


 俺はアチコチを見渡しながら時々、警部と何かを話しているおっちゃんの背後に回り、いつものように麻酔針を撃った!


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