「………………………………」 あの日のこと、夢に見ちゃった。 結局、あたしが何かしなくても、聡実はメールしただろうし、もしかしたら品田さんの方からメールなり、電話なりをしてきたように思う。 「みんな、心配してるかな? それに、お母さん。もしこっちにいる時間と、あたしが元いた時間がリアルタイムで時間が流れてたら、心配してるだろうなあ、たった二人の家族だもん……」
ふと。
涙が流れてるのに気がついた。
朝食を終えると、ヴィンが言った。 「すみません、父上、母上。ちょっとお話があるのですが」 お父様が「うむ」と重々しい雰囲気で頷く。お母様も表情をかえずに頷いた。 「……えと。ヴィン、あたしは?」 笑顔になって、ヴィンが言った。 「申し訳ありません、姉上は席を外していただけますか?」 「なんでよう」 口をとがらせて抗議すると、お父様が静かに言った。 「アストリット、すまないが、ヴィンフリート個人の話なのだ。席を外してくれ」 お母様も、すまなさそうな顔で言った。 「言うことを聞いて頂戴?」 「う……。わかりました」 三人から言われたら、引き下がらざるを得ない。あたしは、一人で食堂を出た。
「さあ、ヴィンフリート。話を聞こう。……といっても、およそ見当はつくが」 ゴットフリートが言うと、ヴィンフリートも頷く。マクダレーナは、どこか不安げだ。 ヴィンフリートが話を始めた。
話を聞き終え、今度はゴットフリートの方から聞いた。 「ヴィンフリート、お前がそのことに気づいたのは、いつだ?」 「帰りの馬車の中です」 と、ヴィンフリートは答える。 「そうか。私も、その日の夜だ」 「わたくしもですわ」 マクダレーナも頷く。ただ、やはり不安げであることに変わりない。 「どうやら、間違いないな」というゴットフリートの言葉に、 「はい」と答えて、ヴィンフリートは続けた。 「『イグドラシルの秘法』と『魂寄(たまよせ)の法』が成功していることは間違いありません。ですが、その場合、問題になるのは、その回数です。果たして、何度、巻き戻っているのか、それともただ一度きりなのか」 この言葉に、マクダレーナが息を呑む。 ゴットフリートは腕を組む。 「『イグドラシルの秘法』は諸刃(もろは)の剣(つるぎ)だ。この秘法の効力により、アストリットはたとえ殺されても、よみがえる。だが、それには反作用が……」 夫の言葉にマクダレーナがうつむく。それをチラと見てから、ヴィンフリートは言った。 「昨日の朝の、シルフことアメリアとの戦いにおいて、姉上は優れた剣技を見せたようです。姉上にはそのような技術はないはず。これが、呼び寄せられた魂の持つ技能(スキル)なのか、繰り返したが故にその剣筋を暗記して、先読みしたのか……」 「もう一つある」 ゴットフリートはヴィンフリートの言葉を遮る。ヴィンフリート、そしてマクダレーナがこちらを注視する。 一呼吸おき、ゴットフリートは言った。 「『ユミルの眼』だ」 確信を持って。
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