アメリアを倒してから三日が経過した。 今のところ、お屋敷に殺し屋がいる気配はない。 残る二人、ウンディーネとサラマンダー。あたしを狙ってくるかも知れないし、そうじゃないかも知れない。 願わくは、あたしのことを狙っていませんように。 そう思いながら、あたしは眠りについた。
朝食を終え、あたしは自室に戻る。 そしてベッドに腰掛け、自分の身の上について考えた。 名前は小松崎(こまつざき)未佳(みか)、十六歳で、高校二年生。通っているのは女子高だけど、俗にいう「お嬢さま学校」っていう訳じゃなくて、まあ、普通だと思う。 あたしの学校での成績は、全体的には中ぐらいだけど、音楽の成績はいい。だから将来は、そっち系に進むことが出来たらいいな、って思ってる。 「ふう。本当に、あたし、どうなってるのかな。転生だったらもうどうにもならないけど、転移だったら、どうにか帰る方法を見つけて」 そこまで考えた時、ドアがノックされた。 「どうぞ」 『失礼します』 入ってきたのは、あたしのお世話をしてくれてるハンナだ。あたしのお世話をしてくれているのは、数人いるけど、ハンナがその中心だ。いわゆる「チーフ」だ。年齢(とし)は二十代半ば、って感じかな? 「お嬢さま、わたくしもご一緒致しますので、お散歩など、いかがですか?」 「え? でも、今、あたし……」 命、狙われてるし。 改めて言葉にすると、実感湧かないワードよね。婚約者から婚約解消を言い渡されたと思ったら、その寝取った女に復讐しないとならなくて、その相手も、返り討ち&先回りを企んでる。 まったく、迷惑千万だわ。正直、あの婚約者の、えーと、アイーンリヒだっけ、バイーンリヒだっけ? ……ダメだ、覚えてないや。とにかく、その婚約者のことなんて、あたし、なんとも思ってないし。 一応、だけど、あたし、元婚約者のことはどうでもいいですー、みたいなこと、グートルーンって女性に伝えてもらうように頼んだんだけどなあ。伝わってないのかも知れない。 それはおいといて。 狙われている以上、出歩かない方がいいんじゃないかなあ? ハンナは笑顔で言った。 「お嬢さま、わたくし、腕には自信がございます。アメリアとも、しのぎを削るほどだったんですよ?」 その言葉が終わったかどうか、の瞬間、あたしの喉元にレイピアが突きつけられていた。 うそ!? ハンナはあたしの五メートルぐらい、向こうにいたはず!? それに、いつの間に手にそんなものを!? ハンナが微笑んで言った。 「いかがですか? 信用いただけましたか、わたくしの腕前を?」 あたしは、自動的に頷いていた。 微笑んだまま頷き、あたしの喉元の剣を下げると、ハンナはある武器をあたしに手渡してきた。 「お嬢さま。これは一見すると普通の日傘ですが、こうすると」 と、ハンナは傘の持ち手をひねる。すると、スルスルと抜けて、細身の剣が現れた。 「ソード・ステッキを改造したものです。万が一の時には」 あたしはそれを受け取った。 万が一、なんて、ないに越したことはないけれど……。
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