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作品名:真実はいつも六つ!!(ああああ、また二次創作だ、すみません) 作者:ジン 竜珠

最終回   蛇足の大事件!・5
 ペタ。

 そんな音が連続して聞こえ始めた。
 何だろうと思っていると、みんなが音のする方を見て、なんだか驚いている。ていうか、ギョッとしている。
 気になって物陰から出てそっちを見ると、

 えええっ、なんだありゃ!?

 俺が見たのは、人間が乗れそうなほど大きなアマガエルが、ペタペタと廊下を歩いて来るところ。
 本当に、何だ、アレ!? ていうか、あんな巨大なアマガエル、なんなんだ、ホントに!?

「ケロ美! 出てきちゃ、ダメじゃないか!!」
 そう叫んだ川津さんに向かって、辺見さんが驚いたような声を出した。
「ええッ!? あれが、ケロ美!? あのウシガエルほどもあったアマガエルの!?」
 みんなが驚いてるけど、俺も驚いてるわ! ケロ美とか、ウシガエルとか、そんなんどうでもいい。
 だから、あんな巨大なカエル、本当にこの世の生物か!?
 ケロ美、と呼ばれた巨大なアマガエルはペタペタと歩き、やがて川津さんの前まで来ると。

 ケロッ。

 と、何かを吐き出した。それを見た高○刑事が、唖然として言った。
「警部、これ、人間の下半身、その白骨ですよ……」
 警部も、唖然として答えた。
「た、確かに」
 みんなが自然と川津さんを見る。
 川津さんが下を向き、右手でケロ美とかいう怪物体の頭部を撫でながら、一旦、息を詰まらせ、言った。
「僕は青いアマガエルを作りたくて、色々と実験を繰り返した。ケロ美はその過程で生まれた突然変異体なんだ。なんかよく分からないけど、モリモリと大きくなっちゃって、こんなことに」
 おいおい、研究家が「なんかよく分からないけど」なんて言っちゃダメだろ……!
 川津さんが顔を上げ、ケロ美という怪物体を見て告白を続ける。
「研究を続けるのには、お金がかかる。それに、ケロ美の餌代だってかかる。僕にはお金が必要だったんだ」
 葉枝さんが、半ば同情したように言った。
「それで、オヤジを殺して遺産を……」
 頷き、川津さんは言う。
「それだけじゃない、ケロ美を見た父さんは『怪物!』って言ったんだよ、僕のかわいいケロ美を、怪物って!」
 いや、普通、言うだろ、それ。
 涙を流し、みんなを見て川津さんは続けた。
「僕のそんな怒りを感じ取ったケロ美は、父さんを舌で絡め取って飲み込んだ。そして、林へ帰って行ったんだ。今朝、上半身だけ見つかったのは、多分、下半身は未消化だったからだと思う」
 ケロ。なんて鳴いて、ケロ美はペタペタと歩き出した。どこへ行くのかと思っていたら、葉枝さんの研究室。そして器用にハエの入った瓶のふたを開け、舌を伸ばして中のハエを根こそぎ絡めて飲み込んだ。
 そのあと、またペタペタと歩いて、今度は辺見さんの研究室。ケロ美が中を覗き込んだ瞬間、ザザザザッ!って音をさせ、一匹残らずヘビが檻の奥へ行って、隠れた。

 カエルを見てヘビが恐れおののく。

 いや、逆だろ、それ。

 葉枝さんが川津さんを見て呆然と呟く。
「うちのハエが減ってたのって、やっぱり君のせいか……?」
 高○刑事が言った。
「け、警部、これって……」
 ○暮警部が「うーん」と唸ってから言った。
「犯人は川津天さん、動機は金銭に困っての遺産狙い、そして凶器は人間以上に大きいアマガエル……。裁判所が認めんだろ、こんなの」
「ですよね〜。逮捕状、下りませんよね……」
 と、高○刑事が困り切った笑みを浮かべる。

 なんだ、この事件?

 まあ、シャーロック・ホームズも奇妙な虫を睨みながら発狂した男の事件は、解決出来なかったんだしな。生物の神秘には、探偵も敵わな……。

 ……って、本当に何なんだ、今回の事件?


☆おしまいっ!


あとがき

 いろいろすみませぬ……(泣)。



「ウジ虫に喰わせて死体処理」というトリックは、ある二時間ドラマで観たものです。……なんですが。
 そのタイトル、全然、思い出せないんですよ。どなたが出ていらっしゃったか、それも覚えてない。かなり古い作品だったって印象はあるんだけどね。

 わかったら、ここに書かせていただきます。


 上記の「ウジ虫に喰わせて死体処理」というトリック、判明いたしました!
「篝警部補の事件簿2 八丈・金沢殺人水脈」(主演:榎木孝明氏)でした! 未見の方、ネタバレになっちゃってゴメンナサイね?
 ……いやあ、上には書かなかったけれど、私の記憶の中では、実は主演は辰巳琢郎氏だったんですよ、おぼろげだったけれど。断言しなくて良かったぁ、赤っ恥かくところでした。

 ということで、お騒がせでした。もし「……トリックの盗用は、あかんで?」……厳密には「トリック」ではないけれど……ということでしたら、この作品は削除いたしますです。



 いつも思ってること。

 もしコナンが最終回を迎えて終了したら、アニメでは「新・名探偵コナン」とか、「名探偵コナンU」とかって銘打って、「江戸川コナンの事件簿」をアニオリのシナリオでやってくんないかなあ。

 まあ、これはオイラ一人が思ってることかもしんないけどさ。





中世魔法ファンタジーだョ!? 名探偵コナン

1

 俺は魔法学院高等部の学生にして探偵の、シェンチー・クードウ。
 幼馴染で同級生のラン・モーリーとマジックアニマル・ランドへ遊びに行って、黒いローブ姿の男の怪しげな取引現場を目撃した。
 取引を見るのに夢中になっていた俺は、背後から近づいてくるもう一人の仲間に気づかなかった。
 俺はその男に「細胞を分解して殺す」という呪いをかけられ、意識を失い、目が覚めたら…………。

 体が縮んでしまっていた!

 シェンチー・クードウが生きているとヤツらにばれたら、また命を狙われ、周りの人間にも危害が及ぶ。

 魔法科学の第一人者・アッガーサー博士の助言で正体を隠すことにした俺は、ランに名前を聞かれてとっさに……

「コナン・エドガウアー」

 と名乗り、やつらの情報をつかむために、父親が探偵をやっているランの家に転がりこんだ。

 博士は小さくなった俺のために様々なアイテムを作ってくれた。
 魔力探知眼鏡。微弱な魔力だけでなく、一週間以内なら過去に使われた魔法の痕跡さえ探れるスグレもの。
 バックルにセットされた、エネルギーボール射出魔法円。呪文の詠唱も魔力の行使も不要で、一回だけエネルギーボールを生成出来る。
 誰にも察知されることなく、狙った一人にだけ睡眠魔法を行使出来るバングル。そして、蝶ネクタイに仕込んだ、ありとあらゆる声を出せる変声魔法陣。
 こういったアイテムを使って事件を解決し、俺はあの黒いローブの組織を追いかける。

 たった一つの真実見抜く、見た目は子供、魔力は大人、その名は、名探偵コナン!




「伯爵邸密室殺人事件」


「ねえ、おじさーん、忘れ物ー!」
 その朝の九時、俺は探偵事務所から出かけていくランの父親・コゴーロンのおっちゃんを追いかけた。
「あン? 忘れ物?」
 数メートル先で、おっちゃんが振り返る。
「うん。この封筒。依頼人さんのところに持っていくんでしょ?」
 と、俺は大判の封筒を差し出す。
「封筒はここにちゃんと……。って、こりゃ、昨日買ったヨッコちゃんの肖像画集だった!」
 ヨッコちゃんっていうのは、おっちゃんが大ファンだっていう歌姫・ヨッコ・オキーノーさんのこと。……ったく、事務所でなに見てるんだ、このオヤジは。
 おっちゃんはカバンから出したヨッコ・オキーノーさんの肖像画集を、またカバンにしまうと、俺から受け取った封筒をカバンに入れる。
「悪かったな、ボウズ。……中、見てねーよな?」
「うん、見てないよ?」
 訝しげに俺を見たおっちゃんに、俺は「子供スマイル」で答える。
 なーんて、ウソ。中を見たから、依頼人に届ける報告書だってのがわかったんだって。
「そうか。ならいい」
 おいおい、気づけよ、探偵だろ……。

 歩き始めたおっちゃんに、俺もその後に続く。
「……ん? 用事は済んだんだろ? 家に帰れ」
 おっちゃんの言葉に、
「えー? いいじゃなーい。今日はランねーちゃんも魔法格闘技の練習試合でいないから、お昼ご飯、おじさんと二人で食べなさいって言ってたでしょー?」
 と、「子供スマイル」で言う俺。
「そうだったな。……わかった。でも、チョロチョロして、向こうに迷惑かけるんじゃねえぞ?」
「はーい!」
 と、俺はまたまた「子どもスマイル」で返事する。
 しばらく歩いて、俺たちは乗合馬車の停留所まで来た。
「ねえ、どこに行くの?」
 報告書の内容には目を通したけど、見てないことになってるからな。
「ベーク・アー・タウンの外れにあるブレーデス伯爵の邸宅だ」
「ふーん」
 アッシャー・ブレーデス伯爵。確か今年で四十六歳になる由緒正しい家柄の貴族の男性当主だ。ただ、無礼(ぶれー)な態度がどうにも気に触ると、社交界では敬遠されているらしく、家の中では、まさに暴君らしい。その暴力のために結婚しても長続きせず、何人もの奥さんが実家に帰ってしまい、現在は独身。広いお屋敷に、老執事さんと若いメイドさんと三人で暮らしているという。
 やがて乗合馬車がやって来たんで、俺たちは乗り込んだ。




 九時三十分、邸宅に着いた俺たちは、何やらものものしい様子に、訝しげに周囲を見た。
 おっちゃんが邸宅の玄関前に駐められた、何台もの主都警備隊の馬車を見て言う。
「事件か?」
 そして、建物に向かう。俺もその後に続くと、そこにいた警備隊隊員・ターカギー隊員が言った。
「モーリーさん……それにコナンくん?」
「おい、ターカギー、何があった!?」
 ターカギー隊員が手帳を開いて応えた。
「ここの主(あるじ)・ブレーデス伯爵が殺害されているのを、住み込みの執事とメイドが見つけ、執事が早馬で報せてきたんです」
「伯爵が殺害されただと!? どういうことだ、それは!?」
「現在、魔法鑑識(マジック・フォレンジック)が詳しく調べてるんですが……」
 そこまで言うと、ターカギー隊員は困惑した表情になり、少し辺りを気にする風を見せてから(もっとも、近くには誰もいねえけど)おっちゃんに言った。
「どうも“魔法的密室殺人”のようなんです」
「魔法的密室殺人!?」と、俺とおっちゃんの声がハモった。
 うなずくターカギー隊員を、一人の恰幅のいい男性が呼んだ。
「ターカギーくん」
「あ、メグレ隊長」
 声のした方を、ターカギー隊員が見る。俺とおっちゃんも玄関の外から、中を見る。そこにいたのは、主都警備隊・メグレ1番隊隊長だ。
「ターカギーくん……。ん、モーリーくん? それにコナンくんまでも……?」
 そう言ってからメグレ隊長はうんざりしたような表情になって言った。
「一体、なんの用で来たのかね?」
 おっちゃんがカバンから封筒を出す。
「実はブレーデス伯爵から『ある事案』の追加調査を依頼されまして。その報告書を持ってきたんですが」
「そうか。ターカギーくんから聞いたかもしれんが、伯爵は何者かに殺害された」
「そのようですな」と、おっちゃんがメグレ隊長の肩越しに邸内を覗く。
「まあ、そういうことだ。これから本格的に捜査を始めるから、部外者は帰ってくれんかね?」
「隊長殿、そう仰らずに! 不肖このコゴーロン・モーリー、何かのお役に立てるかも知れません!」
 そう言っておっちゃんは封筒を掲げる。
 ふう、なんてため息をついてから、メグレ隊長は言った。
「いいだろう。ひょっとしたら犯人の手がかりがあるかも知れん」
「お任せ下さい!!」
 鼻息も荒くそう言うと、おっちゃんは邸内にズカズカと歩を進めた。俺もその後ろに続く。そのとき、背中にメグレ隊長の呟きが聞こえた。
「……ったく、毎度毎度、事件現場に現れるとは、本当に死神なんじゃないのか、コナンくんは……?」
 ……ハハハ、おーい、メグレ隊長ー、聞こえてんぞー?
「ああ、そうそう、ターカギーくん、もう現場に入っていいそうだ、容疑者の三人を……」
 隊長がそんなことを言うのを聞きながら、俺はおっちゃんを追いかけて小走りになった。




 事件現場は、二階にある伯爵の寝室。そして、事件の概要は、大体、こんな内容だという。

 伯爵は、たいてい朝は七時に起きてくるという。しかし、今朝は起きてこなかった。そこで住み込みのメイドさんが起こしに行った。ドアをノックしたが返事がない。本来ならここで、部屋に入って起こすところだが、この邸宅ではそういうわけにはいかない。
 この寝室には、高名な魔道士が敷設(ふせつ)した、強力な対人・対魔法結界があるのだそうだ。以前、伯爵のあまりの暴君ぶりに精神をやられた、とあるメイドが、合鍵で寝室に侵入し、寝ている伯爵を殺害しようとしたらしい。そのときは一緒に寝ていて、物音に気づいた当時の伯爵夫人によって事なきを得たそうだが、またこういうことがあってはたまらないと、伯爵は睡眠中、強力な結界を張るようになったという。
 その結界は、部屋の内側から、伯爵しか知らない操作でないと解除出来ないそうで、外側からは解除出来ない。対人結界だから人は入れないし、強力な魔法にも対応しているから、普通の攻撃魔法程度では破壊出来ないらしい。
 この結界は、朝の七時半には自動的に解除される設定になっているそうなので、その時間に、今度は執事さんと一緒に寝室にやって来た。
 そこで伯爵の死体を見つけたのだそうだ。
 昨夜、二十二時に結界が発動したことは寝室の前で執事さん、メイドさんが確認しているという。

 死体袋に入れられ、運び出される伯爵の死体を見ながらおっちゃんが言った。
「隊長殿、伯爵の死因は?」
「鋭利な刃物による刺殺、失血死だ。正面から心臓を中心として、胸をメッタ刺しにされていた」
 うわ、そりゃ、エグいな。
「うーん。相当な怨みがあるんですな」
 と、おっちゃんが唸る。
 俺は隊長を見上げて聞いた。
「ねえ、伯爵のご遺体に魔法の痕跡はなかったの?」
「それなんだがなあ。結界が生きていれば、まだ魔力は部屋に残留していたと思うんだが、我々が現着した八時半の時点では魔力はすっかり抜けてしまっていた。だから、なんらかの魔法が行使されたとしても、確認は出来ん」
 今度は、おっちゃんが聞いた。
「伯爵の死亡時刻は?」
「魔法監察医(マジック・ドクター)によると、二時から三時の間に伯爵の魂は肉体から遊離したそうだ」
 俺は考える。こういうとき、死者の霊を呼び出して犯人を聞ければ楽勝なんだが、今のところ、その手の魔法の精度は高くない。その辺をうろついてる他の霊や妖精の類いを引き寄せてしまうことの方が多く、むしろ捜査をかく乱してしまう。だから、使用者が限られるような魔法で殺害された場合ならともかく、今回のように魔法を使っても結界を解除するとか、普通の殺人事件なんかは、まったく普通の捜査に頼らざるを得ないのが、現状だ。
 部屋に入った俺は、中の様子を見る。かなり広くて壁紙から調度品、果てはサイドボードやナイトテーブルまで高級品が揃えられている。部屋のほぼ中央に、赤黒い大きな染み。あれが血痕か。かなりの範囲に広がってるな。絨毯がすすった伯爵の血液が、まるで不定形の生物のようだ。
 そして、ふと、ドアの傍に見慣れない魔法円があるのに気がついた。
「メグレ隊長、もしかしてあの魔法円が結界の魔法円なの?」
「ん?」と、メグレ隊長がそちらを見る。
「ああ、あれが結界の魔法円だ。発動については、中心に手を当てて魔力を流すだけなので、魔法を使える者なら誰にでも出来るそうだが、解除は伯爵にしか出来んらしい」
「隊長殿」と、おっちゃんが言う。
「解除方法ならもう一人……結界を敷設した魔道士なら知っているのでは? その者を締め上げて解除方法を聞き出せば……!」
 なにやら、襟首を締め上げるような身振りを交えて語るおっちゃんに、ちょっとばかり困惑した表情になって隊長は答える。
「それはわしらも考えたんだが。初期設定はそうでも、基本的に伯爵の方で独自に設定可能なんだそうだ。夜間専用の結界で、日中は結界維持の魔力供給がないそうだから、一、二分程度で自動解除されるそうでな。だから、初期設定を記した羊皮紙を執事さんから預かって、こちらでも操作してみたんだが。結界は解除出来んかった」
 うーん、とおっちゃんは腕組みして唸る。しかし、すぐに何かを閃いたらしい。
「あ、そうか! わかりましたよ、隊長殿!」
 輝くような笑顔だ。……なんか、あさっての方を向いた推理のような気がしてならねえ。
「何か閃いたのかね、モーリーくん!?」
 ……ああ、メグレ隊長も嬉しそうだ。
「ええ! 犯人は、こうやったんです! ……まず、外から飛行魔法で窓まで近づき、窓ガラスをノックする。それに気がついた伯爵が、結界を解除して窓辺まで近づき、窓を開けたところを、ナイフを持って突進! 伯爵をメッタ刺しにした後、部屋を出て魔法円の中心に魔力を送り、窓を閉める。これで、魔法的に密室が完成! つまり! 犯人は伯爵の知り合い、それも夜中にやってきても追い返されない、親しい関係!」
 やや興奮気味にジェスチャーつきで、おっちゃんは推理を解説した。
「なるほど。それはアリかも知れんが。しかしモーリーくん、窓の鍵は内側から締まって……」
「フフン。では、私の推理が正しいことを今から実演!してみましょう!」
 そう言って、メグレ隊長が言い終わらないうちに、おっちゃんは小走りで部屋を出て行く。
「あ、待ちたまえ、モーリーくん!」
「あ、ちょっと待って、おじさん! その推理は……」
 ダメだ、その推理は間違ってる! 間違ってる上に危ない……! 俺はおっちゃんを止めようと追いかけたが、そのとき、ちょうどターカギー隊員が三人の男女を事件現場に連れて入るところに出くわし、追いかけられなかった。
「隊長、三人をお連れしました」
 ターカギー隊員が連れてきたのは。
 一人はきちんとした身なりの、モノクルを着けた初老の男性。服装から見て、執事さんだろう。二人目はボブカットの若い女性。服装から見て、この人がメイドさんか。もう一人はちょっと痩せてて、丸眼鏡をかけ、櫛を通していないらしくボサボサの髪、無精ヒゲ、少し目つきの悪い若い男。服装はヨレヨレのシャツにしわの寄ったチュニック、やっぱりしわが寄ったズボンと、随分ラフなものだ。
「伯爵の死亡時刻、この屋敷及び敷地周辺にいた人で、何らかの犯行動機があり、また何らかの魔法が使える人たちです。魔法探知で探したところ、敷地から三百メートルほど離れたところの林の中で、この男性がテントを張っていました」
 ボサボサ頭の青年を見ながらターカギー隊員がそう言ったとき、
『隊長殿ーーーー!』
 と、声がした。外からだ。見ると、モーリーのおっちゃんが浮遊魔法で宙に浮いているのが見えた。
「やれやれ」
 そう言ってため息をつき、メグレ隊長が窓を開ける。
「モーリーくん、伯爵の遺体が発見されたとき、この窓は内側から鍵がかかっていたそうだ……」
 メグレ隊長がそう言うのを聞きながら、おっちゃんが近づいたとき。
「どわああああああああ!!」
 屋根の上から何発もの光弾……マジックミサイルが降り注ぎ、おっちゃんを地面にたたき落とした!
 俺は窓際に駆け寄り、下を覗き込んで言った。
「おじさーん、大丈夫ーー!?」
 おっちゃんは地面に大の字に寝転んだまま、ちょっとへたばり気味に言った。
「……ああ、出かけるときは軽めの防護魔法を張ってるから、大丈夫だ。……なんなんだ、一体……?」
 安心するのと同時に、呆れながら俺は言った。
「部屋に結界魔法を張るような人なら、お屋敷の外側にも結界か、何かの防御魔法を用意しておくよねー、普通ー?」
「……気づいてたんなら、早く言えよ、ボウズ……」
 ハハハ〜、そっちが話を聞かずに先走ったんじゃねーか……。




「あの、隊長さん、なぜ私たちまで?」と、執事さんがメグレ隊長に聞いた。
「失礼とは思いましたが、関係者にはお話を聞かないとなりませんので。特に、この部屋には結界がありましたから、事情に詳しい方には是非ともお伺いしないとなりません」
 そう答えたメグレ隊長の目には、鋭い光が宿っている。
 執事さんとメイドさんが、困ったような表情で顔を見合わせる。ターカギー隊員が言った。
「では、執事のディディット・バトラーさん(六十八歳)。あなたの伯爵死亡時刻……二時から三時の間の行動と、今朝のことを教えて下さい」
 バトラーさんが頷いて応える。
「二時から三時の間、でしたね? その時間でしたら、一階の自室で眠っておりました。今朝はいつも通り六時に起床し、軽く運動をした後、着替えまして、郵便受けの新聞を取り、ご主人様の本日のスケジュールを確認しておりました。七時を少し過ぎた頃、メイドのオリガさんから、旦那様がまだ眠っていらっしゃるから、結界が解除になる七時半にまた起こしに参ります、と報告がございました。
 そして七時半、私(わたくし)も一緒に旦那様の寝室へ参りまして、ご遺体を発見いたしました。そこで、この街を所管する警備隊分署へ私が通報に参りました。私は『早馬召喚魔法』が使えますので。そういう次第でございます」
 ものすごく落ち着いた様子で、バトラーさんは証言を終える。こんな事件があったとは思えないほどの、ちょっと気になるぐらいの冷静さだ。
 メグレ隊長が言った。
「本官も、噂程度なら耳にしております。ブレーデス伯爵は、いささか人格に問題があり、社交界では快く思われておらず、婚姻関係は長続きせず何人もの奥方と破婚しているとか。使用人が次々にやめている、とも。伯爵から解雇された者も多いそうですな。しかしあなたは、長年、仕えているとか。とても忍耐強いお方だとお見受けします」
「恐れ入ります」
「しかし、多年、仕えていれば、どうにも我慢ならないことも一度や二度ではないはず。それが爆発した、ということはありませんか?」
 まったく表情を変えず、バトラーさんは言った。
「私も人間ですから、そのようなこともございます。ですが旦那様を手にかけるなど、そんなことは致しません。それに、そのような噂は、的外れなものでございます」
「ほう? 的外れ、とは?」
 メグレ隊長の鋭い眼光は消えない。
「旦那様は、己の地位を鼻にかけて市井の者を見下す、そのような腐った貴族社会を嫌っておいででした。それが自然と無礼(ぶれー)な態度となって、他の貴族たちから嫌われる元になっていた、それだけのことでございます。
 それから、旦那様は、己を厳しく律するあまり、他の者にもそれを強いるようなところがございました。自分から辞める使用人は、それに耐えられなかったのでございます。以前、旦那様を殺そうとしたメイドは、その厳しさに精神のバランスを乱したのでございます。それと、使用人を解雇したのは、別の事情からでございます」
 おっちゃんが口を挟む。
「なんですか、その事情って?」
 バトラーさんが軽く頭を下げて答えた。
「当家の財政事情は芳しくございません。所有している果樹園は十年前の旱魃、七年前の長雨と水害のせいで、現在では収穫量は激減。それにトオクノ州にある麦の耕作地の地代は地元農民の暮らしぶりを鑑みて、とても低く抑えておいでです。その地でパンや菓子を作る施設の管理費や流通費などは、逆にこちらで一部、援助すらしております。
 現在、安定した収入と呼べるものは、お国から頂戴する軍事顧問としての俸給と、十八年前に起きた他国との戦争の際の軍人恩給でございます。なので、多くの使用人をお召しになることなど、とてもとても。お客さまのお気分を害さないようにと、邸内の調度品などは高級品を揃えておりますが」
 おっちゃんが、あっけにとられたような表情になって続けて聞いた。
「じゃあ、結婚しても長続きしないのは……」
「質素な生活、不自由な生活に耐えられなくなったからでございます。贅(ぜい)に慣れきった身では、ここの生活はまさに牢獄でしょうから」
 所詮、噂は噂か。貴族という、庶民とは隔絶した社会ゆえに実情は見えず、いろんな憶測だけが駆け回ったってことだな。




「な、なんだよ、そういう事情だったのかよ……」
 ボサボサ頭の青年が、おっちゃん同様、あっけにとられたように呆然と呟く。
 それを聞いたターカギー隊員が聞いた。
「どうかしましたか、カール・プリットさん(二十三歳)?」
 ターカギー隊員に声をかけられ、プリットさんは、ちょっとギョッとなってから、口を開いた。
「俺は、槍とか剣を生成する魔法が使えるんだ。それで最初は警備隊に入ろうと思ったけど、募集がなくて。貴族の屋敷で護衛とか私設警備隊に入ろうと思ったけど、これも募集がなかったり、条件が厳しかったり。軍隊は怖いから、どうしようかって思ってたとき、ここで護衛を募集してることを知って。それで運良くここに雇われたんだ。それが半年前。
 ……でも二ヶ月前、解雇になって。その理由が、やれ“身だしなみがなってない”だの、“礼儀がなってない”だの、ほとんど難クセばかり! で、クビになってから何もかも悪い方へ転がり出して、家賃も払えなくなって、アパートを追い出されて。で、いつか復讐をしてやろうと、あの林の中で暮らしてたんだ。
 でも、……そうか、屋敷の経済事情か。給料を払えないなんて言えなくて、世間体を気にして、あんな言いがかりをつけて俺を解雇したんだな……」
「いえ、あなたの場合、財政事情ではなくて、本当に通達したとおりの事情で解雇したのでございます」
 と、バトラーさんが事もなげに言った。
「……え? ウソだろ?」
「おや、わかりませんか? もしや、鏡をご覧になったことがないので?」
 プリットさんは「うーん」なんて考えている。おいおい、まずはその髪型を直そうと思えよ。

 ターカギー隊員がプリットさんに聞く。
「あなたにも同じ質問です」
 プリットさんはなんだか苦虫を噛みつぶしたような表情で、ターカギー隊員に顔を向けると、
「二時とか三時とか、寝てるよ、そんな時間。今朝は、朝飯のスープ用に、林の中でネトルとかワイルドガーリックを摘んでた。はい、おしまい」
 と、ぶっきらぼうに答えた。
 今の話を手帳にメモると、ターカギー隊員はメイドさんを見る。
「オリガ・コロシタワさん(二十一歳)、あなたは?」
「私は、二時や三時といった時間は、眠っておりました。起床は五時半。これは、毎日のルーティンなのですが、身支度を調えて四十分にはお屋敷を出て近くの市場へ行き、朝食の材料を購入いたします。六時二十分までには帰ってきて、朝食の準備を整え、七時に旦那様をお呼びに、寝室へ参ります。ですが、今朝はお返事がございませんでしたので、バトラー様にその旨を報告いたしました」
 メグレ隊長が口を挟む。
「起こしに行って返事がないというのは、珍しいことなのかね? わざわざバトラー氏に報告するというのは、重大なことに思えますが?」
「いえ、そう珍しいことではございません。お返事がないときは、必ずバトラー様に報告いたします」
 その後をバトラーさんが続けた。
「旦那様のスケジュールは私が管理しております。日によっては朝早くの出発ということもございますので、必ず報告をもらうことに取り決めております」
 なるほど。プリットさんはともかく、バトラーさんとオリガさんの証言におかしなところはない。……あれ? なんだ? オリガさんの右手の人差し指の爪、その先端がギザギザに……っていうか、ガタガタに乱れてる。まるで爪で硬いものを削ったみたいだ。
 ちょっと気になるが、とりあえず俺は、もう一度部屋の中を見た。そして天井を見る。
 ん? 照明の近くに白い半球形の何かがあるな。
「ねえ、オリガさん」
「なあに、ぼうや?」
「あの丸いもの、なあに?」
 俺は、天井の半球体を指さす。
「あれは、結界に魔力を供給している魔力ドームよ。昼間、空気中からエーテルを吸収して、夜、結界を維持するための魔力を供給しているの。だから、今は魔力は空っぽになっているわ」
「ふうん」
 俺は魔力探知眼鏡の縁に刻んである魔法文字に触れて、魔力を流す。すると、度が入ってないレンズに、周囲の魔力が赤から黄色、そして青へ至るグラデーションで表示された。確かに半球の中には魔力がないな、普通に白で表示され……。
 あれ? なんだ? 半球形からかすかなオレンジ色の線が延びてる。
 その線を辿ると、結界の魔法円を経由して、ドアの隙間から外へ出ているみたいだ。
「オリガさん」と、メグレ隊長の声が聞こえた。
「今、このお屋敷のメイドはあなたお一人、ということですが?」
「はい。私は昨年、他国からこの国へやって参りました。職探しをしていた折り、こちらのお屋敷でメイドの募集があり、申し込みました。そのときにはお二人、先輩がいらっしゃったのですが、お二人ともここの厳しさに耐えかねて、お辞めになり、私一人になったのです」
「なるほど。その分、負担が大きかったのでは?」
 その言葉に、オリガさんは笑みを浮かべ頷いた。
「はい、確かにたいへんです。ですが、そんなに難しいお仕事ではありませんし、何より、故郷にいた頃に比べたら……」
 なんか、いろいろと苦労していたみたいだな。曇っていった表情から、察することが出来る。
 そのことはメグレ隊長も察したらしい。わずかに眉を曇らせたが、すぐに取り調べをするときの厳しい光を瞳に宿した。
「あくまで下世話な噂話ですが。聞くところによると、あなた、伯爵に『夜のお相手』を強要されていたとか?」
 オリガさんが困ったような表情になった。
「私もそのような噂があるのは承知しておりますが。そのようなことは一切ございませんよ?」
「本当に?」
「本当です。私の……いえ、旦那様の名誉のために、断じてそんなことはなかったと、証言します!」
 なんだ、なんで言い直した?
 そのとき、「うーん」とおっちゃんの唸る声が聞こえた。そっちを見ると、おっちゃんは天井の魔力供給ドームを睨んでいる。
 メグレ隊長が質問を続けた。
「オリガさん、あなたは『毒魔法』を心得ていらっしゃるとか」
「ええ、確かにそうです。でも、旦那様は刺し殺されていたのですよね?」
 ご遺体発見時のことを思い出したらしい、オリガさんの顔色は心なしか青くなっている。
 確かに、毒魔法で“刺し殺す”のは不可能だ。
 それはそうと、例のドームから延びている線が気になるな。俺はそっとドアを開け、コッソリと部屋を出て魔力探知眼鏡を操作した。レンズ面にかすかに映るオレンジ色の線を追いかけると、部屋を出てわずか二、三歩のところの漆喰(しっくい)の壁で止まっていた。高さは一メートルぐらいのところ。そしてそこには。
「これは、引っ掻き傷? なんでこんなものが……?」
 俺はその傷を見る。すると、その傷の奥に緑色、場所によっては青い魔法光があった。
 頭の中でこれまでの情報を組み合わせる。

 !

 そうか! そういうことか!




「わかりましたよ、隊長殿!」
 部屋の中に戻ると、おっちゃんがそんなことを言った。……多分、違うな。でも、一応、聞くか。
「おお、わかったのか、モーリーくん!」
「ええ! 犯人は……」
 いったん、溜めた後、おっちゃんは、
「カール・プリットさん、あなたです!」
 と、ビシッと指さした。

 ……うん、違うわ。

「ええっ!? 俺!?」
 プリットさんが驚いた。そりゃ、驚くわな。
「どういうことかね、モーリーくん?」
 メグレ隊長の言葉に、おっちゃんが応えた。
「ヒントは、天井の魔力供給ドームです!」
 おっちゃんが指さしたドームを、一同も見上げる。
「プリットさん、あなたは昼間、誰もいない時を見はからってこの屋敷に忍び込んだ。そしてこのドームに、剣生成魔法の“タネ”を仕込んでおいた。そして夜、伯爵は結界を発動させた。その瞬間、ドームに仕込まれた“タネ”が実体化し、伯爵の心臓を貫いたのです!」
 少し置いて。
「すごいですよ、モーリーさん!」
 ターカギー隊員が熟睡から目覚めたかのようなハツラツとした笑顔で言う。
 はあぁぁぁぁ。やっぱり間違えたか。
 あ。メグレ隊長も気がついたみたいだ。
「モーリーくん。それだと、伯爵の傷は斜めからのものになるぞ? 伯爵は正面から刺されたんだ。わしは確かに、そう言ったと思うが?」
 呆れているメグレ隊長に、おっちゃんは「え? あ、いや、あの。あ、あはははは!」と、すっかり狼狽して、あたふたとごまかしている。やれやれ、仕方がない。
 俺はベッドの対角にある、小さめのサイドボードの影に隠れ、バングルにあるクリスタルをおっちゃんに向ける。そして、おっちゃん目がけて睡眠魔法を撃ち込む!
「ほにゃあああぁぁ〜」
 おっちゃんがよろけ、そのままベッドに座り込んだ。
 ターカギー隊員が歓喜の声を上げた。
「ああ!? きましたね、『眠りのコゴーロン』!」
 蝶ネクタイを出し、俺はそこに仕込んだ魔法陣の数字を組み替え、おっちゃんの声を設定する。そして「木霊魔法」を使っておっちゃんから声が出るように、魔力を送った。
「皆さん、失礼しました。先ほどは、この場の硬い空気を少しでも和らげようと思って、有り得ない推理を披露しましたが、今度は正真正銘の推理です」
 みんなの視線がおっちゃんに集まっているのを確認して、俺は言った。
「ブレーデス伯爵を殺害した犯人、それは……」
 俺はサイドボードの影から、その人物を見る。
「オリガ・コロシタワさん、あなたです!」
 衝撃が部屋の中を駆け抜ける。少しの間を置いて、かすれた声でオリガさんが言った。
「わ、私が? で、でも、旦那様は刺し殺されて……」
「では、順序立ててお話ししましょう」
 オリガさんの言葉を遮って、俺は続ける。
「オリガさん、まずあなたは、この屋敷の者が皆、出払った隙を見はからって、ある“細工”を施しました。それは、あの魔力供給ドームから魔力の導線を作り、部屋の外まで引き出すこと。そして引き出した先に、一種の“魔力スイッチ”を作ること。オリガさん、あなたの右手の人差し指、その爪は不自然にギザギザになっていますね?」
 オリガさんがハッとなって左手で右手の指先を隠す。
 それを見逃さなかったメグレ隊長が「失礼しますよ」と、半ば強引にオリガさんの右手を取る。確認出来たらしく、メグレ隊長が頷いた。
「コナン!」
 俺はおっちゃんの声で「コナン」を呼ぶ。
「はーい!」
 俺は元気な子どもスマイルでサイドボードの影から出ると、小走りで部屋の外に出る。そして。
「あれれー? 壁に変な傷があるよー?」
 そう言った俺の声に、メグレ隊長が出てきて俺が指さすところを見る。
「フム。後で魔法鑑識に調べさせるか。ひょっとすると、魔力が検出出来るかもしれんな」
 俺はまたサイドボードの影に隠れる。
「天井のドームから延びた導線の痕跡も、かすかながら検出出来るはずです。……続けましょう。そしてあなたは、犯行のタイミングを計り、遂に決行した。それが今日の二時から三時の間だったのは、私にはわかりませんが」
 険しい表情でうつむき、オリガさんは自分の左手で右手を覆う。今さら隠しても、と思うが、これも犯人の心理か。
 ともかく、俺は推理の披露を続けた。
「あなたは昨夜の食事に、すぐには作動しない毒魔法の“タネ”を埋め込んだ。その魔法毒は心臓に打撃を与えるもの!」
 オリガさんが引きつったような声で、息を引く。俺はそのまま、続けた。
「そして二時を過ぎた頃、その魔法が伯爵の心臓に牙を剥いた。伯爵は激痛に目を覚まし、人を呼ぼうとした。だが、ろくに声が出せない。そこで伯爵は激痛の中で結界を解除し、ドアを開けた。だがそこには、あなたが短剣を持って待っていた!」
 今度はハッキリとオリガさんが、呻き声を上げる。
「そしてオリガさん、あなたは突進して伯爵の胸を刺した。倒れた伯爵の心臓とその周辺を執拗にメッタ刺しにしたのは、伯爵の体から魔法毒の気配を早く抜き出すため。伯爵を殺害したあなたは、部屋を出てドアを閉め、魔法スイッチから微量の魔力を流した。その程度の魔力では結界の発動は出来ないが、導線を通じて魔力供給ドームを刺激し、ドームから魔力が流れ結界が出来上がった」
 しばし、寝室が沈黙に包まれる。
 その沈黙を破ったのはオリガさんのくぐもった笑いだった。
「さすがは名探偵コゴーロン・モーリー。むしろ清々しいぐらいだわ、真相を暴かれて」




 ターカギー隊員が聞く。
「自白と捉えて宜しいですか?」
「ええ、結構よ」
 オリガさんは、どこか挑戦的とも見える笑みを浮かべている。
 バトラーさんが震える声で言った。
「ど、どうしてこんなことを……?」
 ずっと冷静だったバトラーさんが、初めて動揺したような表情を見せた。
 ゆらり、と暗い笑みを浮かべてオリガさんが言った。
「十八年前、この国と、ある国が戦争をしたわよね? 三年後に、結果は第三国の仲介で勝ち負けのないものになったけれど。……私、別の国からその“ある国”に移住して住んでいたの、パパとママと一緒に」
 プリットさんが呟くように言った。
「そうか、伯爵は当時、軍人だったから命を狙ったのか」
「まあね。確かにそれもあるけど、本当の動機は違うわ」
 そして、絨毯に残る伯爵の血痕を見て言った。
「当時、私は三歳だったわ。この国の軍隊はね、私が住んでいた国に攻め込んできたの。そしてアチコチの民家を襲っていた。私の家にも押し入ってきたわ。ママは私を家の裏にある農具入れに隠してくれた。でも、住んでいた家ってボロだから壁がちょっと壊れてて、農具入れから家の中を見ることが出来たの。だから、私は見てしまったのよ、押し込んできた一人の軍人がパパを殺して、ママを乱暴した、その一部始終を!」
 オリガさんの顔が、怨嗟の色に染まる。みんな、息を呑んで口を挟めない。オリガさんは続ける。
「私は怖くて声も出せなかったけど、涙だけは流れ続けた。やがて軍人が去っても、私は動けず、そのまま農具入れの中にいたわ。少しして、ママがやって来て私を農具入れから出したとき、私はママに抱きついて大声で泣いたの。ママも泣いてた。その軍人こそが、アッシャー・ブレーデスだったのよ!」
「そんな、まさか、旦那様が……!」
 引きつったような、裏返った声を絞り出し、バトラーさんがオリガさんを見る。
 また、ゆらり、と頭(こうべ)を巡らせると、オリガさんは再び暗い笑みを浮かべた。
「乱暴されながらも、ママは相手の軍服から『あるもの』を奪い取っていたの。それはエンブレムの入ったハンカチーフ。戦争が終わった後、ママはそのエンブレムを頼りにそのときの軍人を調べた。そして、アッシャー・ブレーデス伯爵だということを突き止めたの。ママと私は、言葉や色んなことを勉強して、十二年前、この国に移り住んだ。そして私たちは伯爵が経営する果樹園に勤め、実際に顔を確かめた。……間違いなかったわ。パパを殺してママを乱暴した憎い悪魔がそこにいた! 私たちは復讐の機会をうかがったわ。
 でも、なかなかチャンスを見つけられないまま七年前、長雨と水害のために果樹園は大ダメージを受けた。果樹園を復旧出来るだけの知識や力を持った者を除いて、多くの労働者が解雇されたわ。私たちもそうだった。再び、私たちは伯爵に近づくチャンスを探したけど、なかなか見つけられない。その間、私たちはいろんな仕事をして暮らした。私、体を売ることさえしたのよ? でもそんな中、ママは病気になってしまった。貧乏な私たちは医者に行くことも出来ず薬も買えず。……そのときの病気が元で、ママは死んだ。四年前の今日、時刻は二時だったわ」
 そうか、だから伯爵殺害の日時を今日にしたのか。
「その後、私は噂やツテを頼りに、はぐれ者のウォーロックを見つけ、弟子入りして毒魔法を教わった。教授料代わりに、いろんな“汚れ仕事”をさせられたわ。残念ながらブレーデス殺害の仕事はなかったけど。……さ、もういいでしょ? 隊長さん、私を警備隊本部へ連れて行って」
 メグレ隊長が頷く。俺は。
「ちょっと待って下さい、隊長殿。……オリガさん、今回の件については、私にも責任があるかも知れません。私がもっと早くに調査を終え、報告書をまとめていれば、事件は起きなかったかも知れない」
 一同が首を傾げ、おっちゃんを見る。俺は。




「コナン!」
 と“自分”を呼ぶ。サイドボードの陰から出て、おっちゃんのカバンを手に取る。
「はーい。……ねえ、メグレ隊長。これ、コゴーロンのおじさんが伯爵に依頼された報告書なんだけど」
 俺は、封筒をメグレ隊長に渡す。それを受け取ると、メグレ隊長は中の報告書に目を通した。
 読み終わると、メグレ隊長は沈痛な面持ちで言った。
「オリガさん。伯爵は十八年前のことについて、激しく後悔なさっていたようです」
「?」
 オリガさんの顔にクエスチョンマークが浮かぶ。
「当時、伯爵は戦争の狂気に呑まれ、また、祖国が攻撃されたという怒りもあって、正常な思考が出来なかったそうです。だから軍人ではない男性を殺害し、その妻を乱暴した後で正気に返り、自己嫌悪に陥った。戦争が終結した後、どうにかそのときの女性を探せないか、と捜索したそうですが、戦後の混乱もあって、はかどらない。また、しばらくして伯爵の父親である、前伯爵が死去し、家督を承継することになって、捜索をいったん打ち切った。
 その後は色々と忙しくて、捜索のことを忘れていたが、最近になって思い出し、伯爵は捜索を再開することにした。そこで、名探偵と名高いモーリーくんに依頼したんです。その結果、当時の女性が子どもを連れてこの国に移住したが、すでに亡くなっていることがわかった。そこで、伯爵は追加調査で、その子どもの捜索をモーリーくんに依頼しました」
 メグレ隊長が真剣な眼差しになって言った。
「その母子が、かつて伯爵の経営する果樹園に勤めていたことがわかった、と、この報告書にあります」
「……え?」
 予想もしていなかったのだろう、オリガさんが呆となってメグレ隊長を見た。
「伯爵は、いきなりその子どもに会うのはまずいだろう、と、当時のことを述懐した手紙をモーリーくんに託していました。今言った戦争当時のことは、その手紙に書かれていることです。モーリーくんは、伯爵の経営する果樹園にいたのなら、むしろ伯爵から手渡した方がいい、と考えたのかも知れませんな。報告書と一緒にその手紙が同封されています。その手紙には、もしその子どもが一人でいて苦境にあるなら、我が屋敷に来て欲しい。そして、よければ養女として迎える用意がある、償いをしたい、と、あります」
 オリガさんが小刻みに震える。メグレ隊長は言葉を続けた。
「報告書にあるその子どもの名前は、オルガ・コロサイテイヴァ(Olga・Kolositava)。あなたの祖国の言葉で言うと……。オリガ・コロシタワ」
 俺も最初に報告書を読んだときは、この国の読み方をしたから、すぐにはオリガさんとは繋がらなかったんだ。
「ウソよ……」
 オリガさんがうつむいて呟く。
「ウソよウソよ……。償いたい、とか……」
 そして顔を上げ、叫んだ。
「そんなのウソよー!」
 そしてドア近くにいたメグレ隊長を突き飛ばすように、部屋を出た。
「ちょ、ちょっと待ちたまえ!」
 俺も駆け出す。後ろでメグレ隊長たちも走り出したようだけど、オリガさんが一度立ち止まって壁を二回叩いた瞬間。
「わ、隊長、これって!」
「ネ、ネット魔法!?」
 二人は網による捕獲魔法に掛かったらしい。貧乏とはいえ、貴族の邸宅だからな、いろんな罠が仕掛けてあるんだろう。ん? 何かを手に持ってるように見えるけど、気のせいか?
 オリガさんは階段を駆け下り、玄関の方へ回る。
 クソッ、こういうとき、子どもの体がもどかしくなるぜ、ストライドが大人と違いすぎる!
 気がつくと、あっという間に引き離されていた。オリガさんは玄関にいた警備隊員を突き飛ばし、庭へ出る。俺も玄関を出た。
「あっ、あれは!」
 オリガさんの手に何かがある。俺は目をこらす。
 赤い何かがついたナイフ。そうか、あれが伯爵を殺した凶器なんだ! どこに隠してたんだ!?
 ……そういえば、壁を叩いたとき、何かを取ったように見えたな。そうか、壁の中に隠してあったのか! 貴族のお屋敷は罠があったり、武器を隠せたり、何でもアリだな!
 なんて感心してる場合じゃない、彼女、死ぬ気だ!
 十メートル以上先で立ち止まったオリガさんは、ナイフで今にも自分の喉を突きそうだ!
「クソッ、させるかよっ!」
 俺はバックルの魔法円に手を当てて魔力を流し、エネルギーボールを射出する。同時に右脚に魔力を流し、衝撃波魔法を発動させた。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 気合いとともに、エネルギーボールを蹴り出すと、ボールは綺麗な弧を描いてオリガさんの手のナイフを弾き飛ばした。
 へたり込んだオリガさんのところまで、俺は歩いて行く。ネット魔法を解除したのだろう、メグレ隊長や、ターカギー隊員、そしてバトラーさんもやって来た。
 バトラーさんが冷静さを取り戻したのだろう、落ち着いた声で言った。
「私は、ブレーデス伯爵家の当主がアッシャー様に代わって一年ほど経ってから、こちらに奉公に上がりました。先ほども申しましたとおり、旦那様は自分にも使用人にもたいへん厳しいお方でした。あまりの厳しさに、私は、なぜそこまで己も他人も厳しく律する必要があるのか、お尋ねしたことがございます。旦那様は、このように仰いました。

『人間は、たやすくその場の空気に流される。また、簡単に欲望に溺れる。自分を甘やかし始めたら、なし崩しに腐った人間が出来上がる。だから厳しく律するのだ』

 この言葉を聞いたとき私は、軍隊にお勤めになっていらっしゃるから、斯様(かよう)に厳しいお方なのだ、と思っておりましたが。

 もしかすると、二度と過去のような過ちを犯さぬよう、また自分に縁(ゆかり)のある者が過ちを犯す人間にならぬよう、戒めていらっしゃったのかも知れません」
 へたりこんだままのオリガさんが、地面を見て、うつろな表情で言った。
「……今さらだわ」

 決して償えない罪。
 時に人は、そんな罪を犯す。
 それを「弱さ」と呼ぶことは、たやすい。
 そしてその「弱さ」を克服しようと決意するのは、決まって罪を犯した後だ。
 今、この場にあるのは、涙ではなく、ただただ乾いた空気だけだった。





コナン「いい加減にしとかねえと、そろそろ公式から叱られンぞ、マジで」

(中世魔法ファンタジーだョ!? 名探偵コナン・了)


あとがき

 どうも、すみません。タイトルやらキャラクターの名前やらが“おバカ”な割りに、シリアスなストーリーでした。いやぁ、着想した時点ではここまで重い話になるとは、思ってもみませんでしたよ。正直「これ、書いて大丈夫か?」って途中で思ったりしてました。
 いや、マジでマジで! どうなるんだコレ?、とか、まったく着地点が見えませんでしたもの。

 なんか、穴だらけの、ミステリとして成立していないエピソードでした。

ゴメーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!


 まあ、それはおいといて。
 ちょっと二人のキャラクターの名前について。

○ディディット・バトラー……海外のミステリ作品やドラマなんかで定番(ある意味でネタ?)だという「やっぱり執事が犯人だったか」の英語表現「The butler did it」をもじっています。

○カール・プリット……英単語の「culprit(犯人)」から。この言葉には「(無罪を主張している)被告人」という意味もあるそうです。


以上ッ!!


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