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作品名:4月1日、その青年は自殺を実行した…… 作者:ジン 竜珠

第2回  
「コケケケケケケケケケ!!」
「あだだだだだだだだだ!!」
 ニワトリがクチバシで僕の頭をつつき回した。
 痛む頭をさすっていると、ニワトリが首を「カク、カク」と動かして言った。
「三月二十五日、あなたコンビニで鶏(とり)の唐揚げを買ったわよね?」
「は、はい」
「そのときの鶏肉が、わたくしよーーーーーーッ!!」
 そう叫んで羽根を広げ、またニワトリはクチバシで僕の体をつつき回す
「あだだだだだだだ!!」
 僕をつつき回した彼女(……で、いいの?)は、遠くを見て言った。
「わたくしはね、気がつくと、狭いところに押し込められて、ひたすら餌を食べながら、卵を産みまくる日々を送っていたわ、何の疑問も抱かずにね。そして、卵が産めなくなった頃、わたくしは殺され、そして」
 僕を見る。
「人間に、喰われたのよーーーッ!!」
 再び羽根を広げた彼女の両目から、涙がダバダバと流れる、……血の涙が。
「さんざん卵を産まされ、産めなくなったら食肉に回す。そんな経済動物の無念が、あなたにわかるかしら!?」
「す、すみません、わかりません」
 僕がそう答えたとき。
「ブヒィィィーーー!! 少しは、分かろうとしろやぁー、この小童(こわっぱ)がァァーーー!」
「ぐっはぁぁぁぁ!?」
 何かが突進してきて、僕は吹っ飛ばされた。
「ブヒィ。当たり前のように自然から搾取する人間の中でも、一等(いっとう)のクズやな、ジブン!!」
 起き上がると、そこにいたのは人間ほどもあるデッカいブタ。
「あ、ああ、今度はブタ、ですか……?」
「おう、小童、ワイのこと、覚えとるか?」
「え、と、スミマセン、覚えてませ……」
「ブヒィィィィィッ!!」
「ぐぺええぇぇっっ!?」
 ブタの突進で、また僕は吹っ飛ばされる。
 痛みに呻きながら起き上がると、四本足でゆっくりと歩いてきたブタが言った。
「三月二十七日、お前が喰ったトンカツ定食のトンカツが、ワイや!」
「あ、そ、そうでしたか……」
「おう、どうじゃ? 旨かったか?」
「え? ええ、とっても美味しかったです……」
「そうか」と、ブタはなんか柔らかい空気をまとわせて言う。
「味は、わかるようやのう。そこだけはクズやない、ちゅうことやの」
 褒められてるの、僕?
 この、よくわからない状況に困惑していると、今度はノッシノッシと赤茶けた牛がやって来た。


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