灰○はまたシニカルな笑みを浮かべて言った。 「ベ○モットだけど……。彼女、ボスのクローンよ」 「……な、に!?」 「もちろん、ボスが健康な頃の細胞を使っている、ね。他にも何人かいるわ。名前までは知らないけれど。でも、その中でも一番のお気に入りがベ○モット。彼女、ボスの体調が悪くなるたびに、血液や体の細胞を取られている。いわば、ボスの体のスペア扱いされているの。彼女、いつもクールに振る舞ってるけど、案外、内心では戦々恐々としてるんじゃないかしら? いつ、心臓を寄越(よこ)せ、ううん、体そのものを寄越せ、っていわれるか、ってね」 灰○は、さらりと恐ろしいことを言う。 もっとも、その事実が、あることをコ○ンに気づかせた。 「ちょ、ちょっと待て! 確か、組織のボスは烏丸蓮耶、男のはずだ!?」 「フェイクよ」 灰○はあっさりと言ってのける。 「アメリカではジョニー・ブラックマン、フランスではマダム・ノワール、イタリアではジャンマルコ・ガッロネーロ……。世界中、あちこちにいるのよ、ボスのダミーは」 「ノワールは『黒』、ガッロネーロは『黒い鳥』、ブラックマンは、そのまま『黒き者』……」 考えれば世界を股にかける巨大組織だ、世界のあちこちに偽の「痕跡」を用意することは十分に考えられる。 「それにボスは日本人」 「なん、だと……!?」 「APTX4869。この『4869』で『シャーロック』なんて語呂合わせができるのなんて、日本語だけ。この薬の名付け親はボス。そういうことよ。つまり、クローン体であるベ○モットも、日本人。整形で外国人に見せかけているけど、DNA鑑定にかけたら、日本人であることがわかるわ。彼女があたしを執拗に狙うのも、ある時に彼女の組織検査をして、あたしが真実を知ってしまったから」 まったく、驚愕の事実ばかりだ。 「それからね、ボス、あなたのこと、とうに気づいているわよ」 「んな…………ッ!?」 心臓が止まるかと思うほどの衝撃が走った。 それが少し落ち着くのを見計らったように、灰○は間を置く。 「いいかしら、○藤くん?」 「あ、ああ。……ボスが、俺のことに気づいているって……」 「ボスのメールの音、『七つの子』だったっていう記憶、持ってる? もしかしたら、組織のメンバーの、メール着信音かも知れないけど?」 「あ、ああ、覚えてるけど?」 「七つの子……つまり、七才の子で『小学一年生の子供』ってことよ」 「…………気づいていて、どうして俺のことを、放っているんだ?」 「さあ?」 と、灰○は面白くもなさそうに応える。 「実は、私も何周か前になって、この記憶を思い出したの。だから、今、話した以上のことは、わからないわ。でも」 「でも?」 灰○はジュースの表面を眺める。そして。 ゆっくりと顔を上げて言った。 「もしかしたら、あなたの身近に組織の誰かがいるのかもね」 「………………!」 「七つの子」が「小学一年生の子供」を意味するのなら。 「○藤くん」と、灰○が真剣な表情でコ○ンを見る。 「あなた、もしかしたら、ループする時空だけじゃなく、パラレルワールドすら巻き込む、超物理学的超数学的存在。だから、ボスはあなたのことを観察している。いずれ自分がその力を手にするために」 「……………………!!」 「どうする、○藤くん?」 と、灰○が挑戦的な笑みを浮かべる。 「灰○、APTX4869の完全な解毒薬を作って、この幾千もの迷宮、メビウスの輪を抜けることは?」 「今はまだムリね」 「それなら」 考えるまでもなかった。 「決まってるじゃねえか。俺がやることは変わらねえ!」 コ○ンは決意を新たにした。
(真実はいつも六つ!!・了)
あとがき
読了、有り難うございました。 ファンの皆様、ごめんなさい。 本当に作品を貶めるつもりはないんです。 それだけはご理解下さいね。
おまけ:「ジョニー・ブラックマン」は「ジョニ黒(スコッチウィスキー・ジョニーウォーカーブラックラベル)」をもじったものです。
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