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作品名:婚約破棄された令嬢は婚約者を奪った相手に復讐するのが習わしのようです 第二部〔再掲〕 作者:ジン 竜珠

第62回   悔しいけど、感謝するしか……(くうッ(涙))
「んが……。アメリア……」
 ゴットフリートさんたちが帰ってきたっていうんで、お出迎えしたら、その中に処刑されたはずのアメリアがいた。

 いや、実はね、あのあと、散歩がてら、お屋敷に帰る途中でイルザに会ったんで思わず聞いたの、「イルザも出動するんじゃないの?」って?
 そしたら、自分は影武者だから出るわけにはいかない、って聞いて。いや、でも、あの女騎士(デイム)でしょ?って言ったら、実はアレは……、ってところからアメリアが実は生きてるって聞かされて。
 いやあ、顎が外れるんじゃないかってぐらい驚いたわよ、実際。で、本物のヴィンフリートが帰ってきてからは自分の素性を明かしてたっていうことだったって。

 でもねえ、聞いてたからって言っても、実際にこの目で見るとやっぱり違うのよ、衝撃とかいろいろ。
 アメリアがニヤリとして言った。
「ハァ〜イ、お嬢さま、お久しぶり」
 うぐ。こいつには、助けられた、っていうのがあるし。でも。
 あたしもニヤリとして言った。
「ほぉんと、お久しぶりよねえ。どうだった、地獄は? 舞い戻ってきたのよねえ、あの世から?」
「ええ、舞い戻ってきたわ、あなたを助けるために」
「あ〜ら、それはどうも。でも、それって、イルザが処刑しないように言ったから、であって、もっと言うと、あたしがとどめを刺さなかったからよねえ? 感謝してほしいものだわ、オ〜ッホホホホホ!」
「ええ、そうねえ、それであなたを助けて、サラマンダーの正体暴いて、今日はあなたの弟を助けて。……あら? 私の方が、一つ多くない? 感謝して欲しいけれど、いいとこに住まわせてもらうんで、チャラにしてあげるわ、オ〜ッホホホホホ! ということで、領主様、もう私のことはバレた訳だし、隠す必要もないし、今夜から、いつもの牢屋じゃなくて、ちゃんとしたところで寝泊まりしたいんだけど?」
「ん? ああ、それについては考えているが……」
「言っておくけど、メイドの寮は勘弁ね。ハンナの奴、イビキと寝言がヒドいのよ。たまに寝ながら泣くし。どんな夢、見てるのかしらね。というわけで、ヨロシク〜」
 くっ、こいつ、言いたい放題だな!
 結局、騎士さんたちが住んでいる敷地内の家の一軒に、シェアして住むことになった。
「ふう。まあ、仕方ないか」
 そう呟いて、あたしはふと騎士さんたちを見た。
 すると、なぜか騎士さんたちは遠巻きにしてひとかたまりになって、なんか、あたしのことをおびえたような目で見てた。中には「女って怖いわ〜」なんて呟く人がいて、一同が賛同するように頷いてた。

 でも、悔しいけどアメリアがあたしたちを助けてくれたことは事実なのよね、実際のところ。今日だって、ヴィンフリートを……
「あ……。あの時の声……」
 その時、あたしは唐突に思い出した。

“殺してはダメッ!!”

 そうか、アメリアにとどめを刺そうとした時、頭の中に響いた声、あれはアストリットだったんだ。
 つまり、今日のようなことを予期していたってこと。ヴィンフリート……大事な弟を護るために。

 …………。

 ……ううん、そうじゃないとしたら?
 予期したんじゃなくて、ここまで来て、この先で殺されて、時を巻き戻ったんだとしたら?
 だから、何があるか知っていて、アメリアにとどめを刺さないように、あたしに言ったんだとしたら?

 もしそうなら、……ううん、多分その可能性の方が高いから、用心しないと!
 どんな敵が現れても大丈夫なように!


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