「コケケケケケケケケケ!!」 「あだだだだだだだだだ!!」 ニワトリがクチバシで僕の頭をつつき回した。 痛む頭をさすっていると、ニワトリが首を「カク、カク」と動かして言った。 「三月二十五日、あなたコンビニで鶏(とり)の唐揚げを買ったわよね?」 「は、はい」 「そのときの鶏肉が、わたくしよーーーーーーッ!!」 そう叫んで羽根を広げ、またニワトリはクチバシで僕の体をつつき回す 「あだだだだだだだ!!」 僕をつつき回した彼女(……で、いいの?)は、遠くを見て言った。 「わたくしはね、気がつくと、狭いところに押し込められて、ひたすら餌を食べながら、卵を産みまくる日々を送っていたわ、何の疑問も抱かずにね。そして、卵が産めなくなった頃、わたくしは殺され、そして」 僕を見る。 「人間に、喰われたのよーーーッ!!」 再び羽根を広げた彼女の両目から、涙がダバダバと流れる、……血の涙が。 「さんざん卵を産まされ、産めなくなったら食肉に回す。そんな経済動物の無念が、あなたにわかるかしら!?」 「す、すみません、わかりません」 僕がそう答えたとき。 「ブヒィィィーーー!! 少しは、分かろうとしろやぁー、この小童(こわっぱ)がァァーーー!」 「ぐっはぁぁぁぁ!?」 何かが突進してきて、僕は吹っ飛ばされた。 「ブヒィ。当たり前のように自然から搾取する人間の中でも、一等(いっとう)のクズやな、ジブン!!」 起き上がると、そこにいたのは人間ほどもあるデッカいブタ。 「あ、ああ、今度はブタ、ですか……?」 「おう、小童、ワイのこと、覚えとるか?」 「え、と、スミマセン、覚えてませ……」 「ブヒィィィィィッ!!」 「ぐぺええぇぇっっ!?」 ブタの突進で、また僕は吹っ飛ばされる。 痛みに呻きながら起き上がると、四本足でゆっくりと歩いてきたブタが言った。 「三月二十七日、お前が喰ったトンカツ定食のトンカツが、ワイや!」 「あ、そ、そうでしたか……」 「おう、どうじゃ? 旨かったか?」 「え? ええ、とっても美味しかったです……」 「そうか」と、ブタはなんか柔らかい空気をまとわせて言う。 「味は、わかるようやのう。そこだけはクズやない、ちゅうことやの」 褒められてるの、僕? この、よくわからない状況に困惑していると、今度はノッシノッシと赤茶けた牛がやって来た。
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