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作品名:婚約破棄された令嬢は婚約者を奪った相手に復讐するのが習わしのようです 第二部〔再掲〕 作者:ジン 竜珠

第13回   あたし、絶体絶命!
 リタも仰向けに倒れて「あたたた」なんて言ってたけど、自分にぶつかってきた(正確には「ぶつけられた」)のがあたしだと気がつくと、一瞬、目を見開いて、そして目元を険しくし、あたしを剣で薙ごうとしてきた!
「させるかッ!」
 でも、その剣をガブリエラが、自分の剣を地からすくい上げるようにして弾く。その隙に、あたしは立ち上がる。そしてハンナと交戦中のウンディーネに向かう。ウンディーネもこっちに気づき、ハンナの短剣をかわして身をひねり、今度は建物の壁に向かって跳び、そこをジャンプ台にして、さらに宙で身をひねって、あたしに跳び蹴りを放ってきた。
「二度も同じ手を!」
 あたしはその蹴りを避けようとして、サイドステップを踏もうとしたけど、ウンディーネのスピードが思ったよりも速く……。

 喰らっちゃったわ、同じ手。

 あたしはそのまま水路の方に飛ばされた。ふと、首を回して飛ぶ先を見ると。
「……船!?」
 前の周回で見た、輸送船だ。あたしは右腕を伸ばして短剣の切っ先を船に突き刺すと、それを支点にして身をひねり、船上に着地した。当然の如く船の人たちはビックリしてるけどゴメン!なんだわ!
 ウンディーネがこっちを睨む。多分、あいつの脚力ならこっちに跳んでこられるわね。
 あたしは短剣を構える。
 思った通り、ハンナが動くより速くウンディーネがこっちに向かって、跳んできた!
 よし! このタイミング!
 あたしは呼吸を整え、自分が想定するタイミングよりも早く身を沈めた! 思った通り、ウンディーネが短剣をあたしに突き刺すように振りかぶる。あたしは短剣を左手で逆手に持ち替えて、右腕に意識を集中する。「何か」が流れて、力がみなぎる感覚があった。そして右側を下にし倒れ込む要領で体を傾け、軽く甲板を蹴る。
「どりゃあああああ!!」
 吠えたあたしは、巨人の力が宿る右腕をバネにして、空中に舞い上がる。ウンディーネがビックリした表情になったのが、まるでスローモーションになったようにゆっくりと見えた。そしてあたしは、こちらに向かってきていたウンディーネに、左手に持った短剣を突き出した!
 正直、狙ってた訳じゃない。ほとんど、カンのようなもの。でも、その刃はウンディーネが短剣を振り下ろすより早く、ヤツの左の脇腹を切り裂く。そして、そのままあたしは、放物線を描いて水の中に落ちた。
 水路の底の、すぐそばまで潜り込んだあたしは、自然に浮かび上がる。そして、水面に頭を出すと。
 左の脇腹を押さえたウンディーネが、船上からものすごい表情、それこそ敵を威嚇する猛獣のような顔であたしを睨んでいた。直後、ウンディーネは船の端に足をかけ、こちらに落ちてくるように前傾すると、脚のバネで船体を蹴り、あたしに向かってきた。
 やば!
 あたしはとっさに潜る! すんでのタイミングだった。ものすごい泡を立てて、あたしの背後にウンディーネが突っ込んできた。
 そのままバタ足で船の下をくぐり、あたしはその場を離脱する。そして浮き上がり、ハンナたちがいた通りの対岸、その下まで行く。振り返ると。
 バシャバシャと豪快に飛沫(しぶき)を立てて、ウンディーネが、もがいていた。
 うん。前の周回通り、こいつはカナヅチだわ。
 あとは、どうにか、上(うえ)に上(あ)がれないかな?なんだけど。
「!?」
 なんか、殺気っぽいものが、上から降ってきた。思わず上を見ると。
「えッ!? 何あれ!?」
 一見すると、砲丸っぽいもの。一見しなくても砲丸っぽいもの。そいつは放物線を描いて、対岸からこっちに向かって飛んでくる。誰かが投げてきたんだ!
 誰が投げたかなんて考えるより先に、あたしは壁を蹴って、それをかわす。
 背後で砲丸が着水……というより、墜落した音を聞いた時、目の前にバチャバチャと水音を立てて、もがいているウンディーネがあたしを見て、ニヤリとするのが見えた。
「あ、やべッ!」
 まるであたしの方からウンディーネに飛び込んでいくような体勢だ。でも、水の中じゃあ、思うように動けない。だから、あわててストップをかけようとしても、どうにもならない。
 あたしが手で“逆噴射”をかけようとバタバタしてると、ウンディーネが右手であたしの服の襟をつかみ、自分の方に引き寄せる。それと同時に、左手に逆手(さかて)に持った短剣を振り下ろそうと、構えた。

 あたし、大ピンチじゃん!


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